育成就労制度の「外部監査人」に、弁護士としてどう向き合うべきか

2027年4月1日、技能実習制度に代わって、育成就労制度が始まります。
これに伴い、現在の監理団体は「監理支援機関」として新たに許可を受けることになります。
そして、その許可要件の一つとして、外部監査人の選任が求められます。

1 許可要件としての外部監査人

外部監査人には、弁護士、社会保険労務士、行政書士などの有資格者のほか、育成就労に関する十分な知見を持つ者が就任できます。
ただし、資格があれば足りるというものではありません。
所定の養成講習の受講に加え、受入れ企業との関係を含めた独立性の確保が必要とされています。

2 外部監査人の職務

外部監査人の職務は、大きく二つです。
一つは、定期的な確認です。
監理支援機関の各事業所について、少なくとも3か月に1回、責任役員および監理支援責任者から報告を受け、帳簿書類や設備を確認します。
もう一つは、同行監査です。
年に1回以上、監理支援機関が育成就労実施者に対して行う監査に同行し、その実施状況を確認します。
監査の結果は書面にまとめ、監理支援機関に提出されます。
外部監査人の氏名等は公表の対象でもあります。
形式だけを整えれば済む役割ではなく、監理支援が実際に適切に行われているかを確かめ、必要な改善につなげることが求められているといえます。

3 指摘から改善へ

外部監査は、問題を指摘して終わりにするものではありません。
必要な改善の方向性を整理し、次の確認でその実効性を見極める。
少なくとも3か月に1回という頻度は、この積み重ねを可能にする間隔でもあります。
その積み重ねによって、外部監査人は単なる許可要件ではなく、組織の信頼を支える存在になり得ます。
新制度に真摯に向き合い、適正な受入れ体制を築こうとする監理支援機関に対して、独立性を守りながら力になるということが弁護士に求められているのではないかと考えています。
参考リンク:出入国在留管理庁「育成就労制度について」

私文書偽造罪は「嘘を書く罪」ではない|有印私文書偽造・同行使罪の基礎

1 「偽造」とは、内容が虚偽という意味ではない

文書偽造というと、虚偽の内容の書類を作成することをイメージされる方もいるかもしれません。
しかし、刑法上の偽造は、「内容」ではなく、「作成名義」を偽ることです。
例えば、Aさん名義の借用書を勝手にBさんが作成したという場合は、偽造に当たります。
借用書の内容が真実であった(Aさんは実際にお金を借りていた)としても、Bさんが勝手にその借用書をAさん名義で作成したのであれば、それは偽造だということになります。

2 代筆は偽造になるのか?

それでは、他人の名前を代わりに書いた場合には偽造になるのでしょうか。
これについて、他人の名前を書いたからといって、直ちに偽造になるものではなく、作成権限、名義人本人の承諾の有無、文書の性質などによって、結論が変わります。
例えば、契約書について、本人の手が不自由であったため、本人の承諾のもと、別の人が署名を代書したというような場合には、通常は偽造に当たらないと考えられます。

3 どのような文書でも私文書偽造罪になる?

私文書偽造罪が対象としているのは、「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」です。
例えば、契約書、請求書、婚姻届、養子縁組届、履歴書、推薦状などがこれに該当します。
他方で、個人的な日記、時候の挨拶状などはこれに該当しません。

4 有印とは

私文書偽造罪には、有印私文書偽造罪と無印私文書偽造罪があります。
「他人の印章若しくは署名を使用」した偽造の場合は、有印私文書偽造罪となり、罪が重くなります。
有印私文書偽造罪の法定刑が「三月以上五年以下の拘禁刑」であるのに対し、無印私文書偽造罪の法定刑は「一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金」とされています。

5 行使の目的が必要

私文書偽造罪が成立するためには、「行使の目的」が必要です。
真正な文書として他人に認識させる目的がなかった場合には、偽造文書を作ったとしても私文書偽造罪は成立しません。
例えば、ドラマ撮影のための小道具として他人名義の契約書を作ったような場合、実社会で本物の契約書として用いる意図ではないため、私文書偽造罪は成立しません。
弁護士が研修用の教材として他人名義の契約書の見本を作成することもありますが、これも実社会で本物の契約書として用いる意図ではないため、私文書偽造罪は成立しません。

6 偽造私文書等行使罪

私文書偽造罪とは別に、偽造私文書等行使罪という犯罪があります。
自分で私文書を偽造し、かつ、それを行使したというような場合には、両方の犯罪が成立しますが、偽造は自分でしていないというケースもあります。
例えば、闇サイトで入手した偽造の源泉徴収票を住宅ローン審査のために銀行に提出して融資を受けたという場合は、自分では偽造はしていませんが、行使はしているため、偽造私文書等行使罪が成立します(これとは別に詐欺罪も成立すると考えられます。)。

越境に関する覚書は土地の買主にも効力が及ぶのか

1 越境に関する覚書

土地を測量すると実はフェンスが一部だけ越境していたなどということはよくあります。
その際、すぐにフェンスを取り壊して越境状態を解消しなければならないかというと、実務上は、わずかな越境で両方の土地の使用に支障がないような場合であれば、越境に関する覚書を交わしたうえで現状を維持するということがよくあります。
覚書としては、両当事者が越境している事実を認めたうえで、越境されている側が越境している側の現状の使用を承諾しつつ、越境している側が将来立て直し等する場合には撤去するという内容のものがよくあります。

