高齢被害者の将来介護費について

2025年版「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 下巻(講演録編)」に嶋田登美子裁判官の「高齢被害者に後遺障害が残存した場合における将来介護費の認定について」の講演録が掲載されています。

 

将来介護費とは、症状固定後の被害者に対する付き添または介護費用のことをいいます。

2025年版「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準 上巻」の28頁には「医師の指示または症状の程度により必要があれば被害者本人の損害として認める」とされています。

この将来介護費用については、自賠責保険におては介護費が認められるのは、後遺障害等級1級(常に介護を要するもの)および後遺障害等級2級(随時介護を要するもの)とされていることから、後遺障害等級が3級以下の場合に介護の必要性が認められるのかが問題となります。

この点、裁判例では、自賠責保険における介護費は被害者の生存に必要な内容を前提としているため、それに至らない場合でも近くでの見守りや下肢の機能障害のため日常生活に介助を要する場合など、具体的な介護や付き添いの必要性が認められる場合は、後遺障害等級が3級以下であっても介護の必要性を認め、介護費用を損害として認定しています。

 

ただ、被害者が高齢者の場合、介護の必要性について被害者の事故前からの既往症の影響によるものとして、事故との因果関係が争われたり、素因減額の主張がなされたりすることがあります。

被害者の方が適切な賠償を受けるためには、事故との因果関係が争われたり、素因減額の主張が行われた場合は、弁護士として、受傷内容、後遺障害の程度、事故前の既往症の内容や程度などを踏まえて、適切な主張を行っていくことが重要となります。