後遺障害等級認定に関する研修②

事務所内で交通事故を担当している弁護士・スタッフ向けに後遺障害等級14級9号に関する研修が再びありました。

今回の研修の講師は、損害保険料率算出機構の元職員ではなく、自賠責調査事務所の職員として実際の認定業務に携わり、後遺障害等級認定業務の豊富な経験を有する当法人の後遺障害申請専任スタッフが担当しました。

 

後遺障害等級認定の申請について、資料を受け取った自賠責調査事務所の担当者は、どのような点に着目して提出された資料を確認しているかなど貴重な話が聞け、とてもためになりました。

加えて、捻挫・打撲による痛みなどの症状が将来的に回復困難な後遺障害といえる状態に至っているかの判断との関係で、治療中に症状の改善傾向がみられたことを自賠責調査事務所の担当者としてどのように捉えているかなどについて興味深い話が聞けて良かったです。

今後の後遺障害等級認定のサポートに活かしていきたいと思います。

 

後遺障害等級認定の研修は、この後も、定期的に開催が予定されています。

後遺障害等級認定業務に携わっていた損害保険料率機構や自賠責調査事務所の元職員から様々な話を詳しく聞ける貴重な機会のため、今後の研修の内容も楽しみです。

労災保険と確定遅延損害金

交通事故に遭った場合、交通事故の被害者は加害者に対し、不法行為による損害賠償請求を行うことができます。

加害者が負う損害賠償債務は、不法行為の時に発生し、かつ、何らの催告を要することなく遅滞に陥るものと解されています(最判昭和37年9月4日判決)。

そのため、不法行為の時から遅延損害金は発生します。

 

他方で、仕事中や通勤中に事故に遭い、労災保険から治療費、休業損害、障害(補償)給付などの支給を受けた場合、上記不法行為の時から労災保険から保険金が給付されるまでの間の遅延損害金は原則発生しないと考えられています(最判平成22年9月13日判決)。

労災保険から保険金が給付されるまでの間の遅延損害金が発生しないと考えられる理由は、「被害者が不法行為によって傷害を受け、その後に後遺障害が残った場合においては、不法行為の時から相当な時間が経過した後に現実化する損害につき、不確実、不確定な要素に関する蓋然性に基づく将来予測や擬制の下に、不法行為の時におけるその額を算定せざるを得ない。その額の算定に当たっては、一般に、不法行為の時から損害が現実化する時までの間の中間利息が必ずしも厳密に控除されるわけではないこと、上記の場合に支給される労災保険法に基づく各種保険給付や公的年金制度に基づく各種年金給付は、それぞれの制度の趣旨目的に従い、特定の損害について必要額をてん補するために、てん補の対象となる損害が現実化する都度ないし現実化するのに対応して定期的に支給されることが予定されていることなどを考慮すると、制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り、これらが支給され、又は支給されることが確定することにより、そのてん補の対象となる損害は不法行為の時にてん補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが,公平の見地からみて相当というべきである。」とされています。

 

上記のように労災保険と自賠責保険のどちらから支払いを受けているかで、確定遅延損害金が発生するか否かの判断が異なります。

それ以外にも各種保険から給付を受けている場合、充当関係、損益相殺などの判断がそれぞれの保険で異なることが多いため、賠償請求時には誤らないよう弁護士として注意していきたいです。

後遺障害等級認定に関する研修

先日、事務所内で交通事故を担当している弁護士・スタッフ向けに後遺障害等級14級9号に関する研修がありました。

研修の講師は、「損害保険料率算出機構」において15年間も後遺障害の認定業務に関わり、豊富な経験と知識を有する当法人の後遺障害申請専任スタッフが担当しました。

 

後遺障害等級14級9号は、捻挫・打撲などの傷害を負い、痛みや痺れといった神経症状が残存した場合に認定される後遺障害等級になります。

捻挫・打撲による痛みなどの症状は、客観的に数値化できず、また、症状の原因を検査結果により明らかになることが難しいため、交通事故被害者の方は、痛みや痺れの症状について適切に評価を受け、後遺障害等級認定を得られないことがあります。

交通事故被害者の方が、適切な評価を受けるためには、後遺障害等級認定の申請時に誤った評価を受けないようしっかりとしたサポートが必要となります。

 

