1 越境に関する覚書
土地を測量すると実はフェンスが一部だけ越境していたなどということはよくあります。
その際、すぐにフェンスを取り壊して越境状態を解消しなければならないかというと、実務上は、わずかな越境で両方の土地の使用に支障がないような場合であれば、越境に関する覚書を交わしたうえで現状を維持するということがよくあります。
覚書としては、両当事者が越境している事実を認めたうえで、越境されている側が越境している側の現状の使用を承諾しつつ、越境している側が将来立て直し等する場合には撤去するという内容のものがよくあります。
2 土地所有者が変わった場合の覚書の効力
越境されている土地について売買がなされた場合、その新所有者に覚書の効力は及ぶのでしょうか?
例えば、新所有者が、越境をすぐに解消するように求めることができるのかということについて考えます。
まず、覚書は、あくまでも、越境している土地の所有者と越境されている土地の旧所有者との間で交わされているにすぎず、その効力が当然に新所有者に及ぶものではありません。
ただ、実際の不動産取引実務においては、旧所有者と新所有者との間の売買契約において、覚書の内容を承継させる旨の規定を入れることが一般的です。
その場合には、新所有者にも覚書の効力が及びます(弁護士としては法律構成が気になるところですが、契約上の地位の移転や債務引受等の構成により説明されるものと考えられます。)。
したがって、この場合の新所有者は、越境をすぐに解消するように求めることはできないということになります。
一方、旧所有者と新所有者との間の売買契約において、覚書について一切触れられていなかったような場合には、新所有者には覚書の効力は及びません。
この場合、新所有者としては、越境をすぐに解消するように求めることができそうですが、わずかな越境について越境している側に過大な負担を強いるような場合には、権利の濫用であるとして認められない可能性があります。