健康保険利用とリハビリ

交通事故に遭ってしまい怪我をした場合は,病院で治療を受けることになります。

被追突事故など被害者側に全く過失がなく,事故の相手方が任意保険に入っていれば,悩むこともなく,自由診療で治療を受けることが多いと思います。

問題は,被害者側にも一定の過失があるような場合に悩まずに自由診療で治療を受けて良いのかということです。

弁護士として,被害者の方から健康保険の利用について質問を受けることも多いです。

 

 

被害者側にも過失がある場合,治療費などの損害合計額のうち過失割合部分は被害者側の負担になります。

例えば,被害者側に3割の過失がある場合に,治療費が自由診療で300万円もかかったとなると300万円のうち90万円は被害者で負担しなければいけません。

保険会社が,直接病院へ治療費を支払っているような場合は,最終的な賠償の段階で,慰謝料から上記90万円を精算することになります。

そのため,過失がある場合は,健康保険を利用し,治療費の総額を抑えることで,最終的な賠償段階で慰謝料などからの差し引かれる金額を減らす方法を検討する必要があります。

なお,被害者が人身傷害保険に加入しているような場合は,また別です。

 

ただ,反対に過失がある場合に健康保険を利用した方が全てのケースで良いのかというとそうではないと思っています。

健康保険では,上下肢のような運動器に対するリハビリを行う場合は,算定日数の上限が原則150日と定められています(なお,健康保険でもリハビリ継続の必要性があれば上限を超えてリハビリを受けることは可能とされています。)。

そのため,健康保険を利用した通院の場合,通院を開始してから5カ月程度経過したときに,リハビリをこれ以上受けることができないと病院から言われてしまい,回復には,まだリハビリが必要であるにもかかわらず十分なリハビリを受けられなくなるおそれがあります。

したがって,過失割合があったとしても割合が少なく,リハビリをしっかりと行いたいような場合は,健康保険を利用しないことも考えられます(過失がない場合は,健康保険を利用しない方が良いことになります。)。