今回の研修で、後遺障害等級認定を得る可能性を検討する上での重要なポイントやサポート時に気を付ける点などを学べて良かったです。

交通事故に遭われた方が、治療を受けることで完治し、事故前の状態に戻れることが一番ですが、治療を受けてもどうしても症状が残ってしまう場合もあります。

そのような場合に、交通事故被害者の方の身体の症状を改善させることはできませんが、適切な後遺障害等級認定を得ていただき、金銭面だけでも適切な賠償を受け取っていただけるようしっかりとサポートできればと考えています。

人身事故扱いとは

交通事故に遭いケガをした方から、「人身事故扱いにした方が良いのでしょうか。」といった相談を受けることがあります。

 

交通事故により人的損害が発生した場合、警察に診断書を提出すると「物損事故」から「人身事故」扱いに代わり、交通事故証明書にも人身事故と記載されます。

「人身事故」扱いにするかどうかで、加害者が刑事処分や行政処分を受けるかどうかに違いが生じます。

そのため、生じている人的損害を踏まえて、刑事処分や行政処分を判断してもらいたい場合は、「人身事故」扱いに代えた方が良いです。

また、人身事故扱いにすると警察で実況見分調書が作成され、当事者間で事故状況等に争いがある場合などに、事故状況を立証するための資料として利用できることもあります。

 

民事上の損害賠償請求に関しては、「物損事故」か「人身事故」扱いかで形式的な賠償額の算定基準などに差は生じません。

警察に診断書を提出しているか否かで、交通事故被害者の方がケガをしているかどうかや負ったケガの程度に違いが生じるわけではないためです。

慰謝料の目安額などは、「物損事故」でも「人身事故」扱いでも負っている怪我の程度や治療内容が同じであれば、原則同じです。

ただ、「人身事故」扱いにしていないと、なぜ人身事故扱いにしていないのかという理由を記載した「人身事故証明書入手不能理由書」を自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請などをする場合には提出する必要があります。

また、事実上、「人身事故」扱いにしていないのは、ケガの程度が軽微だったからではないかと思われる可能性もあるため、「人身事故」扱いにしない理由がないのであれば、「人身事故」扱いにしておいた方が良いと思います。

交通事故に関する相談は、ぜひ弁護士法人心へお問合せください。

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メガネは物的損害か?

交通事故に遭ったとき,怪我を負うとともに服や眼鏡など身につけていた物が毀損することがあります。

身につけていた物が自賠責法上の「人損」に該当すれば,自賠責保険から支払いを受けることはできるため,身につけていたものが自賠責法上の「人身」に該当するかが問題となるケースがあります。

この点,自賠責保険では,眼鏡,義足,補聴器などについては,日常生活に必要不可欠なものとして身体に密着させているものは「人損」に該当するとみなされています。

つまり,自賠責保険では,メガネは「人損」として扱われています。

 

そのため,例えば,交通事故でメガネが毀損し,新しくメガネを購入した場合は,メガネの購入費用が5万円以内で,かつ,自賠責保険の上限額の範囲内であれば,自賠責保険から支払いを受けることができます。

他方で,指輪やネックレスなど身体に密着させていますが,日常生活において必要不可欠なものとはいえないため,「人損」には該当しないとされています。

 

身につけていた物が「人損」に該当すれば,自賠責保険に請求することで,自賠責保険の枠内であれば,自身にも事故発生について多少過失があったとしても,過失分が差し引かれることなく購入費用や修理費相当額の支払を受けられる可能性があります。

詳しく相談されたい方は,弁護士法人心へお問合せください。

交通事故と医療過誤が競合する場合

交通事故の被害者が病院で治療を受けた中で医療過誤に遭ったことで治療が長期化するなどして治療費などの損害が拡大した場合,当該被害者は誰にどのような賠償を求めることができるのか疑問に思われる方もいるかと思います。

 

上記疑問に対して参考となるのが,最高裁平成13年3月13日判決です。

同最高裁判決は,交通事故により,放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの,適切な治療が施されていれば,高度の蓋然性をもった救命ができたものの,医療過誤により被害者が死亡したという事案について,交通事故と医療事故とのいずれもが,被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果について相当因果関係を有する関係にあるとし,交通事故と医療事故における医療行為とは共同不法にあたると判示しました。

つまり,被害者は,交通事故の加害者に対して,又は,医療事故における医療行為を行った医師に対して自身の被った損害の全額を賠償請求できるとし,交通事故と医療過誤の結果への寄与度により,被害者の賠償請求額を限定することは許されないと判断しました。

