マンション(共同住宅)の部屋の賃貸人が失火により、自室、共用部、他の居室を焼失させた場合の責任

1 不法行為責任と失火責任法

賃借人が失火で、自室や共用部、他の居室を焼失させてしまった場合、民法709条に基づく損害賠償義務を負わないかが問題となりますが、これについては、失火責任法が適用され、重過失がない限り責任を負いません。

失火責任法

民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス

参考リンク:失火責任法は不合理か?

 

2 債務不履行責任

⑴ 失火責任法の適用はない

債務不履行に基づく損害賠償については、失火責任法の適用はありません(最判昭和30年3月25日民集第9巻3号385頁)。

⑵ 責任の範囲

賃借人は、失火により賃借している部屋を焼失させ、返還することができなくなっているため、少なくとも、その部屋については、債務不履行責任を負います。

それでは、廊下や他の居室についてはどうでしょうか。

この点について、木造の共同住宅での失火につき、「本件のようなその部屋だけが構造上独立して存在しない共同住宅の部屋の賃貸借の場合には、火災による右賃借物返還義務の履行不能による損害賠償としては、当該賃借部屋のみに限られず、これを維持存立せしめる上において不可分の一体をなす隣接の部屋、廊下等の部分その他階下の部分に対する損害についてもその賠償をなすべき義務あるものと解するのが相当である。」とした裁判例があります(東京高判昭和40年12月14日判例タイムズ188号159頁)。

木造建築物でない場合や、共同住宅でない場合などにおいて、同様の結論になるのかについては、具体的な事情に基づいた検討が必要かと思いますので、弁護士等の専門家にご相談ください。