弁護士法人Kokoro Internationalに所属しております,弁護士の上田と申します。
日々思ったこと,皆様のお役にたてる情報などを書いていきたいと思います。
一般社団法人の種類(普通型・非営利型)
1 一般社団法人の区分
法人税法上の区分として、一般社団法人には、「普通型一般社団法人」と「非営利型一般社団法人」があり、さらに、非営利型一般社団法人には、「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」があります。
2 普通型一般社団法人と非営利型一般社団法人の違い
⑴ 普通型一般社団法人
全ての所得が課税対象となります。
⑵ 非営利型一般社団法人
法人税法上の収益事業のみが、課税対象となります(法人税法4条1項)。
収益事業以外の会費や寄付金には課税されません。
3 非営利型一般社団法人の要件
上記のとおり、非営利型一般社団法人には、非営利性が徹底された法人(法人税法2条9号の2イ)と共益的活動を目的とする法人(法人税法2条9号の2ロ)の2つがあります。
⑴ 非営利性が徹底された法人の要件(法人税法施行令3条1項)
① その定款に剰余金の分配を行わない旨の定めがあること。
② その定款に解散したときはその残余財産が国若しくは地方公共団体又は次に掲げる法人に帰属する旨の定めがあること。
イ 公益社団法人又は公益財団法人
ロ 公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年法律第四十九号)第五条第十七号イからトまで(公益認定の基準)に掲げる法人
③ 前二号の定款の定めに反する行為(前二号及び次号に掲げる要件の全てに該当していた期間において、剰余金の分配又は残余財産の分配若しくは引渡し以外の方法(合併による資産の移転を含む。)により特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含む。)を行うことを決定し、又は行つたことがないこと。
④ 各理事(清算人を含む。以下この号及び次項第七号において同じ。)について、当該理事及び当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と財務省令で定める特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、三分の一以下であること。
⑵ 共益的活動を目的とする法人の要件(法人税法施行令3条2項)
① その会員の相互の支援、交流、連絡その他の当該会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること。
② その定款(定款に基づく約款その他これに準ずるものを含む。)に、その会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又は当該金銭の額を社員総会若しくは評議員会の決議により定める旨の定めがあること。
③ その主たる事業として収益事業を行つていないこと。
④ その定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと。
⑤ その定款に解散したときはその残余財産が特定の個人又は団体(国若しくは地方公共団体、前項第二号イ若しくはロに掲げる法人又はその目的と類似の目的を有する他の一般社団法人若しくは一般財団法人を除く。)に帰属する旨の定めがないこと。
⑥ 前各号及び次号に掲げる要件の全てに該当していた期間において、特定の個人又は団体に剰余金の分配その他の方法(合併による資産の移転を含む。)により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
⑦ 各理事について、当該理事及び当該理事の配偶者又は三親等以内の親族その他の当該理事と財務省令で定める特殊の関係のある者である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、三分の一以下であること。
※共益的活動を目的とする法人の場合、解散時に社員総会の決議によって残余財産の分配をすることが可能です。
⑶ 要件に関する通達等
ア 「その主たる事業として収益事業を行つていないこと」(法人税基本通達1-1-10)
令第3条第2項第3号《非営利型法人の範囲》に規定する「主たる事業として収益事業を行つていない」場合に該当するかどうかは、原則として、その法人が主たる事業として収益事業を行うことが常態となっていないかどうかにより判定する。この場合において、主たる事業であるかどうかは、法人の事業の態様に応じて、例えば収入金額や費用の金額等の合理的と認められる指標(以下1-1-10において「合理的指標」という。)を総合的に勘案し、当該合理的指標による収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えるかどうかにより判定することとなる。
ただし、その法人の行う事業の内容に変更があるなど、収益事業の割合と収益事業以外の事業の割合の比に大きな変動を生ずる場合を除き、当該事業年度の前事業年度における合理的指標による収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えるときには、その法人は、当該事業年度の開始の日において「主たる事業として収益事業を行つていない」場合に該当しているものと判定して差し支えない。
(注) 本文後段の判定を行った結果、収益事業以外の事業の割合がおおむね50%を超えないとしても、そのことのみをもって「主たる事業として収益事業を行つていない」場合に該当しないことにはならないことに留意する。
イ 理事と特殊の関係のある者の範囲等(法人税法施行規則2条の2)
令第3条第1項第4号及び第2項第7号(非営利型法人の範囲)に規定する理事と財務省令で定める特殊の関係のある者は、次に掲げる者とする。
① 当該理事(清算人を含む。以下この項において同じ。)の配偶者
② 当該理事の三親等以内の親族
③ 当該理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
④ 当該理事の使用人
⑤ 前各号に掲げる者以外の者で当該理事から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
⑥ 前3号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は三親等以内の親族
ウ 理事の親族等の割合に係る要件の判定(法人税基本通達1-1-10)
令第3条第1項第4号及び第2項第7号《非営利型法人の範囲》に規定する要件に該当するかどうかの判定は、原則として、判定される時の現況によることに留意する。
ただし、例えば、非営利型法人が理事の退任に基因して当該要件に該当しなくなった場合において、当該該当しなくなった時から相当の期間内に理事の変更を行う等により、再度当該要件に該当していると認められるときには、継続して当該要件に該当しているものと取り扱って差し支えない。
4 非営利型一般社団法人になるための手続きの要否
上記要件を満たせば、特段の手続きを踏むことなく、非営利型法人となります。
非営利型法人以外の法人が非営利型法人になったときは、納税地の所轄税務署長に対し、異動届出書を出す必要があります。
5 普通型から非営利型に区分変更があった場合の事業年度
事業年度開始の日から非営利型法人の要件を満たした日の前日までの期間と、被営利型法人の要件を満たした日から事業年度終了の日までの期間が、それぞれ一つの事業年度となります(法人税法14条1項4号ハ)。
一般社団法人に関する法令等は複雑ですので、お困りの際は、弁護士や税理士に確認されることをおすすめいたします。