交通事故部会

事務所で定期的に開かれている交通事故部会で共同不法行為事案における近親同乗者が近親運転手の車両の自賠責保険から受領した自賠責保険金は、近親同乗者の損害のうち近親運転手側の過失により減額される損害分に先行的に充当されるという判例について取り扱いがありました(名古屋地裁平成27年6月22日)。

 

例えば、A運転車両とB運転車両間の交差点での出会い頭の事故で、事故発生に関する過失割合がA対B=40対60といったケースにおいて、Aの妻CがA運転車両に同乗していたとします。

AとCが身分上ないし生活関係上一体をなすとみられるような関係にある場合は、AとBとの関係におけるAの過失は被害者側の過失として妻CとBとの関係でも考慮され、妻Cの損害についてもBとの関係においては4割の過失相殺がなされることになります。

 

ただ、妻Cは、A運転車両との関係で自賠責保険上の「他者性」が認められる場合、B運転車両の自賠責保険でけではなく、A運転車両の自賠責保険へも保険金の請求を行うことができます。

上記判例は、上記の場合に、妻CがA運転車両の自賠責保険へ保険金の請求を行い、自賠責保険金を受領している場合、当該自賠責保険金は、Bへの賠償請求額との関係では当然に既払い金として扱われるのではなく、被害者側の過失として減額された4割分に先行的に充当され、さらに残額があるような場合にBとの関係で既払い金として控除されると判断しています。

 

当該判例が話し合い段階でそのまま適用されるかは問題がありますが、弁護士として、知っておいた方が良い判例かと思います。