交通事故の過失割合はどのようにして決まるのですか?
1 過失割合
⑴ 過失割合とは
簡単に表現しますと、事故を起こした当事者の落ち度の割合のことをいいます。
通常は、自分が過失10%(1割)、事故の相手方が過失90%(9割)というように、自分の割合と相手方の割合を足すと100%(10割)になります。
過失割合は、損害賠償額の計算に影響するため、重要な事項といえます。
⑵ 過失割合が0%とされる典型的な事故類型
- ①赤信号で信号待ちの停止中に後方から追突された
- ②対向車線の車がセンターオーバーをして対向車両に衝突した
- ③信号無視の車と衝突した
上記のようなケースでは、原則、被害者の過失は0%になります。
これらの類型の被害車両については、適法に走行しており、いくら安全確認をしていても相手方車両との衝突を防ぎきれないため、原則として被害車両の過失は0%とされているのです。
⑶ 過失が生じる場合の事故類型
他方、交差点での出会い頭の事故では、お互いの安全確認不十分が事故の原因ですので、双方に過失が生じてしまうことがほとんどです。
例えば、信号機のある交差点で、被害者が青信号で直進、加害者が青信号で対向から右折してきた場合の過失割合は、被害者20%:加害者80%となります(別冊判例タイムズ38号【図107】)。
2 過失割合の決め方
⑴ 誰が過失割合を決めるのか?
示談段階では、当事者同士で過失割合を決めます。
つまり、相手方(多くの場合は保険会社)との話し合いで決めることになります。
裁判になれば、当事者の主張を踏まえて裁判所(裁判官)が判断します。
⑵ 事故類型毎におおまかな過失割合は決まっている
車対車の事故か、交差点での事故か、信号がどうだったか等といった事故の態様によって、基本的な過失割合があります。
この基本となる過失割合は、厳密には法律等で決められているものではありませんが、過去の裁判例の蓄積があり、実務上それが重視されています。
そのため、当事者間で過失割合を決めるに際しては、まず、交通事故がどのような事故であったのか(事故の態様)を調べる必要があります。
⑶ 実況見分調書の重要性
その際、重要視される証拠は、警察が作成した「実況見分調書」という書面になります。
実況見分調書には、事故の現場や事故が起きた状況が詳細に記載されています。
例えば、加害者がどの地点で相手車両を発見したのか、どの地点でブレーキを踏んだのか、どの地点で衝突し停止したのかなどが記載されています。
交通事故の態様は、ほとんどこの実況見分調書の内容どおりに認定されるといっても、過言ではありません。
なお、警察に診断書を提出して、人身事故扱いにならないと実況見分が行われず、実況見分調書は作成されませんので、ご注意ください。
⑷ 過失割合では別冊判例タイムズNo.38という本が参考にされます
認定した交通事故の態様を前提にして、別冊判例タイムズNo.38という、各交通事故の態様によって参考にすべき過失割合が記載された書籍を参考にして、基本過失割合や修正要素を検討して、過失割合を決めていきます。
ここでいう「修正要素」は、例えば、「徐行なし」「合図なし」「幹線道路」「既右折」など事故類型ごとに様々なものがあります。
交通ルールに違反した程度が高かったり、安全確認の不十分さの程度が高かったりするほど、不利に修正される仕組みとなっています。
3 過失割合についてのご相談は当法人まで
過失割合は、判例タイムズ38号や裁判例などを参考にして決められますが、詳しい知識がない中で、それらを調べながら適切な割合を決めることは簡単ではありません。
最終的な賠償金額に影響を与えるものですので、自分の交通事故で適切な過失割合がいくらになるのかなどは、弁護士にご相談いただくことをおすすめします。
弁護士法人心 名古屋法律事務所は、名古屋駅から徒歩2分のところに所在しております。
交通事故に関するお悩みを多く取り扱っておりますので、お困りの際はお気軽にご相談ください。
赤本基準とは何ですか? 弁護士に依頼したら裁判になるのですか?
交通事故の過失は交渉で変わる?
1 交通事故の過失割合は損害賠償額にどのように影響するのか?
交通事故が原因で受けた被害者の損害額が100万円だとします。
被害者の方の過失が0%(停止中の追突,ラインオーバー,信号無視などが被害者側過失0%の典型例です。)であれば,損害賠償金として100万円満額の賠償を受けることができます。
しかし,被害者の方にも過失が存在すると評価されれば,被害者の方は,ご自身の過失割合分の金額を控除した金額でしか,損害賠償を受けることができません。
例えば,被害者の方にも過失が2割あると評価された場合,被害者の方は,80万円(=100万円×(100%-20%[被害者過失割合]))しか受け取ることができません。
損害額が少ない場合には,対して大きな差ではないようにも感じますが,損害額が数百万円から数千万円以上と大きな金額になってくると,過失が5%違ってくるだけでも最終受取金額が数百万円以上変わってくることがありますので注意が必要です。
過失割合についての検討は,交通事故に強い弁護士でないと検討が難しい場合が多いため,過失割合で悩まれている方は,ぜひ当法人の交通事故担当弁護士までご相談ください。
2 過失割合についての交渉手段・方法
⑴ 別冊判例タイムズNo.38という緑の本がベース
過失割合は,誰が決めるのでしょうか。
過失割合は,話し合いの示談段階では,双方が話し合いで決めます。
その際に参考にされるのは,別冊判例タイムズNo.38という緑の本です。
この本は,裁判所も参考にしている本です。
示談でうまくまとまらずに,裁判になった場合には,最終的には,裁判所の判断(ないし提案)で過失割合は決まります。
⑵ 刑事記録が重要
示談段階でも,裁判段階でも,刑事記録が重視されます。
裁判では,刑事記録の重要度が示談段階よりも顕著です。
基本的には,警察官が作成した実況見分調書や供述調書などは,信用性が高いものとして扱われますが,まれに誤記等もありますので注意が必要です。
実際にあった例として,加害車両トラックに「バックモニターなし」と明記されていたにも関わらず,実際には,加害車両トラックにはバックモニターが付いていたというケースがありました。
⑶ ドライブレコーダーの映像
刑事記録の他にも強力な証拠となりうるものとしてドライブレコーダーの映像があります。
これは,事故の映像がそのまま写っておりますので,裁判官も事故の状況がイメージしやすいのです。
もっとも,ドライブレコーダーにも死角が存在しますし,映り具合(音声がなかったり,暗い画像である場合など)によっては,事故状況が判然としない場合もあります。
⑷ 目撃者の証言
当事者の供述は自分に不利な供述である場合には信用性は高いのですが,逆に自分に有利な供述である場合には,相手方より争われる可能性があります。
その際に,自分の供述と一致するような,第三者である目撃者の供述があれば,自分の供述の信用性が高まる場合も多いです。
3 過失割合についてのご相談は弁護士法人心 名古屋法律事務所まで
過失割合についての検討ないし交渉は専門的知識が必要不可欠ですので,被害者の方だけで相手方保険会社と交渉されてもうまくいかないことがほとんどだと思われます。
過失割合について,弁護士が介入して交渉すれば必ずしも自分に有利な過失割合で交渉がまとまるというわけではありませんが,少なくとも不当な過失割合でまとまることはまずありませんし,ときには自分に有利な過失でまとまるケースもあります。