ただし,同判決は,交通事故と医療過誤の結果が一致する類型であるため,交通事故で軽傷を負った被害者が医療過誤で死亡した場合などに共同不法行為が成立するとまでは判断していないため,結果が不一致の場合に共同不法行為が成立するか否かはまた別途検討が必要と考えられています。

損害額算定基準

交通事故の賠償金額を検討する際は「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(赤本)」「交通事故損害額算定基準ー実務運用と解説ー(青本)」「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(緑本)」といった本に載っている基準を参考にすることが多いです。

 

例えば,交通事故で首に軽い捻挫を負った場合に,3か月間通院したときの傷害慰謝料の目安額は,赤本だと53万円、青本だと46万円、緑本だと48万円になります。

同じ怪我をして,同じ期間通院した場合でもどの基準を参考にするかで傷害慰謝料の目安額に差が生じます。

 

弁護士としては,交通事故被害者の方に適切な賠償金をお受け取りいただけるよう努めたいと思います。

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障害(基礎・厚生)年金と損益相殺

交通事故により,重度の障害を負った場合,要件を満たしていれば,ご加入の年金(国民年金・厚生年金)から,障害の程度に応じて,年6回,障害年金の給付を受けることができます。

障害(基礎・厚生)年金の受給可能性があるような重度の障害を負った場合は,障害年金の請求を検討する必要があります。

障害年金の申請は,社会保険労務士などが対応していることが多いですが,弁護士法人心では,障害年金の請求にも対応しておりますので,障害年金の請求を考えておられる方はお気軽にご相談ください。

 

ただ,障害年金と交通事故の加害者からの賠償金は2重で受け取れるわけではありません。

調整がなされます。

例えば,先に加害者から賠償金を受け取っている場合は,一定期間(上限36か月)障害年金の支給は停止されます。

また,先に障害年金の支給を受け取ている場合は,現実に既に支給されている障害年金額及び支給が確定している未給付の障害年金額は,加害者からの賠償金から差し引くとの損益相殺が行われます。

 

交通事故で重い障害を負った場合,加害者からの賠償金以外にも公的制度等を利用することで負担を軽減できることがあります。

ただ,各種制度からの給付金と加害者からの賠償金との調整をどのように行うかは,給付金の性質により異なります。

私は,主に加害者に関する賠償請求を受任し,対応することが多いですが,障害年金などの公的制度についても理解を深めていきたいです。

「ムチウチ」と後遺障害等級認定

交通事故で負う怪我として多いものに,いわゆる「ムチウチ」があります。

「ムチウチ」は,正式な傷病名ではなく,「頸椎捻挫」「頸部挫傷」などの総称として使用されています。

「ムチウチ」は,受傷から3か月程度で治ることが多いですが,中には,どうしても症状が残存してしまう方もいます。

治療を受けたものの完治せずに,症状固定に至ってしまった場合は,残った症状(痛み・しびれ等)について,病院で後遺障害診断書を書いてもらい,後遺障害等級認定の申請を行うことになります。

 

ただ,後遺障害等級認定の申請を行った場合に必ずしも後遺障害等級の認定を得られるわけではありません。

自賠責保険が「局部に神経症状」があると認定した場合は14級9号,「局部に頑固な神経症状」があると認定した場合に12級13号が認定されますが,将来的に症状の回復の可能性があると判断されるなどした場合は,後遺障害の等級は認定されません。

14級9号か12級13号かは,症状を裏付けるような他覚的所見があるか否かで判断されており,基本的には,自賠責保険は,主観的な症状の軽重で14級9号と12級13号を区別していません。

 

「ムチウチ」から生じる痛みや痺れの程度を客観的に検査する方法がないため,「ムチウチ」で適切な後遺障害等級認定を得ることは容易ではありません。整形外科の医師などから,「ムチウチ」で後遺障害等級認定を得られるケースは少ないとの話を聞いたことがある交通事故被害者の方もいるかと思います。

 

交通事故被害者の方が,適切な後遺障害等級を獲得できるよう弁護士としてサポートできればと思っています。

後遺障害逸失利益(減収がない場合)

