刑法改正

名古屋で交通事故案件を中心に取り扱っている弁護士の青山です。

今回は交通事故の話題ではありませんが、刑法で初めて刑罰の種類を変更するという重要な法改正がありましたので、少し触れたいと思います。

これまで、刑罰の中で、いわゆる「刑務所に行く」と言えば、懲役刑と禁錮刑でした。

懲役刑は、刑事施設内での作業を本質的要素とする刑罰であり、受刑者は作業をすることが義務付けられるものでした。

すると、作業に生活のうちの大部分の時間や労力を割かなければならないため、更生や社会復帰のために必要な指導等を受けるのに十分な時間をとることが困難であったという問題がありました。

また、禁錮刑は作業を行う刑法上の義務が無く、本人の申し出に基づき作業をさせることができるに過ぎない、というものでした。

そのため、更生や社会復帰のために有益な作業であっても、受刑者本人が希望しない限り実施させることができないという問題がありました。

上記のように、懲役と禁錮では受刑者の更生や社会復帰の点で不十分で、再犯を防止にもつながっていないということが指摘されていました。

そこで、令和7年6月1日に施行された刑法改正で、懲役刑と禁錮刑が廃止され、新たに「拘禁刑」が導入されました。

拘禁刑は、受刑者の「改善更生」を目的として明文化し(刑法第12条3項)、刑事施設において、「必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」というものとされました。

個別の受刑者にとって、その受刑者が更生・社会復帰をするためには作業に従事するのがいいのか、それとも指導や矯正プログラムを受けさせるのがいいのか、あるいはその併用がいいのか、個別に判断して、受刑中の処遇を決めるというものになります。

作業の内容も、従来のものから、基礎的作業(職業上の基礎的な能力を身に着けさせるもの)、機能別作業(特定の機能や能力を向上させるもの)、職業訓練(出所後の就労への準備を進めるもの)に刷新されました。

また、指導内容も充実され、薬物依存離脱指導、暴力団離脱指導、性犯罪再犯防止指導・・・、その他の特別改善指導が充実されました。

この拘禁刑の新たなスタートにより、再犯率の低下が期待されています。