修理費用が損害として認められない場合

交通事故で車両が修理不能,もしくは修理費が時価額を上回るいわゆる経済的全損の場合,修理費が損害賠償として支払われるのでしょうか?

答えは,ノーです。この場合,修理費が損害賠償として支払われることはありません。この場合,買替えを念頭に,事故直前の交換価値をもとにした車両価格が賠償されます。

もっとも,被害者が実際に買替えを行った場合は,上記の事故直前の交換価値をもとにした車両価格だけではなく,車両買替費用が賠償の対象となります。
例えば,「交通事故損害賠償額算定基準―実務運用と解説―」(通称「青い本」)によれば,買替えのために必要な登録費用,車庫証明手数料,納車費用,廃車費用のうち法定手数料及び相当額のディーラー報酬部分並びに同程度の中古車取得に要する自動車取得税,被害車の未経過期間の重量税が挙げられています。

他方,買替後の車両の自賠責保険料,自動車重量税,及び被害車両の未経過の自動車税,自賠責保険料は認められないとされています。
注意をしていただきたいのは,上記費用の設定は自動車業者によって異なる場合が多く,買替諸費用があまりに高額に上る場合には,相当額に限定される場合があります。

その他にも,車検直後の全損事故について,車検整備に支出した費用(16万7501円)はこれに見合う使用ができなかったものとして損害と認めた例(横浜地判平6.4.14)等があります。

このように,交通事故の際には,物損としては,修理費用だけではなく,車両買替費用,その他の費用が認められる場合もあります。しかし,このような買替費用まで認められるということを知らずに示談してしまう被害者が多いのが現実です。

交通事故に遭った場合には,弁護士に相談されることをお勧めいたします。