減収がない場合,後遺障害による逸失利益は発生していないのではと問題となることがあります。

この点,最判昭和56年12月22日判決は,結論としては,財産上の損害がないことを理由として逸失利益の発生を否定していますが,減収がない場合でも,「事故の前後を通じて収入に変更がないことが本人において労働能力低下による収入の減少を回復すべく特別の努力をしているなど事故以外の要因に基づくものであって,かかる要因がなければ収入の減少を来しているものと認められる場合とか,労働能力喪失の程度が軽微であっても,本人が現に従事し又は将来従事すべき職業の性質に照らし,特に昇進,昇任,転職等に際して不利益な取扱いを受けるおそれがあるものと認められる場合など,後遺症が被害者にもたらす経済的不利益を肯認するに足りる特段の事情」がある場合には,事故の前後を通じて収入の減少がなくとも後遺障害による労働能力低下による財産上の損害が発生しているとしました。

そのため,事故前後を通じて収入の減少がない場合は,適切な逸失利益に関する賠償を受けるためには,後遺障害が労働能力に与える影響の度合い,本人が後遺障害による労働能力低下を補うために行っている努力,後遺障害による労働能力の低下が被害者の昇進や転職等に与える影響などについて丁寧な主張と立証を行う必要があります。

弁護士として,依頼者の方に収入の減少がない場合でも被害者の方に後遺障害による労働能力低下がある場合は,適切な後遺障害逸失利益を受け取っていただけるよう,努めていきたいと思います。

 

 

代車使用期間

交通事故によって車両の修理や買換えが必要であり,かつ,代車を使用する必要性がある場合には,修理または買換えに要する「相当な期間」の代車使用料が交通事故と相当因果関係を有する損害として認められます。

「相当な期間」には,事情に応じて見積りその他の交渉をするのに必要な期間も含まれるものと解されています。

 

修理自体に必要な期間が「相当な期間」に含まれることは争いはありませんが,交渉期間,検討期間,部品調達期間,営業車登録のための期間,保険会社の対応期間が「相当な期間」に含まれるのかが争われることがあります。

例えば,交渉期間については,損害保険会社の担当者は,被害者に対して合理的な損害賠償額の算定方法について十分かつ丁寧な説明をなし,被害者の理解を得るように真摯な努力を尽くすべきであって,そのために時間を要し,その結果,修理に着手する以前の交渉期間中の代車料が生じたとしても,それが,損害保険会社の具体的な説明や交渉経過から見て,通常予測し得る合理的な範囲内に留まる限り,損害保険会社はその代車料についても当然に負担すべき責任を負うとした裁判例があります(神戸地裁平成3年6月12日判決)。

また,保険会社の対応については,例えば,損害保険会社のアジャスターが,検討するとして持ち帰り,その後,被害者には何ら連絡することもなく交渉から降りたことにより修理の開始が遅れたことについて,遅延については,加害者側にその責任があるとして,その期間を代車使用の相当な期間と認めた裁判例があります(神戸地裁平成13年3月21日判決)。

 

代車使用期間としての「相当な期間」の判断は一概には行えないため,弁護士として「相当な期間」を検討する際は,具体的事情に照らして検討することを忘れないように注意したいと思います。

 

 

等級認定と介護費用(高次脳機能障害)

自賠責保険の後遺障害等級表では,高次脳機能障害の介護の程度により等級を分類しており,別表1第1級は「常に介護を要するもの」,別表1第2級は「随時介護を要するもの」,第3級は「声掛けや,介助なしでも日常の動作を行える。」としています。

そのため,3級以下の後遺障害等級認定で将来の介護費用が損害として認められるのかが争点となる場合があります。

 

この点,上記分類に関わらず,3級障害以下の将来の介護費用が認定されるケースが多々見られます。

その理由について,少し古い本ですが「高次脳機能障害と損害賠償ー札幌高裁判決の開設と軽度外傷性脳損傷(MTBI)について」という本に興味深い記載がありました。

当該本では,以前の日本社会では,「患者以外にも誰かしらの家族が家の中に居て,常に一緒に居られる環境が存在した。もし家の中で患者に何か起きた場合,家族が直ぐに対処できた。」「このように,」「自宅外の一般労務はできなくとも,日常生活に介護までは必要としない」という3級の定義が存在したが,現在の日本では,核家族化が進み監視や声掛けを行う者が将来においても必要となるとして3級障害以下の将来の看護費用を認めるケースが出てきたとしています。。

 