2 土地所有者が変わった場合の覚書の効力

越境されている土地について売買がなされた場合、その新所有者に覚書の効力は及ぶのでしょうか?
例えば、新所有者が、越境をすぐに解消するように求めることができるのかということについて考えます。
まず、覚書は、あくまでも、越境している土地の所有者と越境されている土地の旧所有者との間で交わされているにすぎず、その効力が当然に新所有者に及ぶものではありません。
ただ、実際の不動産取引実務においては、旧所有者と新所有者との間の売買契約において、覚書の内容を承継させる旨の規定を入れることが一般的です。
その場合には、新所有者にも覚書の効力が及びます(弁護士としては法律構成が気になるところですが、契約上の地位の移転や債務引受等の構成により説明されるものと考えられます。)。
したがって、この場合の新所有者は、越境をすぐに解消するように求めることはできないということになります。
一方、旧所有者と新所有者との間の売買契約において、覚書について一切触れられていなかったような場合には、新所有者には覚書の効力は及びません。
この場合、新所有者としては、越境をすぐに解消するように求めることができそうですが、わずかな越境について越境している側に過大な負担を強いるような場合には、権利の濫用であるとして認められない可能性があります。

在留資格の手数料の引き上げ

2026年5月29日に入管法が改正され、在留資格の変更・更新許可や永住許可の手数料が大幅に引き上げられました。

従来は、在留資格の変更・更新許可、永住許可の手数料について、法律上、「1万円を超えない範囲内において別に政令で定める手数料を納付しなければならない」とされていました。

この法律の金額は、あくまでも上限であり、実際の金額は政令(出入国管理及び難民認定法施行令)で決められており、在留資格の変更・更新許可は6000円、永住許可は1万円とされています。

今回入管法が改正され、法律上の上限額が以下のとおり改められました。

在留資格の変更・更新許可:10万円
永住許可:30万円

実際の金額については、今後、政令の改正が予定されていますが、現時点では、許可される在留期間が3か月以下の場合は1万円程度、許可される在留期間が5年の場合には7万円程度、永住許可については20万円程度が見込まれています(令和8年4月10日 第221回 国会 衆議院 法務委員会)。

今回の手数料引き上げについて、政府は、審査に要する実費、在留管理に要する費用、諸外国の手数料水準などを考慮した上で、将来の物価上昇にも柔軟に対応できるよう、法定上限額を引き上げたと説明しています(同法務委員会)。

また、改正入管法67条3項は、「経済的困難その他特別の理由により手数料を減額し、又は免除することが相当である者として政令で定めるものであるときは、政令で定めるところにより…手数料を減額し、又は免除することができる」としており、一定の場合に減免される可能性を残しています。

今回の法改正は、外国人を雇用する企業にとっても実質的な負担増となる可能性があり、今後の政令改正の動向に注目する必要があります。

私も弁護士の立場から、情報を追っていきたいと思います。

米国際貿易裁判所における1974年通商法122条に基づく関税措置違法判決

1 米国際貿易裁判所における1974年通商法122条に基づく関税措置違法判決

2026年2月に「1974年通商法122条に基づく関税措置」という記事を書きました。
米国最高裁がIEEPAに基づく関税措置を違法と判断したことを受けて、米国政府が1974年通商法122条に基づく関税措置を取るというものです。
今回、この1974年通商法122条に基づく関税措置について、米国際貿易裁判所(CIT:Court of International Trade)で、上記措置を違法とする判決が出され、日本の弁護士や企業実務担当者の間でも関心が高いものと思われます。

2 米国際貿易裁判所の判決理由

1974年通商法122条で関税措置を行う際の要件である「巨額かつ深刻な国際収支の赤字(large and serious United States balance-of-payments deficits)」が認められるかが争点となりました。
これについて、米国際貿易裁判所は、「国際収支の赤字」と「貿易赤字」は異なるとして、同要件の充足を否定しました。

3 米国際貿易裁判所とは

通常の連邦地方裁判所とは異なり、米国際貿易裁判所は、アメリカの国際通商事件を専門的に取り扱う裁判所で、アメリカ全土の管轄権を持っています。
米国際貿易裁判所の判決への控訴は連邦巡回区控訴裁判所(CAFC:Court of Appeals for the Federal Circuit)に対してなされ、更にその上訴は米国連邦最高裁判所に対してなされます。
つまり、一審、二審は専門裁判所が担い、最終審は、通常の訴訟と同じく、米国連邦最高裁判所が担うという仕組みになっています。
今回の判決は、あくまでも一審段階のもので、既に控訴がなされていますので、今後、控訴審において判断が示されることになります。

特定技能の受入れ上限について

1 外食業分野の受入れ上限

令和8年3月27日付で、出入国在留管理庁から、「特定技能「外食業分野」における受入れ上限の運用について」という通知が出されました。
現在、分野ごとに令和6年4月から令和11年3月までの「特定技能」「育成就労」それぞれの受入れ見込数が定められており、外食業分野の特定技能の受入れ見込数は、5万人とされています。
令和8年2月末の時点で、約4万6000人となったことを受け、外食業分野の特定技能1号の在留資格認定証明書交付申請について、令和8年4月13日以降の申請については不交付とするなどが示されました。
参考リンク:出入国在留管理庁・特定技能「外食業分野」における受入れ上限の運用について

2 そもそも受入れ上限とは?

