1 火災保険について
⑴ 火災保険の加入時の設定
火災保険では、建物の「再調達価額」を評価し、それを基準に保険金額を設定するのが一般的です。
再調達価額とは、同等の構造・規模・仕様の建物を新たに建てるために必要な金額です。土地代や中古建物の売買価格とは異なります。
例えば、同等のアパートを新築する費用が1億円と評価された場合、保険金額を1億円に設定します。
ただし、評価額には一定の幅が認められる場合があります。例えば、三井住友海上では、建物の標準評価額に対して±30%の範囲で保険金額を設定できるとされています。標準評価額の中点が1億円なら、保険金額は上限1億3,000万円まで設定できる計算です(建物の種類や契約形態により異なる場合があります)。建築費上昇への備えとして、加入時に設定できる上限も確認しておくことが重要です。
⑵ 火災保険の保険金額と再調達価額の関係
以下では、加入時に適正に評価して保険金額を1億円とし、その後、建物が全焼した場合を考えます。
ア 保険金額が事故時の再調達価額を上回る場合
建築費が下がるなどして、事故時の再調達価額が保険金額を下回ることもあります。この場合の扱いは、保険会社や商品によって異なります。全焼などの場合に、契約金額(保険金額)を基準に支払う仕組みを設けている商品もあれば、再調達価額を基準に支払う仕組みの商品もあります。
例えば、次のような定めがあります。
・東京海上日動の「トータルアシスト住まいの保険」には、「全損時の保険金支払いに関する特約」があります。建物の損害の額が再取得価額の80%以上となる全損のときは、保険金額に相当する額を支払います。ただし、上限は再取得価額の1.3倍です。再取得価額が6,000万円であれば、7,800万円が上限となります。なお、土地代を含めて保険金額を設定した場合など、保険会社と確認した評価方法によらずに保険金額を設定した契約には、この特約は適用されません。
・あいおいニッセイ同和の「タフ・すまいの保険」では、焼失・流失・損壊した部分の床面積が延床面積の80%以上となる全焼・全壊の場合は、原則として建物保険金額が支払われます。ただし、保険金額が事故時の再調達価額を著しく上回る場合には、再調達価額を基準に支払われることがあります。
このように、「契約金額が支払われる」とされる場合でも、上限や例外が定められていることがあります。ご加入の商品の約款で確認することをお勧めします。
イ 保険金額が事故時の再調達価額を下回る場合
建築費が上昇し、事故時の再調達価額が1億2,000万円となっても、建物補償は原則として保険金額の1億円が上限となります。再建費用に2,000万円が不足します。
「再調達価額で補償」「全焼時に全額払い」という説明は、建築費の上昇分まで自動的に補償するという意味ではありません。現実には、この補償の不足への対応が重要です。現在の建築費に合わせて、保険金額を見直す必要があります。
⑶ 当初の建物よりも小規模な再建築を行った(あるいは再建築しなかった)場合の扱い
元の建物と同等の再建に1億2,000万円が必要でも、規模を縮小して4,000万円で建て直すことはあり得ます。
この場合に、新しい建物の工事費が4,000万円だからといって、保険金が直ちに4,000万円に減額されるとは限りません。支払われる保険金の額は、約款に定められた支払いの算式によって決まるためです。
ただし、保険金を受け取るために修理・再建を必要とするか(復旧条件)は、保険会社や商品によって異なります。「全額が支払われる」ことと、「再建しなくてもよい」ことは別の問題です。
例えば、三井住友海上の「GK すまいの保険」では、原則として損害の発生日から2年以内に保険の対象を復旧しない限り、保険金は支払われません。全焼・全壊に当たる場合(焼失等した部分の床面積が延べ床面積の80%以上)や、その他の合理的な理由がある場合には、あらかじめ会社の承認を得れば、復旧の期間、建物の用途、復旧する場所などを変更できます。
建て直しの規模を縮小する場合や、再建せずに受け取った保険金を別の形で活用する場合には、事前に引受保険会社へ確認することが大切です。
2 地震保険について
地震保険は火災保険に付けて加入します。保険金額は、火災保険金額の30〜50%の範囲で、別途設定します。
例えば、建物の火災保険金額が1億円なら、地震保険金額は3,000万円〜5,000万円となります。以下では、50%の5,000万円で設定した場合を説明します。
地震による倒壊や火災などで生じた建物の損害は、原則として火災保険の建物補償からは支払われず、地震保険から支払われます(火災保険に付く地震火災費用保険金など、別の費用が支払われる場合はあります)。
地震保険では、設定した5,000万円を基準に、損害の区分に応じた金額が支払われます。
建物の損害区分は、主要構造部(基礎・柱・屋根・外壁など)の損害額が、事故時の建物の時価額に占める割合によって判定します。
・50%以上:全損
・40%以上50%未満:大半損
・20%以上40%未満:小半損
・3%以上20%未満:一部損
地震による火災や津波などでは、焼失・流失した床面積などによる基準もあります。
支払割合は、地震保険金額に対して、全損は100%、大半損は60%、小半損は30%、一部損は5%です。被害が軽微で「一部損」の認定基準に達しない場合は、保険金は支払われません。
地震保険金額が5,000万円の場合は、次のとおりです。
・全損:5,000万円
・大半損:3,000万円
・小半損:1,500万円
・一部損:250万円
ただし、地震保険には、一般的な火災保険とは異なり、時価額による上限があります。具体的には、事故時の時価額に支払割合を掛けた額が、それぞれの上限となります。
時価額とは、再調達価額から、経年や使用による消耗分を差し引いた金額です。
地震保険金額5,000万円で加入していても、事故直前の建物の時価額が4,000万円なら、全損のときの支払額は4,000万円にとどまります。
地震保険では、保険金を受け取るために修理・再建は必要なく、使い道も限定されません。再建せずに全額を現金で保有することや、小規模に建て直して差額を残すこともできます。
※ 本記事に記載の情報は、各損害保険会社の公表情報および約款等に基づき、正確性の確保に努めて作成しておりますが、その完全性・網羅性を保証するものではありません。保険商品の規定は個別性が高く、特約の適用条件や商品改定等により実際の取扱いが異なる場合があります。本資料の利用により生じたいかなる損害についても責任を負いかねますので、具体的なご加入や事故時の対応にあたっては、必ず引受保険会社への事前確認をお願いいたします。