等級認定と介護費用(高次脳機能障害)

自賠責保険の後遺障害等級表では,高次脳機能障害の介護の程度により等級を分類しており,別表1第1級は「常に介護を要するもの」,別表1第2級は「随時介護を要するもの」,第3級は「声掛けや,介助なしでも日常の動作を行える。」としています。

そのため,3級以下の後遺障害等級認定で将来の介護費用が損害として認められるのかが争点となる場合があります。

 

この点,上記分類に関わらず,3級障害以下の将来の介護費用が認定されるケースが多々見られます。

その理由について,少し古い本ですが「高次脳機能障害と損害賠償ー札幌高裁判決の開設と軽度外傷性脳損傷(MTBI)について」という本に興味深い記載がありました。

当該本では,以前の日本社会では,「患者以外にも誰かしらの家族が家の中に居て,常に一緒に居られる環境が存在した。もし家の中で患者に何か起きた場合,家族が直ぐに対処できた。」「このように,」「自宅外の一般労務はできなくとも,日常生活に介護までは必要としない」という3級の定義が存在したが,現在の日本では,核家族化が進み監視や声掛けを行う者が将来においても必要となるとして3級障害以下の将来の看護費用を認めるケースが出てきたとしています。。

 

「介護」「監視」「声掛け」をどのように損害として評価するのかは難しい問題ですが,3級障害以下の場合でも将来の介護費用は認められることを意識することは重要です。

高次脳機能障害の方の具体的な症状や生活状況に照らし,「介護」「監視」「声掛け」がどの程度必要なのかを個別具体的に主張立証することが弁護士としては重要となると思います。

高次脳機能障害についての弁護士法人心名古屋駅法律事務所のサイトはこちらをご覧ください。

中心性脊髄損傷

中心性脊髄損傷とは,脊髄の中心部(灰白質と白室内側部)の損傷であり,神経症状の出方に特徴があるとされています。

中心性脊髄損傷は,頸椎の過伸展外力により生じることが多いとされており,運動麻痺などの症状は下肢と上肢を比較すると上肢の方が強いことが特徴とされています。

運動麻痺や痺れが両上肢に常時発生しているようであれば,頚髄の中心性損傷が疑われるこになります。

 

中心性脊髄損傷は脊髄の脱臼や骨折がなくとも生じるためその診断はX線検査やCTだけではできません。

骨折や脱臼のない中心性脊髄損傷における診断には,唯一病変を証明できるMRI検査が必要不可欠です。

そのため,交通事故等により首に外力が加わり,両上肢に痺れ等の症状が生じている場合は,急性期においてT2強調画像において髄内の信号変化を確認しておくことが重要となります。

 

急性期においてT2強調画像によるMRI検査を受けていない場合,事後的にに中心性脊髄損傷を立証することは難しく,いわゆるむち打ちとの鑑別は困難となります。

中心性脊髄損が疑われる場合には,早期に適切な検査を受けることは何よりも重要となります。

 

 

弁護士法人心のホームページの写真が新しくなりました。

宜しければ,以下のURLからご確認いただければと思います。

http://www.lawyers-kokoro.com/

素因減額

弁護士として交通事故の相談を被害者の方から受けていると,「保険会社から素因減額の話をされて困っている。」とのお話を伺うことがあります。

 

素因減額とは,交通事故に遭った被害者の方の体質的又は心因的要因が損害の発生や拡大に寄与している場合に,被害者に存在する体質的又は心因的要因を考慮・斟酌して,加害者の賠償額を減額するというものです。

 

どのような要因があれば,被害者の素因が寄与して損害の発生や拡大があったと判断されるのかが問題となります。

体質的要因について参考となる裁判例としては,「被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたとしても,それが疾患にあたらない場合には,特段の事情がない限り,被害者の身体的特徴を損害賠償の額を定めるにあたり斟酌できない」としたものがあります(最判平成8年10月29日判決)。