「介護」「監視」「声掛け」をどのように損害として評価するのかは難しい問題ですが,3級障害以下の場合でも将来の介護費用は認められることを意識することは重要です。

高次脳機能障害の方の具体的な症状や生活状況に照らし,「介護」「監視」「声掛け」がどの程度必要なのかを個別具体的に主張立証することが弁護士としては重要となると思います。

高次脳機能障害についての弁護士法人心名古屋駅法律事務所のサイトはこちらをご覧ください。

中心性脊髄損傷

中心性脊髄損傷とは,脊髄の中心部(灰白質と白室内側部)の損傷であり,神経症状の出方に特徴があるとされています。

中心性脊髄損傷は,頸椎の過伸展外力により生じることが多いとされており,運動麻痺などの症状は下肢と上肢を比較すると上肢の方が強いことが特徴とされています。

運動麻痺や痺れが両上肢に常時発生しているようであれば,頚髄の中心性損傷が疑われるこになります。

 

中心性脊髄損傷は脊髄の脱臼や骨折がなくとも生じるためその診断はX線検査やCTだけではできません。

骨折や脱臼のない中心性脊髄損傷における診断には,唯一病変を証明できるMRI検査が必要不可欠です。

そのため,交通事故等により首に外力が加わり,両上肢に痺れ等の症状が生じている場合は,急性期においてT2強調画像において髄内の信号変化を確認しておくことが重要となります。

 

急性期においてT2強調画像によるMRI検査を受けていない場合,事後的にに中心性脊髄損傷を立証することは難しく,いわゆるむち打ちとの鑑別は困難となります。

中心性脊髄損が疑われる場合には,早期に適切な検査を受けることは何よりも重要となります。

 

 

弁護士法人心のホームページの写真が新しくなりました。

宜しければ,以下のURLからご確認いただければと思います。

http://www.lawyers-kokoro.com/

素因減額

弁護士として交通事故の相談を被害者の方から受けていると,「保険会社から素因減額の話をされて困っている。」とのお話を伺うことがあります。

 

素因減額とは,交通事故に遭った被害者の方の体質的又は心因的要因が損害の発生や拡大に寄与している場合に,被害者に存在する体質的又は心因的要因を考慮・斟酌して,加害者の賠償額を減額するというものです。

 

どのような要因があれば,被害者の素因が寄与して損害の発生や拡大があったと判断されるのかが問題となります。

体質的要因について参考となる裁判例としては,「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても,それが疾患にあたらない場合には,特段の事情がない限り,被害者の身体的特徴を損害賠償の額を定めるにあたり斟酌できない」としたものがあります(最判平成8年10月29日判決)。

つまり,病的でない身体的特徴は素因減額の対象とならないとの一定の判断基準が示されています。

ただ,ケースによっては,身体的特徴なのか疾患なのか区別が困難なものもあります。

 

さらに心因的要因については,その定義があいまいであることに加え,交通事故に遭った場合,被害者は当然に何らかのストレスを負います。

そのストレスに被害者は影響を受けますが,ストレスに対する反応は人によって多種多様です。

そのため,交通事故により生じたストレスにより何らかの反応が見られる全ての場合に心因的要因があるとして素因減額とするのは適切ではありません。

ストレスに対す反応が多種多様であることを前提に想定される心因的な反応の範囲を外れる例外的な心因的反応のみを心因的要因として捉え素因減額の判断がなされるべきであると個人的には考えます。

無保険車傷害特約

交通事故の相手方が任意保険に加入していないなど無保険であった場合,交通事故の相手方等から十分な賠償金を受け取れなくとも,被害者の方が無保険車傷害特約に加入していれば,そこから保険金を受け取れる場合があります。

 

無保険とは,①相手方が対人賠償保険に加入していない,加入していても免責事由に該当し対人賠償保険から保険金が支払われない,②相手方の対人賠償保険から支払われる保険金額が,無保険車傷害特約から支払われる保険金額よりも低い,③当て逃げなどにより加害者車両が不明な場合を意味します。

無保険車傷害特約は,相手方が無保険であった交通事故により,被害者の方が死亡しまたは後遺障害が生じた場合のみ保険金の支払の対象となります。

そのため,後遺障害が生じず,怪我に対する治療を行い完治したような場合は,保険金の支払い対象になりません。

 

 

