育成就労制度の「外部監査人」に、弁護士としてどう向き合うべきか

2027年4月1日、技能実習制度に代わって、育成就労制度が始まります。
これに伴い、現在の監理団体は「監理支援機関」として新たに許可を受けることになります。
そして、その許可要件の一つとして、外部監査人の選任が求められます。

1 許可要件としての外部監査人

外部監査人には、弁護士、社会保険労務士、行政書士などの有資格者のほか、育成就労に関する十分な知見を持つ者が就任できます。
ただし、資格があれば足りるというものではありません。
所定の養成講習の受講に加え、受入れ企業との関係を含めた独立性の確保が必要とされています。

2 外部監査人の職務

外部監査人の職務は、大きく二つです。
一つは、定期的な確認です。
監理支援機関の各事業所について、少なくとも3か月に1回、責任役員および監理支援責任者から報告を受け、帳簿書類や設備を確認します。
もう一つは、同行監査です。
年に1回以上、監理支援機関が育成就労実施者に対して行う監査に同行し、その実施状況を確認します。
監査の結果は書面にまとめ、監理支援機関に提出されます。
外部監査人の氏名等は公表の対象でもあります。
形式だけを整えれば済む役割ではなく、監理支援が実際に適切に行われているかを確かめ、必要な改善につなげることが求められているといえます。

3 指摘から改善へ

外部監査は、問題を指摘して終わりにするものではありません。
必要な改善の方向性を整理し、次の確認でその実効性を見極める。
少なくとも3か月に1回という頻度は、この積み重ねを可能にする間隔でもあります。
その積み重ねによって、外部監査人は単なる許可要件ではなく、組織の信頼を支える存在になり得ます。
新制度に真摯に向き合い、適正な受入れ体制を築こうとする監理支援機関に対して、独立性を守りながら力になるということが弁護士に求められているのではないかと考えています。
参考リンク:出入国在留管理庁「育成就労制度について」

私文書偽造罪は「嘘を書く罪」ではない|有印私文書偽造・同行使罪の基礎

1 「偽造」とは、内容が虚偽という意味ではない

文書偽造というと、虚偽の内容の書類を作成することをイメージされる方もいるかもしれません。
しかし、刑法上の偽造は、「内容」ではなく、「作成名義」を偽ることです。
例えば、Aさん名義の借用書を勝手にBさんが作成したという場合は、偽造に当たります。
借用書の内容が真実であった(Aさんは実際にお金を借りていた)としても、Bさんが勝手にその借用書をAさん名義で作成したのであれば、それは偽造だということになります。

2 代筆は偽造になるのか?

それでは、他人の名前を代わりに書いた場合には偽造になるのでしょうか。
これについて、他人の名前を書いたからといって、直ちに偽造になるものではなく、作成権限、名義人本人の承諾の有無、文書の性質などによって、結論が変わります。
例えば、契約書について、本人の手が不自由であったため、本人の承諾のもと、別の人が署名を代書したというような場合には、通常は偽造に当たらないと考えられます。

3 どのような文書でも私文書偽造罪になる?

私文書偽造罪が対象としているのは、「権利、義務若しくは事実証明に関する文書」です。
例えば、契約書、請求書、婚姻届、養子縁組届、履歴書、推薦状などがこれに該当します。
他方で、個人的な日記、時候の挨拶状などはこれに該当しません。

4 有印とは

私文書偽造罪には、有印私文書偽造罪と無印私文書偽造罪があります。
「他人の印章若しくは署名を使用」した偽造の場合は、有印私文書偽造罪となり、罪が重くなります。
有印私文書偽造罪の法定刑が「三月以上五年以下の拘禁刑」であるのに対し、無印私文書偽造罪の法定刑は「一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金」とされています。

5 行使の目的が必要

私文書偽造罪が成立するためには、「行使の目的」が必要です。
真正な文書として他人に認識させる目的がなかった場合には、偽造文書を作ったとしても私文書偽造罪は成立しません。
例えば、ドラマ撮影のための小道具として他人名義の契約書を作ったような場合、実社会で本物の契約書として用いる意図ではないため、私文書偽造罪は成立しません。
弁護士が研修用の教材として他人名義の契約書の見本を作成することもありますが、これも実社会で本物の契約書として用いる意図ではないため、私文書偽造罪は成立しません。

6 偽造私文書等行使罪

私文書偽造罪とは別に、偽造私文書等行使罪という犯罪があります。
自分で私文書を偽造し、かつ、それを行使したというような場合には、両方の犯罪が成立しますが、偽造は自分でしていないというケースもあります。
例えば、闇サイトで入手した偽造の源泉徴収票を住宅ローン審査のために銀行に提出して融資を受けたという場合は、自分では偽造はしていませんが、行使はしているため、偽造私文書等行使罪が成立します(これとは別に詐欺罪も成立すると考えられます。)。