子どもが3人いるのですが、長男に全財産を相続させることはできますか?
1 明治民法の相続と今の相続の違い
人が死亡すると相続が発生します。
昭和の初め頃までの日本においては、「相続」において、「財産は長男が継ぐもの」という風潮があり、「長子相続」という制度がありました。
「長子相続」とは、最初に生まれた子どもが財産を相続する制度のことをいいます。
しかも、ここでいう子どもとは、たいてい男子のことで、女性は含まれていません。
「長子相続」という制度は、1947年に廃止されましたが、その後においても、「長子相続」の考え方に従った「相続」がなされていました。
現在の民法においては、被相続人との関係に応じて、相続人ごとに法定相続分が定められています。
例えば、子どもが3人いる場合は、基本的にはそれぞれ3分の1ずつの平等な法定相続分を有しています。
逆にいうと、なにかしらの対策をとらなければ、長男にすべての財産を相続させることができないということが現代の民法の考え方となります。
2 自由に遺言書の内容を決められる
現行民法のもとで、長男に全ての財産を相続させたい場合、遺言で遺産分割の方法の指定をすることが可能です。
それゆえ、被相続人は、「遺産はすべて長男に相続させる」という内容の遺言を作成することによって、いったんは遺産のすべてを長男に相続させることができます。
3 遺留分という制度がある
現行民法においては、遺留分という制度が存在します。
遺留分とは、他の相続人の「自分も相続できるはずだ」という相続に対する期待を保護するための制度で、相続財産の中で一定の相続人に必ず相続させる割合をいいます。
被相続人の「全財産を長男に相続させる」旨の遺言などによって、自己の遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求権(遺留分減殺請求権)を行使することによって、侵害額の回復を図ることができます。
本件のように子どもが3人いらっしゃる場合、ご長男に、被相続人の遺産のすべてを相続させようとしても、他の相続人は、それぞれ6分の1ずつの遺留分を有していますので、自分の遺留分を侵害されたとして、遺留分侵害額請求を行うことが可能です。
ただ、遺留分の侵害を主張する他の相続人が、生前に被相続人から多額の生前贈与を受けていたような場合は、特別受益の主張をすることで、他の相続人の遺留分侵害額を少なくすることができる場合もあります。
また、被相続人がご生前に生命保険に加入し、受取人を長男にすることで、他の相続人の遺留分の額を一定程度、少なくする方法もあります。
名古屋にお住まいの方で、相続に関してお悩みの方は、一度、弁護士法人心にご相談ください。
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