つまり,病的でない身体的特徴は素因減額の対象とならないとの一定の判断基準が示されています。

ただ,ケースによっては,身体的特徴なのか疾患なのか区別が困難なものもあります。

 

さらに心因的要因については,その定義があいまいであることに加え,交通事故に遭った場合,被害者は当然に何らかのストレスを負います。

そのストレスに被害者は影響を受けますが,ストレスに対する反応は人によって多種多様です。

そのため,交通事故により生じたストレスにより何らかの反応が見られる全ての場合に心因的要因があるとして素因減額とするのは適切ではありません。

ストレスに対す反応が多種多様であることを前提に想定される心因的な反応の範囲を外れる例外的な心因的反応のみを心因的要因として捉え素因減額の判断がなされるべきであると個人的には考えます。

実刑判決と収監

最近,実刑判決が出たにも関わらず,書面での出頭要請に応じず,出頭を要請しに行った検察庁の職員などから逃げた被告人が話題となっていました。名古屋方面へ逃走との情報が流れ不安に思われた方もいたのではないでしょうか。

被疑者の身柄が拘束されていない場合でも,第一審であれば,実刑判決が言い渡されると保釈の効力は失効するため,判決後すぐに身柄が拘束されます。

他方で控訴審では,保釈の効力は,第一審と同じように控訴棄却判決の言い渡しと同時になくなりますが、控訴審では被告人には原則として出廷義務がないため,その場ですぐに身柄が拘束されることはありません。

判決の言い渡し後,後日,検察庁から出頭の要請があり,被告人は自身で出頭し収監されることになります。

身柄拘束は,身柄を拘束された人の日常生活(家庭・仕事)に回復困難な影響を与えます。

そのため,判決確定前の身柄拘束は必要最小限に制限される必要があることは大前提ですし,弁護人としては身柄の早期解放を目指すことになります。

ただ,身柄の拘束は必要最小限に留められるべきですが,他方で,被疑者の逃亡防止や判決が確定後の被告人の収監には確実性が求められます。

この両立が図れてこそ,被疑者段階での保釈を増やすいっそうの後押しになるのではと思います。

ただ,どのようにすれば両立するのかは難しい課題であり,まずは,ニュースなどでも取り上げられていたように判決確定後の収監方法の見直しからと思われます。

無保険車傷害特約

交通事故の相手方が任意保険に加入していないなど無保険であった場合,交通事故の相手方等から十分な賠償金を受け取れなくとも,被害者の方が無保険車傷害特約に加入していれば,そこから保険金を受け取れる場合があります。

 

無保険とは,①相手方が対人賠償保険に加入していない,加入していても免責事由に該当し対人賠償保険から保険金が支払われない,②相手方の対人賠償保険から支払われる保険金額が,無保険車傷害特約から支払われる保険金額よりも低い,③当て逃げなどにより加害者車両が不明な場合を意味します。

無保険車傷害特約は,相手方が無保険であった交通事故により,被害者の方が死亡しまたは後遺障害が生じた場合のみ保険金の支払の対象となります。

そのため,後遺障害が生じず,怪我に対する治療を行い完治したような場合は,保険金の支払い対象になりません。

 

 

無保険車傷害保険特約からは,支払上限額内であれば,保険会社と被害者の間で合意が成立した金額が保険金として支払われます。

そのため,交通事故被害者の方は,自身の保険会社と賠償金額について交渉する余地があります。

被害者の方自身で保険会社と交渉することが難しければ,弁護士を利用することも考えられます。

なお,保険会社との話し合いで金額がまとまらない場合は,裁判で適切な支払い金額を争うこともできます。

 

交通事故被害者の方で事故の相手方が無保険であったとしても無保険車傷害特約を利用すれば十分な保険金を受け取れる可能性がありますので,相手方が無保険で十分な賠償を受けられないのではとご不安に思われている方は,ご加入中の自動車保険に無保険車傷害特約が付いていないか確認していただくとよいと思います。