無保険車傷害保険特約からは,支払上限額内であれば,保険会社と被害者の間で合意が成立した金額が保険金として支払われます。

そのため,交通事故被害者の方は,自身の保険会社と賠償金額について交渉する余地があります。

被害者の方自身で保険会社と交渉することが難しければ,弁護士を利用することも考えられます。

なお,保険会社との話し合いで金額がまとまらない場合は,裁判で適切な支払い金額を争うこともできます。

 

交通事故被害者の方で事故の相手方が無保険であったとしても無保険車傷害特約を利用すれば十分な保険金を受け取れる可能性がありますので,相手方が無保険で十分な賠償を受けられないのではとご不安に思われている方は,ご加入中の自動車保険に無保険車傷害特約が付いていないか確認していただくとよいと思います。

また,無保険車傷害特約以外にも上記のような場面では,人身傷害傷害保険も利用できますので,事故の相手方からの賠償が期待できないような場合は自身が加入している保険で使用できるものがないかご確認いただくとよいと思います。

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脊椎損傷と脊髄損傷

交通事故で脊椎損傷や脊髄損傷といった傷害を負ってしまうことがあります。

 

脊椎は,椎間板と靭帯・椎骨で構成されており,脊椎内部にある脊柱管内には脊髄がとおっています。

脊椎損傷は,脊椎のみの損傷であり,つまり,骨のみの損傷を意味します。

脊髄損傷は,多くの場合に脊椎(骨)の損傷に加え,脊髄も損傷していることを意味します。

 

したがって,脊髄損傷の場合には,神経が損傷していることになるため,患部の痛みに加え,神経症状が生じます。

生じる神経症状は,脊髄の損傷個所や損傷の程度により異なり,感覚傷害のみの場合もあれば,運動麻痺により歩行できなくなるなどする場合もあります。

 

脊髄損傷により神経が損傷してしまうと,損傷した神経自体を取り換えたりすることはできないため,適切な治療やリハビリを行ったとしても運動麻痺などが残ってしまうことがあります。

そのような場合は,残ってしまった症状を後遺障害として自賠責保険へ申請し,後遺障害等級の認定を受けることが適切な賠償を受ける上で重要となります。

脊椎損傷や脊髄損傷の場合,脊椎の変形、骨折個所の痛み、四肢のしびれ、運動麻痺などの各症状について自賠責保険の後遺障害として認定される可能性があります。

 

脊椎損傷や脊髄損傷などの怪我を負ってしまった場合,まずは適切な治療とリハビリを受けていただくことが何よりも重要となりますが,症状が残ってしまいそうな場合は,加えて,早めに弁護士にご相談いただき,もしもの時に適切な後遺障害等級認定を得られるよう備えておくことも被害者の方の将来を考えた場合には重要となります。

頸椎捻挫と目の調整機能障害

弁護士として,交通事故により首を負傷した方のご相談にのっていると,たまに目の不調を訴えられる方がおられます。

頸部を捻挫すると頸部に存在する交感神経が過度に緊張することにより,めまい,吐き気,耳鳴り,視力の低下などの症状がでることがあるとされており,頸部を負傷後に目の不調が生じている場合は,目の不調は交通事故により負った頸部の負傷に起因している可能性があります。

 

ただ,目の不調が交通事故に起因するものなのか,目の不調と交通事故との間に相当因果関係は認められるかを争われることが多く,争われた結果,目の不調と交通事故との間の相当因果関係が認められないことも多くあります。

そのため,目を直接負傷していないような場合に目の不調を訴えたとしても交通事故の相手方が加入している任意保険会社などは眼科の治療費の支払いを拒否することが多いです。

 

しかしながら,治療費が支払われないからといって,症状があるにも関わらず病院で治療を受けていないと事故後に目の症状が出ていたこと自体を証明する方法がないとなってしまう可能性があります。

事故後気になる症状があるのであれば,たとえ保険会社が治療費を支払わないと言っていても,事故後の目の不調について病院を受診し,診察や検査などを受けておくことが必要となります。

 

立証が難しい症状に悩まされている被害者の方の力に少しでもなれればよいと思っています。

脳脊髄液露出症の画像所見等2

交通事故に遭った後,めまい,耳鳴り,起立性の頭痛などの症状が出た場合に脳脊髄液減少症が疑われることがあります。

脳脊髄液減少症とは,脳脊髄液が漏れた結果,脳が脳脊髄液に浮いている状態から脳底部に落ち込んでしまう疾患をいいます。

 