現在の受入れ上限は、入管法などの法律に明記されているものではなく、令和7年3月11日に閣議決定された「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する基本方針」に基づいています。

同基本方針において、外国人の受入れについて、「生産性向上のための取組や国内人材の確保を行ってもなお当該分野における人手不足が深刻であり、当該分野の存続・発展のために外国人の受入れが必要な分野に限って、必要な範囲で外国人の受入れを行う」とし、「日本人の雇用機会の喪失及び処遇の低下等を防ぐ観点並びに外国人の安定的かつ円滑な在留活動を可能とする観点から、特定産業分野及び育成就労産業分野における5年・・・ごとの受入れ見込数について示し、人手不足の見込数と比較して過大でないことを示さなければならないものとし、それぞれの受入れ見込数は、大きな経済情勢の変化が生じない限り、「特定技能1号」の在留資格をもって在留する外国人(以下「1号特定技能外国人」という。)及び育成就労外国人の受入れの上限として運用する」としています。

要するに、分野別の人手不足見込みに基づき、5年ごとに分野別の受入数を定めるというものです。
参考リンク:出入国在留管理庁・特定技能制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領

3 具体的な分野別の受入数

令和11年3月末までの、特定技能1号(左)と育成就労(右)の人数は以下のとおりです(本記事執筆時点)。
介護:126,900人/33,800人
ビルクリーニング:32,200人/7,300人
建設:76,000人/123,500人
造船・舶用工業:23,400人/13,500人
自動車整備:9,400人/9,900人
宿泊:14,800人/5,200人
自動車運送業:22,100人/-
農業:73,300人/26,300人
漁業:14,800人/2,600人
外食業:50,000人/5,300人
林業:900人/500人
木材産業:4,500人/2,200人
工業製品製造業:199,500人/119,700人
航空:4,900人/-
鉄道:2,900人/1,100人
飲食料品製造業:133,500人/61,400人
リネンサプライ:4,300人/3,400人
物流倉庫:11,400人/6,900人
資源循環:900人/3,600人

4 現在の受入れ状況

現時点での受け入れ状況については、 JITCO(公益財団法人 国際人材協力機構)のウェブサイトにわかりやすくまとめられています。
参考サイト:JITCO – 公益財団法人 国際人材協力機構・一目で判る!特定技能外国人制度の受入れ上限と受入れ充足率

5 対応方法

日々状況が変わっていきますので、在留資格取得をお考えの外国人の方や、外国人雇用をお考えの企業の方は、就労ビザに詳しい弁護士にご相談されるのがよいかと思います。

1974年通商法122条に基づく関税措置

2月20日に米国最高裁が「IEEPA (国際緊急経済権限法) 」に基づく関税措置が違法と判断したことを受けて、米国政府が、1974年通商法122条に基づく全世界一律の15%の関税措置を取る意向であることが報道されています。弁護士として法律上どうなっているのか興味深い問題です。

背景として、合衆国憲法においては、課税権は議会にあり、大統領は関税を課す固有の権限を持たないため、大統領が関税を課す権限を行使するためには、連邦法による権限の委任が必要です。
米国政府は、IEEPAをその根拠としていましたが、IEEPAでは、大統領に付与する権限として、「関税」や「課税」が明示されておらず、その解釈が問題となり、今回、米国最高裁によって、これに関する大統領の権限が否定されました。

そこで、米国政府としては、今後、「section 122 of the Trade Act of 1974(1974年通商法122条)」を根拠として、関税を課す意向であると考えられます。

1974年通商法122条では、①巨額かつ深刻な国際収支の赤字に対処するため、②外国為替市場におけるドルの急激かつ大幅な下落を阻止するため、あるいは、③国際収支の不均衡を是正するために他国と協力するために、大統領は、150日を超えない期間(当該期間が連邦議会の制定法によって延長されない限り)、米国に輸入される物品に対し、15%を超えない範囲で、関税の形式による(既に課されている関税がある場合はそれに加えた)一時的な輸入課徴金を課すことができるとされています。

IEEPAとは異なり、1974年通商法122条は、大統領に課税権限を委任していることは明確である一方、「150日を超えない期間」「15%を超えない範囲」という制約があるため、これまで関税措置の根拠とされていませんでしたが、上記米国最高裁の判断を受けて、暫定的に用いられるものと考えられます。

なお、1974年通商法122条においては、「巨額かつ深刻な国際収支の赤字」という要件を満たすかについて議論があります。

参考リンク:The White House・Fact Sheet: President Donald J. Trump Imposes a Temporary Import Duty to Address Fundamental International Payment Problems

参考条文:
SEC. 122. BALANCE-OF-PAYMENTS AUTHORITY.
(a) Whenever fundamental international payments problems require special import measures to restrict imports—
(1) to deal with large and serious United States balanceof-payments deficits,
(2) to prevent an imminent and significant depreciation of the dollar in foreign exchange markets, or
(3) to cooperate with other countries in correcting an international balance-of-payments disequilibrium, the President shall proclaim, for a period not exceeding 150 days (unless such period is extended by Act of Congress)—
(A) a temporary import surcharge, not to exceed 15 percent ad valorem, in the form of duties (in addition to those already imposed, if any) on articles imported into the United States;
(B) temporary limitations through the use of quotas on the importation of articles into the United States; or
(C) both a temporary import surcharge described in subparagraph (A) and temporary limitations described in subparagraph (B).

