不可抗力条項の注意点と記載例

1 不可抗力条項とは?

契約書で、債務者が不可抗力によって債務の履行ができない場合に、債務者が債務不履行責任を負わないことなどを規定する条項のことを不可抗力条項といいます。

例えば、大地震により工場が壊れてしまい、期限までに商品を納品できなかった場合、不可抗力条項によって免責されるということが考えられます。

 

2 不可抗力条項が無いとどうなる?

日本法が準拠法である場合、民法415条1項は、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」としており、原則として、債務者に帰責性がなければ、債務者は損害賠償責任を負いません。

この「債務者の責めに帰することができない事由」と不可抗力条項との関係は必ずしも明らかではありませんが、実務上は、前者には該当しないが、後者には該当するという場合があり得るということを想定して、不可抗力条項が入れられているものと考えられます。

 

3 不可抗力条項の注意点

不可抗力条項を入れる一つの意義としては、不可抗力事象を具体的に列挙することにより、どのような場合に免責されるのかをある程度明確化することにあるように思いますので、単に「不可抗力」と記載するだけでなく、「火災、地震、津波・・・」などと想定される事象を具体的に記載することが重要です。

また、記載していない事象については、不可抗力事象から除外されていると解釈されるおそれがあるため、想定されている事象について網羅しておくことも重要かと思います。

ただ、このあたりは、準拠法や交渉戦略によっても変わってくるかと思いますので、お悩みの際は弁護士にご相談ください。

 

4 不可抗力条項の記載例

私が以前に作成した不可抗力条項は以下になります。

「天変地異(火災、地震、津波、風水害、落雷、塩害等を含むがこれらに限られない)、戦争(宣戦布告の有無を問わない)・暴動・内乱・テロリズム、法令の改廃制定、公権力による命令処分、ストライキその他の労働争議、輸送機関の事故、疫病、ロックアウトその他甲乙双方の責に帰し得ない事由による本契約の全部又は一部の遅滞、不履行は、本契約の違反とせず、甲乙双方その責を負わないものとする。」

どのような記載が適切かはケースによって異なりますので、あくまでも一例とお考えください。