後遺障害逸失利益2

後遺障害逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数という計算式が用いられています。

 

基礎収入は,原則として事故前の現実収入が基礎となります。

事業所得者の基礎収入は,事故前年度の確定申告書記載の所得金額を参考にします。

ただ,事業所得者の場合は,申告額と実収入額が異なることがあります。

そのような場合は,実収入額を立証し,実収入額を基礎収入であるととして後遺障害逸失利益を算定することもあります。

 

裁判などでは,確定申告書記載の所得金額が重視されますので,確定申告記載の所得金額が実収入と異なる場合やそもそも確定申告をしていないような場合は,しっかりとした実収入を基礎付ける資料がないと実収入額の立証は難しいことが多いです。

神戸地裁平成29年9月8日判決は,確定申告をしていなかった原告の基礎収入に関し,「売上高や営業利益が判然としない」「事故前,原告の事業は,経費が上回るいわゆる赤字の状態が続いていたことが窺がわれる。」「原告は,月額60万円程度の売上高があり,25%程度の原価等を差し引いて月額平均40万円程度の利益があった旨供述するが,・・・・納品書,領収書,通帳以外に上記供述を裏付ける的確な証拠はなく,上記供述は採用できない。」として,事故前の収入を認定することはできないとし,後遺障害逸失利益の発生を否定しました。

ただ,当該判決は,事業の維持・存続に必要やむを得ない固定経費の支出は休業損害に該当すべきであるとして,事業所の家賃÷30日×休業日数の休業損害を認定しています。

 

事業所得者の基礎収入や休業損害をどのように捉えるかは事業の内容によっても変わってきます。

確定申告書記載の所得金額が実収入と異なる場合は,実収入の立証が難しいことが多いですが,交通事故被害者の方には,実際に実収入を基礎とした損害が生じていますので,事業所得者の方にも適切な賠償金を受け取っていただけるよう努めたいと思います。

交通事故による逸失利益については,弁護士法人心のこちらのサイトもご覧ください。