(以下略)

女性同士の客の入店禁止は違法か?

1 女性同士の客の入店禁止は憲法違反?

最近、女性同士はお断りという飲食店について各種メディアでも話題になっていますが、法律上はどのように考えられるのでしょうか。
女性同士の入店禁止というのは、性別に基づく差別で憲法14条1項が保障する平等原則違反だという意見を耳にすることがあります。
憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と定めています。
しかし、一部の条項を除き、憲法は国家権力に対する法規範であり、飲食店を営む民間企業に直接適用されるものではありませんので、飲食店による入店拒否が、直接、憲法14条1項に違反するということはありません。
参照:憲法の私人間効力(間接適用説)
もっとも、民間企業であれば、差別的な取り扱いをしても、法律上問題とならないのかというと、そうではありません。
以下で、差別的な取り扱いの違法性が、法律上、どのような位置づけで問題となるのかについて、考えていきたいと思います。

 

2 入店拒否を訴訟で行う場合の法律構成

入店拒否をされた女性が訴訟で争うという場合には、入店拒否をされたことによって被った精神的苦痛について、民法709条に基づき、損害賠償請求をするということが考えられます。

そして、一部の属性の人を入店拒否にするという差別的な取り扱いが、違法かどうかという民法709条の解釈・適用を行う上で、憲法14条1項が保障する平等権の趣旨・価値を反映させるというのが、現在の判例・通説の考え方です。

そのため、入店拒否が「違憲」かどうかではなく、民法上「違法」かどうかというのが、正しい位置づけとなります。

 

3 女性同士の客の入店拒否は違法か?

まず、店側にも「営業の自由」があるというのが大原則ですが、営業の自由も無制限に認められるものではなく、合理性のない差別的な取り扱いというのは違法になり得ます。

合理性の有無については、店側が差別的取り扱いをする「目的」がポイントとなります。

例えば、店側が、「女性同士の場合は滞在時間が長く回転率が悪い」あるいは「注文が少ないから客単価が低い」と考えて、女性同士の入店を拒否した場合はどうでしょうか。

まず、滞在時間や注文金額については、当然ながら、男性同士でも滞在時間が長い客もいますし、男性でも小食で注文量が少ないという客も多く、性別から一律に決まるものではありません。

また、店側が、回転率を上げたい、客単価を上げたいと考えるのであれば、滞在時間については時間制限を設ける、注文金額については最低注文金額を設けるなどの代替手段もありますので、女性同士の客を一律に入店拒否する必要性は低いといえます。

そうだとすると、上記のような理由による女性同士の客の入店拒否であれば、合理性が乏しいものとして、違法とされる可能性が高いのではないかと思います。

なお、違法かどうかと適切かどうかは別問題で、仮に適法であっても社会的に不適切と評価されることも少なくありませんので、弁護士に相談等されるような場合でも、その点も注意が必要です。

特に、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」という事項については、歴史的に差別が存在し、憲法が明示的に掲げているということが十分に尊重されなければなりません。

憲法の私人間効力(間接適用説)

以前にこのブログで、憲法というのは、国家権力に向けられた法規範だということを書きました。

国家が国民の権利を侵害するような法律を作ったような場合に、憲法違反だというような議論がなされるわけです。

参照:憲法と法律の違い

 

それでは、民間企業や個人の行為にも、憲法が適用されるのでしょうか?

これが今回のテーマである「憲法の私人間効力」という問題です。

憲法学の基本的な論点ですので、弁護士よりも、法学部生や法科大学院生がよく目にするものかもしれません。

例えば、民間企業に就職した人について、大学在学中に学生運動に関与した事実を身上書に記載せず、面接の際にも秘匿したことが後から発覚し、試用期間満了直前に本採用を拒否されたという場合に、この本採用拒否が憲法に違反するのではないかということが問題となったケースがあります。

 

これについて、主要な学説としては、

①憲法上の特別の定めがある場合を除き、憲法は、私人間には適用されないという無適用説

②私人間にも憲法が直接適用されるという直接適用説

③私法の一般条項の解釈・適用に憲法の趣旨・価値を反映させることで、私人間にも間接的に適用されるという間接適用説

の大きく3つの見解があります。

 

この点、最高裁判所は、リーディングケースである三菱樹脂事件(最判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)において、憲法の自由権的基本権の保障規定について、「もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」としつつ、「私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。」としており、最高裁判所としては、間接適用説を採用しているものと考えられます。

 

参考リンク:厚生労働省・確かめよう労働条件

帰化要件の厳格化

1 帰化とは?