また,無保険車傷害特約以外にも上記のような場面では,人身傷害傷害保険も利用できますので,事故の相手方からの賠償が期待できないような場合は自身が加入している保険で使用できるものがないかご確認いただくとよいと思います。

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脊椎損傷と脊髄損傷

交通事故で脊椎損傷や脊髄損傷といった傷害を負ってしまうことがあります。

 

脊椎は,椎間板と靭帯・椎骨で構成されており,脊椎内部にある脊柱管内には脊髄がとおっています。

脊椎損傷は,脊椎のみの損傷であり,つまり,骨のみの損傷を意味します。

脊髄損傷は,多くの場合に脊椎(骨)の損傷に加え,脊髄も損傷していることを意味します。

 

したがって,脊髄損傷の場合には,神経が損傷していることになるため,患部の痛みに加え,神経症状が生じます。

生じる神経症状は,脊髄の損傷個所や損傷の程度により異なり,感覚傷害のみの場合もあれば,運動麻痺により歩行できなくなるなどする場合もあります。

 

脊髄損傷により神経が損傷してしまうと,損傷した神経自体を取り換えたりすることはできないため,適切な治療やリハビリを行ったとしても運動麻痺などが残ってしまうことがあります。

そのような場合は,残ってしまった症状を後遺障害として自賠責保険へ申請し,後遺障害等級の認定を受けることが適切な賠償を受ける上で重要となります。

脊椎損傷や脊髄損傷の場合,脊椎の変形、骨折個所の痛み、四肢のしびれ、運動麻痺などの各症状について自賠責保険の後遺障害として認定される可能性があります。

 

脊椎損傷や脊髄損傷などの怪我を負ってしまった場合,まずは適切な治療とリハビリを受けていただくことが何よりも重要となりますが,症状が残ってしまいそうな場合は,加えて,早めに弁護士にご相談いただき,もしもの時に適切な後遺障害等級認定を得られるよう備えておくことも被害者の方の将来を考えた場合には重要となります。

内部研修

桜が咲く季節になりましたね。

今週末は名古屋も桜が満開になるみたいなので良い天気になるといいですね。

 

 

先日,事務所内の勉強会で刑事訴訟法改正による裁判員裁判対象事件及び検察官独自捜査事件について身体拘束下の取り調べの全過程の録音録画制度の導入について検討しました。

上記制度の対象事件以外にも取り調べの可視化が広がるなか,弁護人としてどのように取り調べの可視化と向き合い対応していくのかといったことについて話題となりました。

 

従来とは異なる制度の導入が進んでおりますので,従来通りのアドバイスでは適切なアドバイスをしたことにならない可能性があります。今後どのような点に気を付けて弁護活動を行うべきか新たな情報を得られて良かったです。

自身が司法試験を受けたときから,刑事訴訟法など法律が大きく変わってきておりますので,法律の専門家として十分な弁護活動ができるよう新たな制度についてもしっかりと把握していきたいです。

 

日々忙しいと,ついつい疎かにしがちな部分について,定期的に事務所として把握する機会を設けられているのでとてもありがたいです。

自身でも新しいことを学ぼうとする姿勢を忘れないようにしたいと思います。

頸椎捻挫と目の調整機能障害

弁護士として,交通事故により首を負傷した方のご相談にのっていると,たまに目の不調を訴えられる方がおられます。

頸部を捻挫すると頸部に存在する交感神経が過度に緊張することにより,めまい,吐き気,耳鳴り,視力の低下などの症状がでることがあるとされており,頸部を負傷後に目の不調が生じている場合は,目の不調は交通事故により負った頸部の負傷に起因している可能性があります。

 

ただ,目の不調が交通事故に起因するものなのか,目の不調と交通事故との間に相当因果関係は認められるかを争われることが多く,争われた結果,目の不調と交通事故との間の相当因果関係が認められないことも多くあります。

そのため,目を直接負傷していないような場合に目の不調を訴えたとしても交通事故の相手方が加入している任意保険会社などは眼科の治療費の支払いを拒否することが多いです。

