MTBI(軽度外傷性脳損傷)

交通事故に遭うなどして脳に外傷を負った場合,高次脳機能障害が生じることがあります。

高次脳機能障害が認められるためには,①脳損傷があること②高次脳機能障害を疑わせる症状の存在③同症状が脳損傷に起因することが必要です。

 

自賠責保険では,後遺障害に該当するか否かは「労災認定必携」に準拠して判断されています。
「労災認定必携」では,高次脳機能障害に該当する脳損傷があるといえるためには,「脳の器質的病変に基づくものであることから,MRI,CTなどによりその存在が認められることが必要」とされています。
ただ,自賠責保険では「労災認定必携」に準拠して後遺障害等級認定を行っているもののMRI,CTなどにより脳の器質的病変が認められないと絶対に高次脳機能障害に該当する脳損傷があると認定しないとまではされていません。
①事故後の意識障害の有無とその程度,②画像所見,③因果関係の判定(他の疾患(非器質性精神障害等)との識別)という観点を総合して高次脳機能障害に該当する脳損傷が存在するかを判断するとされています。
しかしながら,脳外傷による高次脳機能障害は,脳の器質的損傷の存在が前提となるため,やはり脳の損傷が画像上認められることが非常に重要となります。

 

高次脳機能障害の中で特に問題になるのが,頭部外傷が比較的軽度であるにもかかわらず,高次脳機能障害としての典型的な症状(認知障害,情動障害)が認められるという場合です。
意識障害の程度が軽微であるなど頭部外傷が比較的軽度の場合に発生する脳損傷は,MTBI(軽度外傷性脳損傷)と総称されています。
MTBIについての判断基準としてWHOが2004年に発表した基準があります。
外傷後30分の時点あるいはそれ以上経過している場合は,診察の時点でのグラスコー昏睡尺度得点は13-15(意識レベル軽症)の場合に,①混乱や失見当識②30分またはそれ以下の意識喪失,③24時間以下の外傷健忘期間,④その他の一過性の神経学的異常(けいれん,手術を要しない頭蓋内病変)うちの1つ以上を満たした場合は,MTBIに該当するとされています。

 

しかし,WHOの基準に照らしMTBIに該当するとされたとしても,それのみでは高次脳機能障害であるとは現状では,認定されません。
MTBIについては,裁判上においてもほぼ脳外傷による器質的脳損傷が否定されています。

 

交通事故によって負う傷害は多種多様です。
弁護士として法的な知識のみならず,傷害についても日々学んでいきたいと思っています。

 

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