最近、日本の帰化要件の厳格化がよく報道されています。
帰化については、国籍法4条1項において、「日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によつて、日本の国籍を取得することができる。」とされています。
日本国籍がなくても在留資格があれば日本に滞在することはできますが、在留資格の場合は、定期的に在留資格の更新手続きが必要であったり、また、日本人と同じ社会保障が受けられない、ローンが組みづらいなどの理由から、帰化を考える外国人が少なくありません。

2 帰化人数の現状

2024年には、12,248人が帰化申請をし、そのうち8,863人が許可されています。
元の国籍別にみると、多い順に、中国3,122人、韓国・朝鮮2,283人、ネパール585人となっています。
ネパール人の帰化は、2022年は139人、2023年は331人でしたので、急激に増えてきているといえます。
参考リンク:法務省民事局・帰化許可申請者数、帰化許可者数及び帰化不許可者数の推移
参考リンク:法務省民事局・国籍別帰化許可者数

3 帰化の要件

帰化の要件については、国籍法5条1項で以下のように定められています。法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。

上記は普通帰化と言われ、他にも、簡易帰化や大帰化という制度があります。

4 帰化要件の厳格化

帰化要件のうち、「引き続き五年以上日本に住所を有すること」という点について、5年が短すぎるのではないかが議論されています。
永住権の場合、原則として10年以上日本に在留している必要がありますので、国籍を与えるというより慎重に判断すべき帰化について、永住権よりも期間が短いのは不合理ではないかというのが論拠として言われています。
また、諸外国と比べても、日本は帰化に必要な在留期間が短いということも言われています。
ちなみに、アメリカの場合は、原則として、永住資格を取得してから5年間経過していないと帰化することができません。
参考リンク:USCIS・Citizenship and Naturalization

5 今後の見通し

現時点での予測になりますが、永住権とのバランス、世論の状況、高市政権のスタンス等を考えると、帰化が認められるためには、10年の在留が必要とされる方向での法改正が進められる可能性が高いのではないかと思います。

帰化ついてどうすべきかをお悩みの方は、Immigration Law分野に詳しい弁護士にご相談されるのがよいかと思います。

条例と罰則

1 条例における罰則
条例における刑罰については、地方自治法地方自治法14条3項に、「普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の拘禁刑、100万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」と定められています。
最も重いものが、2年の拘禁刑です。
刑法では、死刑もあり、また、拘禁刑についても、無期拘禁刑や20年以下の有期拘禁刑がありますので、これと比べると、条例で定めることのできる罰則は軽微なものとなっています。
その他の違いについては、過去の記事に「法律と条例の違い」がありますので、ご覧ください。

2 罰則のない条例
条例のなかには、義務違反をしても罰則のないものがあります。
「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」はその一つで、名古屋市では、エスカレーターを立ち止まって利用しなければならないという義務がありますが、これの違反に対する罰則は定められていません。
こちらも過去の記事「エスカレーターでの歩行禁止【名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例】」がありますので、ご覧ください。
このような条例について、罰則がないと意味がないと考える方もいるかもしれませんが、実際には、市民の意識が変わる、エスカレーター上を歩く人を注意しやすくなるなどの効果があるものと考えられます。

法律と条例の違い

1 法律とは

法律を制定することができるのは、国会です。

原則として、法律案が衆議院・参議院の両議院で可決したときに法律となりますが(憲法59条1項)、参議院で否決されたとしても衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再可決すれば法律となります(憲法59条2項)。

 

2 条例とは

条例を制定することができるのは、地方公共団体です。

地方公共団体は、「法律の範囲内で」条例を制定することができます(憲法94条)。

法律に違反する条例は無効ですが、法律が規制していないことを規制したり、法律よりも厳しい規制をすることも可能です。

名古屋市には、「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」があり、エスカレーター上を歩くことが禁止されていますが、これは、法律が規制していないことを条例が規制している例です。

参考リンク:エスカレーターでの歩行禁止【名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例】

 

3 法律と条例の違い

このように、法律と条例は、制定する主体が異なり、両者が矛盾すれば法律が条令に優先するという関係にあります。

全国一律のルールを設けるべき事項については法律を制定し、地域の特性に応じた規制をすべき事項については条例を制定するというのが基本的な発想です。

経営・管理ビザの厳格化

経営・管理ビザの取得要件が厳格化されることが報道されています。

現在は、経営・管理ビザを取得するための、事業の規模に関する要件として、省令で以下のとおり定められています。

申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤の職員(法別表第一の上欄の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万円以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。

つまり、原則として、日本に居住する2人以上の常勤職員、または、資本金500万円以上が必要となっています。

これが、今後、省令改正によって、資本金は3000万円以上、かつ、日本に居住する1人以上の常勤職員が必要になると見込まれています。

さらに、申請人が、「経営管理に関する分野又は申請に係る事業の業務に必要な技術又は知識に係る分野において博士の学位、修士の学位又は専門職学位・・・を有している」か、あるいは、「事業の経営又は管理について三年以上の経験・・・を有している」ことが必要になる見込みです。

加えて、入管法施行規則も改正される見込みで、これまでは、「事業計画書の写し」の提出が求められていたのに対し、今後は、「経営に関する専門的な知識を有する者による評価を受けた事業計画書の写し」が必要になります。

詳細については、在留資格に詳しい弁護士にご相談ください。

失火責任法は不合理か?

