代車使用期間

交通事故によって車両の修理や買換えが必要であり,かつ,代車を使用する必要性がある場合には,修理または買換えに要する「相当な期間」の代車使用料が交通事故と相当因果関係を有する損害として認められます。

「相当な期間」には,事情に応じて見積りその他の交渉をするのに必要な期間も含まれるものと解されています。

 

修理自体に必要な期間が「相当な期間」に含まれることは争いはありませんが,交渉期間,検討期間,部品調達期間,営業車登録のための期間,保険会社の対応期間が「相当な期間」に含まれるのかが争われることがあります。

例えば,交渉期間については,損害保険会社の担当者は,被害者に対して合理的な損害賠償額の算定方法について十分かつ丁寧な説明をなし,被害者の理解を得るように真摯な努力を尽くすべきであって,そのために時間を要し,その結果,修理に着手する以前の交渉期間中の代車料が生じたとしても,それが,損害保険会社の具体的な説明や交渉経過から見て,通常予測し得る合理的な範囲内に留まる限り,損害保険会社はその代車料についても当然に負担すべき責任を負うとした裁判例があります(神戸地裁平成3年6月12日判決)。

また,保険会社の対応については,例えば,損害保険会社のアジャスターが,検討するとして持ち帰り,その後,被害者には何ら連絡することもなく交渉から降りたことにより修理の開始が遅れたことについて,遅延については,加害者側にその責任があるとして,その期間を代車使用の相当な期間と認めた裁判例があります(神戸地裁平成13年3月21日判決)。

 

代車使用期間としての「相当な期間」の判断は一概には行えないため,弁護士として「相当な期間」を検討する際は,具体的事情に照らして検討することを忘れないように注意したいと思います。