 

しかしながら,治療費が支払われないからといって,症状があるにも関わらず病院で治療を受けていないと事故後に目の症状が出ていたこと自体を証明する方法がないとなってしまう可能性があります。

事故後気になる症状があるのであれば,たとえ保険会社が治療費を支払わないと言っていても,事故後の目の不調について病院を受診し,診察や検査などを受けておくことが必要となります。

 

立証が難しい症状に悩まされている被害者の方の力に少しでもなれればよいと思っています。

脳脊髄液露出症の画像所見等2

交通事故に遭った後,めまい,耳鳴り,起立性の頭痛などの症状が出た場合に脳脊髄液減少症が疑われることがあります。

脳脊髄液減少症とは,脳脊髄液が漏れた結果,脳が脳脊髄液に浮いている状態から脳底部に落ち込んでしまう疾患をいいます。

 

そのような病態のなかでも、CTやMRIなどで脊髄液の漏出が確実に認められる場合は「脳脊髄液漏出症」と定義されています。

脳脊髄液漏出症については,平成22年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業の脳脊髄液減少の診断・治療法確立に関する研究班が脳髄液漏出症画像判定基準・画像診断基準というものを公表していることは以前ブログで紹介しました。

そして,平成26年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合事業の脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究班が画像判定により脳脊髄液露出症が確定・確実な症例に限定したブラッドパッチ療法の有効性の検討をおこなった結果,約4割で治癒,残4割の症例も軽快したとのことで,画像診断をしっかりと行えば,ブラットパッチ療法は,安全かつ有効な治療法になりえることを示唆しました。

 

交通事故に遭った後,脳脊髄液減少症が疑われる症状があるにもかかわらず,脳脊髄液減少症と認められないケースが多々あります。弁護士としても歯がゆい思いです。

画像判断の確立ですべての脳脊髄液減少症の問題が解決するわけではありませんが,「脳脊髄液露出症」と定義できるものだけでもその科学的根拠に基づく診療指針が早く確立し,少しでも多くの脳脊髄液減少症が疑われる症状で困っておられる交通事故被害者の方が救済されるようになればと思っています。

年末

平成30年もあっという間に終わりですね。

今日からまた一段と寒くなり,年末に向けさらに寒くなるようです。

名古屋でも積雪の可能性があるようですので車で帰省される方はお気を付けください。

 

平成30年12月14日から,昨年の大雪の際,北陸地方の幹線道路で多数の車が立ち往生してしまったことを受けて ,新たに「タイヤチェーンを取り付けていない車両通行止め」の規制標識が新たに設けられることになりました。

規制標識が新たに設けられたことにより,大雪の際は,タイヤチェーンを付けていないと通行できない道路が出てくるため,大雪になりそうな場合はタイヤチェーンの準備をしておくことが大切になります。

スタッドレスタイヤなので大丈夫とタイヤチェーンを準備されていないかたもいるかと思いますので,大雪が予想されているときはタイヤチェーンのご準備をご注意ください。

 

今年は,昨年よりも早く本日を仕事納めとさせていただく予定です。

平成30年12月28日から平成31年1月6日までと少し長めにお休みをいただくことになりますので,年末年始でしっかりと英気を養い,年明けからはまた,心機一転,しっかりと職務に励みたいと思います。

皆様,良いお年をお迎えください。

過失割合

交通事故に遭ってしまった場合,事故当事者間の過失割合が問題となることがあります。

 

交通事故発生の責任が各当事者にどの程度あるのかは,事故類型ごとにある程度目安が決まっています。

実務上は,「別冊判例タイムズ38号」という本を参考に基本的な過失割合を考えることが多いです。

「別冊判例タイムズ38号」には,四輪車同士の事故であるかや十字路の交差点かなど事故類型ごとに基本的な当事者間の過失割合が記載されています。

例えば,信号機により交通整理の行われていない交差点における四輪車同士の事故で双方の速度が同程度かつ道路の幅員が同程度の場合は,左方車対右方車の基本的な過失割合は4対6とされています。

