自己破産しても続けていける個人事業
1 自己破産しても事業を続けることができるのか?
債務整理の方法は,任意整理,個人再生,自己破産と大きく分けて3つあります。
このうち,自己破産は,主だった財産をお金にかえて債権者に公平に分配し,残った借金の支払義務を免除してもらう手続きです。
今の仕事が続けていけるかは,借金の支払義務がなくなった後の生活を立て直す意味でも,切実な問題です。
しかし,事業をされている方が自己破産する場合は,事業を続けることが困難な場合が少なくありません。
2 原則として事業を続けるのは難しい
事業をされている方は,法人の代表者をやっている場合と,法人を設立せず個人事業である場合に分かれます。
⑴ 法人の代表者の場合
このうち法人の代表者が自己破産を考える場合は,通常,法人自体の資金繰りが非常に苦しいでしょうし,法人の債務があれば,代表者はその連帯保証をしているのが通常です。
連帯保証人である法人の代表者が自己破産すれば,法人の債務について法人に一括請求され,資金繰りがつかなくなるのが通常です。
また,代表者は,法人との間で委任契約により代表取締役に就任していますが,委任契約は裁判所で破産手続が始まると終了しますので,法人代表者をやめなければなりません。
よって,法人代表者が今までどおり,事業を続けるのはかなり難しいといえます。
⑵ 個人事業主の場合
個人事業主が自己破産する際には,原則として事業所を所有していれば売却する必要がありますし,賃借物件でも自宅以外は明け渡さなければなりません。
また,基本的に,従業員や外注を後払いで雇うこともできません。
そして,事業に必要な機械工具も債権者に分けるべき財産になります。
たとえば,飲食店やメーカーであれば,お店や工場が自己所有なら売却することになり,お店や工場が賃借物件でも明け渡すことになります。
ですから,事業を続けるのは難しいのが原則です。
3 自己破産しても個人事業主が事業を続けられる場合
先ほど記載した個人事業主が原則として事業を続けられない理由からすると,以下の条件を満たす場合は,事業を続ける余地が出てきます。
それは,自宅以外の事業所がないこと,従業員や外注を使っていないこと,事業をするうえで在庫商品や高価な機械工具が必要ないこと等です。
たとえば,運送業者で雇われるのでなく,運んだ荷物の量に応じて収入が決まるドライバーの方や,建築現場で元請が材料や機械工具を準備してくれて,作業した日数に応じて収入が決まる作業員の方等は,個人事業を続けることができる場合もあります。
事業のやり方を少しかえることで,自己破産しても今の仕事を続けることができる個人事業主の方もたくさんいらっしゃいます。
詳細は,事業者の債務整理に通じた弁護士にご相談ください。
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