交通事故と医療過誤が競合する場合

交通事故の被害者が病院で治療を受けた中で医療過誤に遭ったことで治療が長期化するなどして治療費などの損害が拡大した場合,当該被害者は誰にどのような賠償を求めることができるのか疑問に思われる方もいるかと思います。

 

上記疑問に対して参考となるのが,最高裁平成13年3月13日判決です。

同最高裁判決は,交通事故により,放置すれば死亡するに至る傷害を負ったものの,適切な治療が施されていれば,高度の蓋然性をもった救命ができたものの,医療過誤により被害者が死亡したという事案について,交通事故と医療事故とのいずれもが,被害者の死亡という不可分の一個の結果を招来し,この結果について相当因果関係を有する関係にあるとし,交通事故と医療事故における医療行為とは共同不法にあたると判示しました。

つまり,被害者は,交通事故の加害者に対して,又は,医療事故における医療行為を行った医師に対して自身の被った損害の全額を賠償請求できるとし,交通事故と医療過誤の結果への寄与度により,被害者の賠償請求額を限定することは許されないと判断しました。

ただし,同判決は,交通事故と医療過誤の結果が一致する類型であるため,交通事故で軽傷を負った被害者が医療過誤で死亡した場合などに共同不法行為が成立するとまでは判断していないため,結果が不一致の場合に共同不法行為が成立するか否かはまた別途検討が必要と考えられています。