そのような病態のなかでも、CTやMRIなどで脊髄液の漏出が確実に認められる場合は「脳脊髄液漏出症」と定義されています。

脳脊髄液漏出症については,平成22年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業の脳脊髄液減少の診断・治療法確立に関する研究班が脳髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準というものを公表していることは以前ブログで紹介しました。

そして,平成26年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合事業の脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班が画像判定により脳脊髄液露出症が確定・確実な症例に限定したブラッドパッチ療法の有効性の検討をおこなった結果,約4割で治癒,残4割の症例も軽快したとのことで,画像診断をしっかりと行えば,ブラットパッチ療法は,安全かつ有効な治療法になりえることを示唆しました。

 

交通事故に遭った後,脳脊髄液減少症が疑われる症状があるにもかかわらず,脳脊髄液減少症と認められないケースが多々あります。弁護士としても歯がゆい思いです。

画像判断の確立ですべての脳脊髄液減少症の問題が解決するわけではありませんが,「脳脊髄液露出症」と定義できるものだけでもその科学的根拠に基づく診療指針が早く確立し,少しでも多くの脳脊髄液減少症が疑われる症状で困っておられる交通事故被害者の方が救済されるようになればと思っています。

過失割合

交通事故に遭ってしまった場合,事故当事者間の過失割合が問題となることがあります。

 

交通事故発生の責任が各当事者にどの程度あるのかは,事故類型ごとにある程度目安が決まっています。

実務上は,「別冊判例タイムズ38号」という本を参考に基本的な過失割合を考えることが多いです。

「別冊判例タイムズ38号」には,四輪車同士の事故であるかや十字路の交差点かなど事故類型ごとに基本的な当事者間の過失割合が記載されています。

例えば,信号機により交通整理の行われていない交差点における四輪車同士の事故で双方の速度が同程度かつ道路の幅員が同程度の場合は,左方車対右方車の基本的な過失割合は4対6とされています。

(自身の進行方向の右手から出てきた場合は右方車となり,左手から出てきた場合は左方車となります。)

 

もちろん,上記過失割合は,基本的な過失割合であるため,具体的な事故状況を踏まえ修正が加えられることになります。

上記例では,例えば,見とおしのきく交差点であった場合には基本過失割合は,1割左方車に有利に修正されるとされているため,過失割合は,左方車対右方車=3対7とされます。

 

 

なお,「別冊判例タイムズ38号」は,あくまでも事故類型ごとの基本的な過失割合を記載しているものにすぎません。

そのため,「別冊判例タイムズ38号」は過失割合を検討する際の参考であることを忘れず,判例なども調査したうえで,具体的な事情に照らした過失割合を検討することが重要です。

 

弁護士として,どのような過失割合を主張しえるのか,その主張を裏付ける事情を立証できるのかなどしっかりと交通事故に遭われた方の相談に乗れるよう努めたいと思います。

交通事故の過失割合がどのように決まるのかにつきましては,こちらもご覧ください。

PTSD

弁護士として交通事故の相談に乗っていると交通事故に遭った後,事故の時のことを夢に頻繁に見て眠れないや事故現場を通ろうとすると手が震えるといった話を伺うことがあります。

このような症状がある場合,PTSDを発症している可能性があります。

 

交通事故に遭った後などに発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)は,非器質性精神障害に分類されます。非器質性精神障害とは,脳組織に傷や損傷が確認できないものの,精神障害が発生していることをいいます。

 

①心的に外傷を負うような生命の危機を感じるストレス体験をしたことで,②ストレス体験が再体験され続けており(フラッシュバックなど),③過度の警戒心や入眠困難などの覚醒亢進症状がみられることに加え,④ストレス体験と類似の場面などを回避しようとする努力などがみられる場合は,PTSDを発症している可能性があります。

PTSDの発症が疑われる場合には,どのような時期に精神障害が発生し,それがどのような経過をたどったのか記録に残すという意味でも早期に専門医を受診することが重要になります。

 

PTSDを発症している場合,まずは,専門医のもとで治療を受けることになります。

PTSDの症状は,治療およびストレス体験からの時間の経過により改善が見込めます。

しかしながら,交通事故などのストレス体験後,相当期間を経過してもPTSDの症状が回復しないケースがあります。

そのような場合は,残存した症状について後遺障害等級認定の申請を行うことを検討することになります。