(自身の進行方向の右手から出てきた場合は右方車となり,左手から出てきた場合は左方車となります。)

 

もちろん,上記過失割合は,基本的な過失割合であるため,具体的な事故状況を踏まえ修正が加えられることになります。

上記例では,例えば,見とおしのきく交差点であった場合には基本過失割合は,1割左方車に有利に修正されるとされているため,過失割合は,左方車対右方車=3対7とされます。

 

 

なお,「別冊判例タイムズ38号」は,あくまでも事故類型ごとの基本的な過失割合を記載しているものにすぎません。

そのため,「別冊判例タイムズ38号」は過失割合を検討する際の参考であることを忘れず,判例なども調査したうえで,具体的な事情に照らした過失割合を検討することが重要です。

 

弁護士として,どのような過失割合を主張しえるのか,その主張を裏付ける事情を立証できるのかなどしっかりと交通事故に遭われた方の相談に乗れるよう努めたいと思います。

交通事故の過失割合がどのように決まるのかにつきましては,こちらもご覧ください。

PTSD

弁護士として交通事故の相談に乗っていると交通事故に遭った後,事故の時のことを夢に頻繁に見て眠れないや事故現場を通ろうとすると手が震えるといった話を伺うことがあります。

このような症状がある場合,PTSDを発症している可能性があります。

 

交通事故に遭った後などに発症するPTSD(心的外傷後ストレス障害)は,非器質性精神障害に分類されます。非器質性精神障害とは,脳組織に傷や損傷が確認できないものの,精神障害が発生していることをいいます。

 

①心的に外傷を負うような生命の危機を感じるストレス体験をしたことで,②ストレス体験が再体験され続けており(フラッシュバックなど),③過度の警戒心や入眠困難などの覚醒亢進症状がみられることに加え,④ストレス体験と類似の場面などを回避しようとする努力などがみられる場合は,PTSDを発症している可能性があります。

PTSDの発症が疑われる場合には,どのような時期に精神障害が発生し,それがどのような経過をたどったのか記録に残すという意味でも早期に専門医を受診することが重要になります。

 

PTSDを発症している場合,まずは,専門医のもとで治療を受けることになります。

PTSDの症状は,治療およびストレス体験からの時間の経過により改善が見込めます。

しかしながら,交通事故などのストレス体験後,相当期間を経過してもPTSDの症状が回復しないケースがあります。

そのような場合は,残存した症状について後遺障害等級認定の申請を行うことを検討することになります。

労災保険と交通事故

通勤中や勤務中に交通事故に遭ってしまうことがあります。

 

通常,交通事故に遭った場合に登場する保険の種類には,①事故の相手方強制加入の保険(自賠責保険),②事故の相手方任意加入の保険(任意保険),③事故に遭った本人加入の人身傷害保険,④健康保険(第三者行為による傷病届提出が必要)などがあります。

通勤中や勤務中の交通事故の場合は,上記のうち④健康保険は登場しませんが,その代わりに⑤労災保険(第三者行為災害届提出が必要)が登場します。

 

交通事故の相手方が任意保険に入っている場合,労災保険を利用して治療を受けるのが良いのだろうかと疑問に思われる方もいると思います。。

以下では,被害者側にも過失がある場合の労災保険利用のメリットを見ていきたいと思います。

 

まず,交通事故でけがをした場合に生じる主な損害の項目は,治療費,通院交通費,休業損害,傷害慰謝料になります。

仮に以下のような損害が発生したとします。

1 治療費   60万0000円

2 通院交通費    6000円

3 休業損害  50万0000円

4 慰謝料  120万0000円

━━━━━━━━━━━━━━━━━

5 合計額  230万6000円

被害者側にも過失があると,生じた損害の合計額のうち,被害者側の過失部分は相手へ請求できません。

たとえば,被害者側に3割の過失がある場合は,以下のとおり,相手へ請求できる損害合計額は161万4200円となります。

1 治療費   60万0000円(42万0000円)

