被害者が、兼業主婦(夫)であり、勤務先は失職の恐れなどから欠勤しなかったものの、通院や怪我のため家事に支障があったというような場合、家事従事者としての休業損害は賠償の対象となるのでしょうか?
2025年版の民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準の下巻(講演録編)に大野眞穂子裁判官による「兼業家事従事者の休業損害について」の講演録が掲載されています。
同講演録では、家事従事者の給与所得が賃金センサスにおける女性の平均賃金以上か否かで場合わけをし、平均賃金以上の場合は、減収がない以上は損害の発生はないとして休業損害が否定され、平均賃金以下の場合は、家事への支障の程度によって一定の休業損害が認められることになるのではないかと思われるとされています。
なお、上記考えには、被害者が女性の平均賃金以上の収入を得ている場合、一般的には事故に遭う前から家事に割ける余力が少ないことが多いことから家事労働分の休業損害を認めることに馴染まないと考えられるものの、幼児が複数いるなどの事情で家事総量が通常よりも多く、配偶者も多忙で、被害者の努力によって就労を効率化させながら家事と両立させていたような事情がある場合に家事に支障があっても休業損害が認められないといった支障があるといったことも記載されています。
弁護士として、兼業主婦の家事従事者としての休業損害を請求することも多いため、どのような場合に損害の発生が認められるかしっかりと検討していきたいです。