1 失火責任法とは

失火責任法は、明治32年(1899年)に成立・施行された法律で、正式には、「失火ノ責任ニ関スル法律」といいます。

条文は、1つだけで、「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」と規定されています。

失火責任法は、民法の特別法で、民法709条の不法行為責任について、失火において責任を負うのは、重過失がある場合に限定しています。

 

2 具体例

具体例を考えますと、Aさんが所有するA宅の隣にBさんが所有するB宅があった(AさんとBさんには何らの契約関係なし)として、Aさんがガスを使った料理中に少しキッチンを離れていた際に、火が燃え移り火事となって、A宅だけでなくB宅も焼失してしまったという場合、失火責任法により、Aさんは、重過失ない限り、Bさんに損害賠償責任を負いません(軽過失免責)。

果たして、この結論は、妥当なのでしょうか?

B宅の焼失について、火をつけたままキッチンを離れてしまったAさんにはある程度の落ち度があるのに対し、Bさんには何の落ち度もありません。

にもかかわらず、B宅の焼失について、BさんがAさんに対し損害賠償請求できない(Bさんが損害を負担する)というのは、損害の公平な分担という不法行為法(ここでは特定の法律名ではなく、不法行為に関する法体系全般を指しています。)の趣旨に反するようにも思えます。

 

3 失火責任法の根拠(立法事実)

それでは、なぜ、このような失火責任法が制定されたのでしょうか?

失火責任法の制定当時、木造家屋が隣接して建築されていることが多く、当時の限られた消防能力と相まって、類焼による損害が拡大しすぎるということから、失火による不法行為責任を負うのを重過失がある場合に限定したものといわれています。

もっとも、失火について責任を限定すべきかについては、立法過程において反対意見もあり、民法を立案起草した梅謙次郎先生は反対の立場をとっていました。

 

4 失火責任法の不合理性

不法行為法の在り方を考えるうえで、①損害の公平な分担、②不当な行為の抑止、③適法・有益な行動の萎縮を防止という3つの観点が重要です。

①損害の公平な分担に関しては、上記2でみたとおり、少なからず落ち度があるAさんではなく、何の落ち度もないBさんが損害を負担するというのは、公平な分担とはいえないように思います。

②不当な行為の抑止という観点では、重過失がなくても失火の不法行為責任を負うというルールにした方が、Aさんとしては、より一層気を付けるといえそうです(この点については、失火については、軽過失免責があったとしても同程度に気を付けるのではないかという考えもあり得ますが、仮にそうだとしても、②の観点から失火責任法が否定されるというのがなくなるにすぎません。)。

③適法・有益な行動の萎縮を防止に関しては、例えば、ガスを使って料理をするなどは適法・有益な行動ですが、しっかりと気を付ければ火災は防げるので、失火責任法による軽過失免責がなかったとしても、萎縮して、ガス料理をやめようという人が多いとは考えにくいところです(明治時代であれば、現代よりも、料理や風呂などで使う火からの火事が起こりやすかったと考えられますが、そうであるからといって、火を使わないという選択肢が取られたとは考え難いかと思います。)。

以上からすると、確かに、制定当時は社会的背景(木造密集、消防力の未熟)があったとはいえ、それが軽過失免責を正当化する決定的理由となるかは疑問です。

さらに、現代では、明治時代と比べて、家屋の耐火性は上がっており、消防能力も高まっていますので、失火責任法の根拠(立法事実)も相当程度失われているのではないかと思います。

実際、衆議院の法務委員会においても、失火責任法の問題点が指摘されています。

参考リンク:衆議院・第193回国会 法務委員会

 

5 交通事故との対比

最後に、交通事故と対比し、失火に関するあるべき社会について考えてみたいと思います。

Aさんが自動車を運転し、Bさんに衝突してBさんにケガを負わせてしまったという事例を考えた場合、Aさんが不法行為責任を負うという結論に異論を持つ人はほとんどいないかと思います。

Bさんに重い後遺障害が残ってしまったような場合には、Aさんは数億円もの損害賠償を負う可能性はありますが、そうであるからといって、軽過失は免責しようということにはなりません。

自賠責保険という強制加入の保険があり、さらに、多くの人は、任意保険に加入して、万が一の損害賠償責任に備えています。

このこととのアナロジーで考えると、失火の場合にも、失火責任法で軽過失を免責するのではなく、不法行為責任を負うことにすることによって、各自が類焼による対人・対物賠償保険に入ることを促す、さらには、自賠責保険のような強制加入の保険を創設する方が合理的ではないでしょうか。

強制加入保険の創設はともかく、少なくとも、失火責任法による軽過失免責は、合理性に乏しいものと思います。

 

6 まとめ

以上から、立法論としては、失火責任法の廃止が考えられるところですが、弁護士としては、失火責任法を所与のものとして、解釈論として、失火責任法の適用範囲を考えていくというのも興味深いところです。

これについては、また機会があれば、書いてみたいと思います。

マンション(共同住宅)の部屋の賃貸人が失火により、自室、共用部、他の居室を焼失させた場合の責任

最終更新日2026年9月11日

1 本記事で検討する問題

賃借人が自室から出火し、共用部又は他室に損害を生じさせた場合、賃借人は貸主に対してどのような損害賠償責任を負うのでしょうか。

また、責任を負う場合、賃借人が加入する借家人賠償責任保険によっててん補されるのでしょうか。

2 賃貸人の責任

⑴ 不法行為責任

賃借人が失火で、自室や共用部、他の居室を焼失させてしまった場合、民法709条に基づく損害賠償義務を負わないかが問題となりますが、これについては、失火責任法が適用され、重過失がない限り責任を負いません。

失火責任法

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

参考リンク:失火責任法は不合理か?