2 通院交通費    6000円(   4200円)

3 休業損害  50万0000円(35万0000円)

4 慰謝料  120万0000円(84万0000円)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

5 合計額  230万6000円(161万4200円)

他方で,労災保険を利用している場合は,労災保険からは,まず,治療費60万円と休業損害36万円(概算)の支払いがなされることになります。

労災保険には,過失がある場合の調整は,損害合計額ではなく各損害項目内でなされるという特徴があります。

そのため,労災保険を利用している場合は,以下のとおり,被害者が受け取れる損害合計額は180万4200円となります。

1 治療費   60万0000円(60万0000円・労災保険費拘束)

2 通院交通費    6000円(   4200円)

3 休業損害  50万0000円(36万0000円・労災保険費目拘束)

4 慰謝料  120万0000円(84万0000円)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

5 合計額  230万6000円(180万4200円)

 

以上のように被害者側にも過失があるような場合は,労災保険には費目拘束というメリットがあります。

弁護士として各保険の仕組みをしっかりと把握しておきたいと思います。

内部研修

先日,事務所において,「牧草大輔(まきくさ だいすけ)」さんという方からの研修がありました。

牧草さんは,現在,保険代理店の執行役員と経営コンサルタント会社の代表取締役をされている方です。

 

今回の研修のテーマは,「コミュニケーション」についてでした。

コミュニケーション能力が重要との話は良く聞くと思います。

弁護士も直接人と関わって行く仕事であるためコミュニケーション能力が重要となります。

ただ,実際にコミュニケーション能力を向上させようと思ったときにその具体的方法がわからないことが多いです。

今回の牧草さんの弁護士に向けた研修には,牧草さんの実際の経験などもまじえつつ,コミュニケーションとは何かというとこらから始まり,コミュニケーション能力を向上させる具体的方法についても盛り込まれていました。

普段自分ではあまり学ばない分野であるためとても興味深かったです。

 

弁護士は,十分な法的知識があることを求められるのはもちろんですが,依頼者の方と十分なコミュニケーションを図り,しっかりとした信頼関係を築ける能力があることも求められていると思います。

他の業種の方の話を聞くと自分にはなかった視点を学ぶことができますので,今後の自身の職務に生かしていければと思います。

警察車両との交通事故

警察車両が車両を追跡などしているときに第三者の車両に衝突し,事故を起こしてしまうことがあります。

このような場合,第三者の車両に乗車していた人は,どのような法的根拠に基づき警察から損害の賠償を受けられるのでしょうか。

 

通常の交通事故の場合は,事故の相手方に対し不法行為に基づく損害賠償請求を行いますが(民法709条など),警察車両との事故の場合は,事故を起こした警察を所轄している都道府県を相手に国家賠償請求を行う必要があります(国家賠償法1条1項)。

国家賠償請求が認められるためには,①公務員が,②その職務を行うことについて,③故意または過失によって,④違法に他人に損害を加えたことを立証する必要があります。

特に④「違法に」との要件を満たすかが問題となることが多いです。

裁判例は,「違法に」との要件を満たすためには,追跡行為などが当該職務目的を遂行する上で不必要であるか,又は,逃走車両の逃走の態様及び走路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無及び内容に照らし,追跡の開始・継続若しくは追跡の方法が不相当である場合には「違法に」と言えるとしています。

そのため,「違法に」との要件を満たしていないとして国家賠償請求は認められない場合も多いです。

 

 

ただ,警察車両も自賠責保険には加入していますので自賠責保険へ被害者請求を行い治療費や慰謝料などを受け取ることが可能です。

そのため,まずは,自賠責保険から治療費や慰謝料を受け取っていただくのが良いと思われます。

 

