侮辱罪に関する刑法改正

1 そもそも侮辱罪とは?名誉毀損罪と何が違うのか?

刑法231条(侮辱罪)は、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。」としています。

「事実を適示しなくても」というのは、刑法230条1項(名誉毀損罪)の「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」を受けて規定されているものです。

要するに、「公然と事実を摘示」した場合には名誉毀損罪、そうでない場合は侮辱罪という区分けがされているといえます。

例えば、「●●は××と不倫している」など具体的な事実を示した場合は、事実の摘示があったとして名誉毀損になり得るのに対し、「●●はバカだ」など単に評価を言っただけの場合には、事実の摘示には該当しませんので、名誉毀損にはなりませんが、侮辱にはなり得るといえます。

※ ●●や××は具体的な氏名

 

2 刑法改正による侮辱罪の法定刑の引上げ

今回の刑法改正では、侮辱罪の法定刑について、「拘留又は科料」を「一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に改めるとされています。

改正の理由としては、「近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情等に鑑み、侮辱罪の法定刑を引き上げる必要がある。」とされており、最近、SNS等での誹謗中傷が社会問題となっていることが背景にあると考えられます。

参考リンク:衆議院・刑法等の一部を改正する法律案

なお、侮辱罪の法定刑引上げについては、表現の自由を脅かすのではないかということも議論になっており、日本弁護士連合会からも意見書が出されています。

この点について、衆議院において、施行後三年を経過したときに、表現の自由等の不当な制約になっていないかについて、外部有識者を交えて検証を行う等の附則が追加されました。

参考リンク:衆議院・刑法等の一部を改正する法律案に対する修正案