⑵ 債務不履行責任

ア 失火責任法の適用はない

債務不履行に基づく損害賠償については、失火責任法の適用はありません(最判昭和30年3月25日民集第9巻3号385頁)。

イ 責任の範囲

賃借人は、失火により賃借している部屋を焼失させ、返還することができなくなっているため、少なくとも、その部屋については、債務不履行責任を負います。

それでは、廊下や他の居室についてはどうでしょうか。

この点について、木造の共同住宅での失火につき、「本件のようなその部屋だけが構造上独立して存在しない共同住宅の部屋の賃貸借の場合には、火災による右賃借物返還義務の履行不能による損害賠償としては、当該賃借部屋のみに限られず、これを維持存立せしめる上において不可分の一体をなす隣接の部屋、廊下等の部分その他階下の部分に対する損害についてもその賠償をなすべき義務あるものと解するのが相当である。」とした裁判例があります(東京高判昭和40年12月14日判例タイムズ188号159頁)。

他にも、東京地判昭和47年12月20日判例時報708号63頁、大阪地判昭和54年7月20日判例タイムズ394号121頁などは、その趣旨の判断を示したものと理解されます。

これに対し、債務不履行責任は賃借部分に限られ、賃借部分外の損害には失火責任法が類推適用されるとする裁判例(東京地判昭和51年3月31日判例タイムズ341号197頁)もありますが、店舗建物の具体的事案に関する下級審判決であり、共用部一般についての確立した基準とまではいえないと考えられます。

結局のところ、共用部の損害の責任範囲は、賃貸借契約の目的物、共用部の利用・管理関係、建物の構造及び損害部位を踏まえて判断せざるを得ないものと考えられます。

3 火災保険

ア 借家人賠償責任保険

借家人賠償責任保険は通常、借用戸室の損壊について貸主に負う法律上の損害賠償責任を対象としています。

民事上の責任が不可分一体の共用部まで及んだ場合、その共用部については、約款上の「借用戸室」には該当せず、その損害は填補されないものと考えられます。

イ 賃貸人側の火災保険

賃貸人が火災保険に入っている場合は、その保険会社が賃貸人に保険金を支払えば、保険会社が、賃貸人から賃借人に対する損害賠償請求権を代位行使できるのですが(保険法25条)、実務上は、約款により、この代位行使がなされないケースが多いものと考えられます。

これについて、各社の約款では以下のとおり定められています。

損保ジャパンの個人用火災総合保険普通保険約款(2026年10月版)では、第2章・第6節・第4条3項において、「被保険者から反対の意思表示があったときは、当会社は、これを行使しないものとします。ただし、借家人(注)の故意または重大な過失によって生じた損害に対し保険金を支払った場合は、当会社は、これを行使します。」としています。

東京海上日動・住まいの保険普通保険約款(2026年10月以降始期用)では、第2章・第7節・第2条3項において、「賃貸借または使用貸借契約に基づき被保険者以外の者が占有する建物を、保険の対象とする場合」について、「被保険者が借家人に対して有する権利を、当会社が取得した場合は、当会社は、これを行使しないものとします。ただし、借家人の故意または重大な過失によって生じた損害に対し保険金を支払った場合は、その権利を行使することができます。」としています。

三井住友海上・住まいの火災保険普通保険約款(2024年10月改訂)では、第3章・第23条3項において、「保険契約者から反対の意思表示がないかぎり、当社はこれを行使しないものとします。ただし、借家人の故意または重大な過失によって発生した損害に対し保険金を支払ったときを除きます。」としています。

美人局と強盗・恐喝

先日、名古屋市内のホテルで殺人事件があり、警察が、実行役とみられる男女2人を強盗殺人容疑で逮捕し、指示役とみられる男1人が恐喝容疑で逮捕したとの報道がなされています。

なぜ逮捕の被疑事実が異なるのかについて、強盗と恐喝の違いにも触れつつ、考えてみたいと思います。

 

1 強盗と恐喝の違い

強盗と恐喝は、いずれも、暴行・脅迫によって相手から財物を交付させるという点で、類似する犯罪類型です。

両罪の違いは、相手の犯行を抑圧する程度の暴行・脅迫がなされたか否かです。

相手の犯行を抑圧する程度の暴行・脅迫がなされた場合には「強盗」、そこまでは至っていない場合には「恐喝」となります。

これを判断する際には、場所、時刻、周囲の状況、体格、年齢など様々な要素が考慮されます。

 

2 美人局は恐喝?強盗?

上記名古屋の事件でどのような行為がなされたのかは現時点で明らかにされていませんが、一般論として、「会社にバラす」「警察に通報する」などと脅したような場合には、通常、「恐喝」に当たるものと考えられます。

また、暴行がなされたとしても、犯行を抑圧する程度のものでなければ、「恐喝」に当たります。

 

3 実行役が相手を殺害してしまったらどうなるか?