交通事故の相手方,警察車両などの公用車の場合は,根拠法や過失割合の考え方も異なるところがあります。

弁護士としてしっかりと対処していきたいと思います。

健康保険利用とリハビリ

交通事故に遭ってしまい怪我をした場合は,病院で治療を受けることになります。

被追突事故など被害者側に全く過失がなく,事故の相手方が任意保険に入っていれば,悩むこともなく,自由診療で治療を受けることが多いと思います。

問題は,被害者側にも一定の過失があるような場合に悩まずに自由診療で治療を受けて良いのかということです。

弁護士として,被害者の方から健康保険の利用について質問を受けることも多いです。

 

 

被害者側にも過失がある場合,治療費などの損害合計額のうち過失割合部分は被害者側の負担になります。

例えば,被害者側に3割の過失がある場合に,治療費が自由診療で300万円もかかったとなると300万円のうち90万円は被害者で負担しなければいけません。

保険会社が,直接病院へ治療費を支払っているような場合は,最終的な賠償の段階で,慰謝料から上記90万円を精算することになります。

そのため,過失がある場合は,健康保険を利用し,治療費の総額を抑えることで,最終的な賠償段階で慰謝料などからの差し引かれる金額を減らす方法を検討する必要があります。

なお,被害者が人身傷害保険に加入しているような場合は,また別です。

 

ただ,反対に過失がある場合に健康保険を利用した方が全てのケースで良いのかというとそうではないと思っています。

健康保険では,上下肢のような運動器に対するリハビリを行う場合は,算定日数の上限が原則150日と定められています(なお,健康保険でもリハビリ継続の必要性があれば上限を超えてリハビリを受けることは可能とされています。)。

そのため,健康保険を利用した通院の場合,通院を開始してから5カ月程度経過したときに,リハビリをこれ以上受けることができないと病院から言われてしまい,回復には,まだリハビリが必要であるにもかかわらず十分なリハビリを受けられなくなるおそれがあります。

したがって,過失割合があったとしても割合が少なく,リハビリをしっかりと行いたいような場合は,健康保険を利用しないことも考えられます(過失がない場合は,健康保険を利用しない方が良いことになります。)。

内部研修

先日,事務所内で民法改正についての勉強会がありました。

昨年度も民法改正に関する事務所内での研修はありましたが,今年度は,テーマを絞った内容となっており,今回のテーマは,改正民法の施行時期と保証についてでした。

今後も,テーマ別に複数回の勉強会が予定されています。

 

改正民法では,保証に関して,公証人による保証意思確認手続きの創設や個人根保証契約に限度額に関する規律が設けられたりなど様々な新たな規律が設けられることになります。

 

私は,普段交通事故の案件を多く取り扱っているため,保証関係の案件を取り扱うことは少ないのですが,弁護士としては,当然知っていなければいけない重要な改正と言えます。

普段は,なかなか自分の業務と直接関連しない部分の勉強をする時間がとれないため,事務所に民法改正について勉強する時間を設けてもらえ助かっています。

事務所に設けてもらえた機会を有効に活用し,改正民法が施行される平成32年4月1日までには,改正民法と従来の民法とでどのような取り扱いの違いが生じるのかしっかりと理解しておきたいと思います。

また,日々法律は変わるため,法律の専門家として,重要な法律については,どのような改正が行われているのか把握していきたいと思います。

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GW

もうすぐGWですね。

 

GWの前半はいい天気が続くとのことで,絶好のドライブ日和になりそうですね。

車で出かけられる方は交通事故に気を付けつつドライブをお楽しみください。

 

道路が渋滞している場合など,ブレーキから足を離してしまい,クリープ現象で前の車に衝突してしまうことがあります。

クリープ現象とは,オートマチック車でエンジンがアイドリング状態にあるときに,アクセルを踏まなくてもブレーキから足を離すと車がゆっくりと動き出す現象です。

クリープ現象により前の車に衝突した場合,衝突した車はスピードが出ていませんので,通常車両の損傷は軽微なものとなります。

そのため,傷のみで凹みが生じない場合も多いです。

 

