過失相殺について

交通事故の賠償請求時に、当事者の過失相殺が問題となることがあります。

交通事故被害者は、被害者側にも交通事故の発生について過失があるときは、加害者からは、発生した損害から自身の過失分を差し引いた額しか賠償を受けることができません。

例えば、交通事故により100万円の損害が発生した場合、交通事故の発生について自身に30%の過失がある場合は、交通事故の相手方からは、70万円の賠償しか受けることはできません。

 

交通事故の賠償において過失相殺は、交通事故から発生した損害について、相手方にどの程度負担させるのが「公平」であるのかといった視点で問題とされます。

この点、過失相殺の考え方には、被害者と加害者の事故発生に対する責任(過失)の対比により判断しようとする考え方(相対説)と被害者と加害者の対比ではなく被害者の過失の大小のみを考慮して過失相殺を判断しようとする考え方(絶対説)があります。

相対説の立場に立てば、四輪車と歩行者の間で発生した交通事故について歩行者に4割の過失がある場合には、歩行者が賠償請求する際は4割の過失相殺がなされ、四輪車が損害賠償請求する際は6割の過失相殺がなされますが、絶対説の立場に立てば、歩行者に4割の過失があったとしても四輪車が損害賠償請求する場合に直ちに過失相殺率は6割と決まらないことになります。

 

交通事故の過失相殺は、概ね相対説の立場に立っていると考えられていますが、交通事故の過失相殺を検討する際に実務上利用されている別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」では、歩行者といった弱者と四輪車の間での交通事故の場合は、歩行者の損害について3割の過失相殺がなされた場合に、四輪車の損害について7割の過失相殺率が直ちに妥当するわけではないとしています。

 

過失相殺率をどのように検討するかは、具体的な事故発生状況によっても異なるため、弁護士としては、交通事故被害者の方に適切な賠償を受けてもらえるようしっかりと検討してきたいと思います。