指示役から実行役に対して、どのような指示がなされていたかがポイントとなります。

これについても、上記名古屋の事件でどのような指示がなされていたのかは現時点で明らかにされていませんが、例えば、指示役が、「金を出さなければ美人局について会社にバラすと脅せ。ただし、相手に怪我はさせるな。」と指示していたが、実行役が、自分の判断で、相手を殺害してしまったというような場合であれば、実行役には強盗殺人罪が成立するのに対し、指示役には恐喝罪しか成立しない可能性が高いと考えられます。

他方で、極端な例ですが、指示役が、「金を出さなければ美人局について会社にバラすと脅せ。それでも応じなければ殺せ。」と指示していたような場合であれば、実行役にも指示役にも強盗殺人罪が成立する可能性が高いと考えられます。

名古屋市で戸籍証明書の広域交付を行いました

今回、戸籍の広域交付制度を利用しましたので、こちらで共有したいと思います(名古屋市の場合を前提に記載していますので、他の市区町村では手続きが異なる可能性があります。)。

1 広域交付制度とは?
戸籍の広域交付制度は、2024年に施行された制度です。
それまでは、戸籍証明書を取得するには、本籍地のある市区町村役場で請求する必要がありましたが、この制度を活用すると、本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)については、本籍地ではない地区町村の窓口でも戸籍証明書を請求することが可能です。

2 ①広域交付申請書の記載
名古屋市の場合、広域交付請求書は、名古屋市のWebサイトからダウンロードすることができます。
名古屋市:申請書・届出書のダウンロードサービス(暮らしの情報)

3 ②区役所に行く
現時点では、広域交付請求は、郵送ではできませんので、区役所に行く必要があります。
自身の住所がある区の区役所には限られず、どこの区役所でも問題ありません。
私は、職場から最も近い中村区役所に行きました。
広域交付請求ができる時間帯は限られ、区役所が空いているからといって必ずしも請求できるわけではないため注意が必要です。
また、日曜窓口では広域交付請求はできませんので、この点も注意が必要です。
運転免許証などの本人確認書類が必要になりますので、忘れずに持っていかなければなりません。

4 ③区役所の窓口で申請を行う
窓口で、記載した申請書を渡し、本人確認書類を提示します。
広域交付の場合、本籍地の市役所等への確認手続きが必要となるため、通常の証明書発行よりも時間がかかるようです。
私の場合は、20分程度で交付を受けることができました。
長時間かかる場合や当日交付が受けられない場合もあるようですので、注意が必要です。

統計からみる日本の婚姻件数・国際結婚件数

弁護士をしていると、国際結婚に関するご相談を受けることもあるのですが、そもそも、近年の結婚の件数はどのくらいなのでしょうか?

婚姻数については、政府が「人口動態調査 人口動態統計 確定数 婚姻」という統計を出しています。
詳しくご覧になりたい方はこちら↓
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411850

この統計によると、日本における婚姻数は、
1970年 1,029,405件
1980年 774,702件
1990年 722,138件
2000年 798,138件
2010年 700,222件
2015年 635,225件
2020年 525,507件
2023年 474,741件
となっています。

1978年に80万件を下回ってからは、比較的安定しており、2010年まではほぼ70万件台を維持しているのですが、その後は減少傾向で、2023年にはついに50万件を下回ってしまいました。
2000年と比較すると、2023年は約59.5%となっており、かなり少なくなっていることがわかります。

では、日本人と外国人との婚姻はどうなっているのでしょうか?
これについても、上記の統計に数字が出ており、夫婦の一方が外国人の婚姻は、
2000年 36,263件
2023年 18,475件
となっており、割合でみると、約50.9%にまで減少しています。
日本人同士の婚姻よりも、日本人と外国人との婚姻の方が減少割合が大きいようです。

更に細かく見ると、興味深いことがわかります。
男性日本人・女性外国人の婚姻は、
2000年 28,326件
2023年 11,779件
となっており、割合でみると約41.5%まで大きく減少しています。
他方、女性日本人・男性外国人の婚姻は、
2000年 7,937件
2023年 6,696件
となっており、割合でみると約84.4%で、それほど減少していません。
つまり、この20年強で、男性側が日本人の国際結婚はかなり減少しているのに対し、女性側が日本人の国際結婚はそれほど減少していないことがわかります。

さらに、外国人の妻の国籍別の割合を見てみると、外国人妻が、韓国・北朝鮮の場合約19.8%、中国人の場合約33.5%、フィリピン人の場合約36.5%、タイ人の場合約37.2%であるのに対し、アメリカ人の場合約153.1%、イギリス人の場合約62.4%、ブラジル人の場合約74.8%となっており、日本人男性とアジア諸国の女性との婚姻が著しく減少しています。

まとめると、この統計により、
・2011年以降、日本の婚姻件数が大きく減少している
・日本人同士の婚姻よりも、一方が外国人の国際結婚の方が減少割合が大きい
・女性側が日本人の場合よりも、男性側が日本人の国際結婚の減少が著しい
・男性側が日本人の国際結婚の中でも、アジア諸国の女性との婚姻が大きく減少している
ということがわかります。