クリープ現象により事故が発生した場合に問題となるのが,追突された車に乗車していた被害者が怪我を負うのかということです。

低速度で追突された場合は,追突の衝撃で首が鞭のようにしなるとは考えられないとして,交通事故と頸椎捻挫等の傷害の間の相当因果関係が否定されるケースがあります。

 

しかしながら,低速で追突された場合でも事故後に頚部痛を訴える被害者の方は多くおられます。

いわゆるむち打ち症は,痛みの原因が検査結果などに現れませんので,車両の損傷の程度が低い場合にどのようにそのような被害者の方を手助けできるかいつも考えさせられます。

 

少しでも弁護士として交通事故被害者の方の手助けになれるよう日々精進したいと思います。

後遺障害逸失利益2

後遺障害逸失利益は,基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数という計算式が用いられています。

 

基礎収入は,原則として事故前の現実収入が基礎となります。

事業所得者の基礎収入は,事故前年度の確定申告書記載の所得金額を参考にします。

ただ,事業所得者の場合は,申告額と実収入額が異なることがあります。

そのような場合は,実収入額を立証し,実収入額を基礎収入であるととして後遺障害逸失利益を算定することもあります。

 

裁判などでは,確定申告書記載の所得金額が重視されますので,確定申告記載の所得金額が実収入と異なる場合やそもそも確定申告をしていないような場合は,しっかりとした実収入を基礎付ける資料がないと実収入額の立証は難しいことが多いです。

神戸地裁平成29年9月8日判決は,確定申告をしていなかった原告の基礎収入に関し,「売上高や営業利益が判然としない」「事故前,原告の事業は,経費が上回るいわゆる赤字の状態が続いていたことが窺がわれる。」「原告は,月額60万円程度の売上高があり,25%程度の原価等を差し引いて月額平均40万円程度の利益があった旨供述するが,・・・・納品書,領収書,通帳以外に上記供述を裏付ける的確な証拠はなく,上記供述は採用できない。」として,事故前の収入を認定することはできないとし,後遺障害逸失利益の発生を否定しました。

ただ,当該判決は,事業の維持・存続に必要やむを得ない固定経費の支出は休業損害に該当すべきであるとして,事業所の家賃÷30日×休業日数の休業損害を認定しています。

 

事業所得者の基礎収入や休業損害をどのように捉えるかは事業の内容によっても変わってきます。

確定申告書記載の所得金額が実収入と異なる場合は,実収入の立証が難しいことが多いですが,交通事故被害者の方には,実際に実収入を基礎とした損害が生じていますので,事業所得者の方にも適切な賠償金を受け取っていただけるよう努めたいと思います。

交通事故による逸失利益については,弁護士法人心のこちらのサイトもご覧ください。

内部研修

最近,時間が経つのが早いです。

2月も気づけば終わり,もうすぐ春ですね。

 

先日,定期的に事務所内で行われている交通事故に関する研修がありました。

 

各研修では,担当者が決められたテーマに関して,発表するのですが,今回は,人身傷害保険の仕組みなどについての発表がありました。

 

人身傷害保険を上手く利用すれば,交通事故の発生に関し,被害者側に一定の過失があった場合でも人的損害に関し,過失がない場合と同様の賠償金を受け取れることがあります。

ただ,人身傷害保険を利用するタイミングや裁判で解決するか示談で解決するかなどで最終的な受取額が変わってきます。

また,各保険会社で人身傷害保険の約款が異なる部分もありますので,しっかりと各保険の仕組みを理解した上で,弁護士として,交通事故被害者の方のご要望にあった提案ができればと思っています。

 

研修内では,学術的な部分だけではなく,各保険会社の約款の相違,具体的な事例,各弁護士がどのような対応をしているのかといったことを知ることができ,とても勉強になりました。

 

ついつい新たな情報の入手などが疎かになってしまいがちですので,研修の機会を生かし,日々情報の更新に努めたいと思います。