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離婚の慰謝料

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2021年6月21日

1 離婚の慰謝料とは

慰謝料とは、加害者の有責行為により精神的苦痛を被った場合に、その加害者に対して請求できる損害賠償のことをいいます。

離婚慰謝料とは、離婚原因となった個別の有責行為により被った精神的苦痛に対する損害賠償請求と、離婚により配偶者の地位を失ったこと(夫婦関係が破綻したこと)により被った精神的苦痛に対する損害賠償請求の二つを意味します。

ただ、実務上は、上記の二つを明確に区別することはあまりありません。

例えば配偶者の不倫を理由に、離婚訴訟で離婚とあわせて慰謝料300万円を請求するという場合、請求者は、不倫そのものにより被った精神的苦痛に対する慰謝料と、その不倫により夫婦関係が破綻したことに対する慰謝料の双方をあわせて請求している場合がほとんどです。

2 離婚で慰謝料を請求できるのはどのような場合か?

離婚で配偶者に慰謝料を請求できるのは、その配偶者が夫婦関係を破綻させる原因となった行為(有責行為)を行った場合です

あくまで有責と評価できる行為を行った、つまり民法上の不法行為と評価できる行為が行われたことが前提ですので、例えば、夫婦間の性格に不一致があり、双方の合意のもとに別居を開始したことにより夫婦関係が破綻したというような場合は、原則として慰謝料の問題は生じません(「原則」としたのは、一方の配偶者の性格が社会通念上あまりにも特殊であり、相手方配偶者が婚姻前にその性格に気付いていなかったような場合は、慰謝料の問題が生じうるためです。)。

離婚おける有責行為としては、不貞行為や家庭内暴力(DV)が典型ですが、これらに限られるわけではありません。

例えば、夫が正当な理由もないのに妻と同居しようとせず、かつ収入があるにもかかわらずパート勤めで生活がいっぱいいっぱいの妻に生活費を渡さないような場合(これを「悪意の遺棄」といいます。)にも、慰謝料の請求が可能です。

また、ギャンブルのために夫が借金を重ねているような場合など、一方配偶者の借金の問題で夫婦の経済生活が破綻し、夫婦関係が破綻した場合にも、離婚慰謝料の請求は認められるでしょう(逆に、夫の個人事業を維持するために借金をしたような場合は、それで生活が崩壊しても、離婚慰謝料の請求は原則として難しいでしょう。)。

3 離婚の慰謝料の相場

離婚の慰謝料の金額は、裁判では、離婚原因となった有責行為そのものの性質のほか、有責行為が行われた際の夫婦の状況(有責行為が行われる前に夫婦関係が冷え込んでいたこと等)、婚姻期間および同居期間等、諸々の要素を考慮して決められます。

また、例えば不貞行為が有責行為の場合は、不貞行為が行われていた期間、不貞相手と同棲している(いた)かどうか、不貞相手との間に子供が生まれているかどうか等の要素が考慮されます。

さらに、多額の財産分与がある場合は、その財産分与に慰謝料的な意味合いも含まれているとして離婚慰謝料の金額自体は比較的低額になる場合もありますし、扶養的な要素(例えば離婚に伴い有責配偶者が相手方配偶者の連れ子との養子縁組を解消するケースなど)を考慮して慰謝料が増額される場合もあります。

そのため、例えば「離婚原因が不貞行為だから離婚慰謝料は○○○万円前後が相場」というように明示することは困難です。

離婚訴訟において、慰謝料の請求金額が比較的高額になる傾向があるのは、相場を把握するのが困難であるという事情も影響しているのでしょう。

4 浮気が原因で離婚をする場合、浮気相手にも慰謝料請求できるか?

⑴ 婚姻した夫婦は、相互に貞操義務を負います。

つまり、配偶者以外の者と肉体関係を持ってはいけないことになります。

配偶者以外の者と肉体関係を持つことを不貞行為と呼びます。

この貞操義務に違反して配偶者以外の者と肉体関係を持ち、夫婦婚姻生活の平和を乱した場合は、その不貞行為を行った配偶者は、他方配偶者がそれによって被った精神的苦痛に対して慰謝料を支払う義務を負います。

そして、不貞行為は、一方配偶者が単独で行うことができず、必ず不貞の相手方の存在が必要となりますので、不貞行為は一方配偶者とその不貞相手の共同不法行為ということになり、不貞の相手方も不貞行為により精神的苦痛を被った他方配偶者に対し慰謝料を支払う義務を負います

⑵ 以上は、不貞行為を行った場合に、一方配偶者と不貞行為を行ったことを理由として不貞の相手方が他方配偶者に慰謝料を支払う義務を負う場合のご説明ですが、それでは、その不貞行為により夫婦関係が破綻し、離婚に至った場合に、その不貞相手は、他方配偶者が離婚により配偶者の地位を失ったこと(夫婦関係が破綻したこと)により被った精神的苦痛について慰謝料を支払う義務を負うでしょうか。

この点については、近時の最高裁判決で原則として否定されました。

最高裁判所は、「夫婦の一方は、他方と不貞行為に及んだ第三者に対して、上記特段の事情がない限り、離婚に伴う慰謝料を請求することはできないものと解するのが相当である。」とし、その特段の事情として、「当該第三者が、単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず、当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られる」と指摘しています。

つまり、不貞の相手方に対しては、原則として、離婚の原因となった個別の有責行為である不貞行為そのものについての慰謝料しか請求できないことになりますので、慰謝料請求(不法行為に基づく損害賠償請求)の消滅時効期間に注意しなければならないということになります。

5 離婚の慰謝料請求について弁護士に依頼するメリット

離婚の慰謝料請求については、例えば不貞行為の場合に、証拠が十分揃っており、相手方配偶者も不貞行為を認めているケースでも、特に訴訟になると、不貞行為の時点では夫婦関係が破綻していたとして、それを基礎づける事実を色々と主張される場合があります。

不貞行為の時点で夫婦関係が破綻していればそもそも慰謝料は発生しませんし、破綻にまでは至っていなくても、夫婦関係が冷え込んでいたことが立証できれば慰謝料を減額する効果があるからです。

このような訴訟での対応は、訴訟について経験のない一般の方には大変ですし、また、弁護士を代理人としてつけていないと、毎回ご自身で裁判所に出頭しなければならず、重い負担となります。

そのため、離婚の慰謝料について訴訟も見据えて請求するのであれば、専門家である弁護士に依頼した方がよいでしょう。

6 弁護士に依頼するタイミング

離婚の慰謝料について弁護士に依頼するタイミングについては、夫婦の状況によりケースバイケースですが、まだ同居している場合には、弁護士が代理人として他方配偶者と交渉するのは難しいことが多いでしょう。

他方、既に別居を開始し、夫婦間での話し合いも難しい状況であれば、早めに弁護士に相談し、依頼した方がよいでしょう。

ただし、慰謝料を請求する場合は、それを基礎づける有責行為を立証する必要がありますので、その証拠があるかどうか、どう収集すればよいのかについては、早めに弁護士に相談してアドバイスをもらうとよいでしょう

証拠が散逸してしまうと、請求が困難になる場合があるからです。

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