女性同士の客の入店禁止は違法か?

1 女性同士の客の入店禁止は憲法違反?

最近、女性同士はお断りという飲食店について各種メディアでも話題になっていますが、法律上はどのように考えられるのでしょうか。
女性同士の入店禁止というのは、性別に基づく差別で憲法14条1項が保障する平等原則違反だという意見を耳にすることがあります。
憲法14条1項は、「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」と定めています。
しかし、一部の条項を除き、憲法は国家権力に対する法規範であり、飲食店を営む民間企業に直接適用されるものではありませんので、飲食店による入店拒否が、直接、憲法14条1項に違反するということはありません。
参照:憲法の私人間効力(間接適用説)
もっとも、民間企業であれば、差別的な取り扱いをしても、法律上問題とならないのかというと、そうではありません。
以下で、差別的な取り扱いの違法性が、法律上、どのような位置づけで問題となるのかについて、考えていきたいと思います。

 

2 入店拒否を訴訟で行う場合の法律構成

入店拒否をされた女性が訴訟で争うという場合には、入店拒否をされたことによって被った精神的苦痛について、民法709条に基づき、損害賠償請求をするということが考えられます。

そして、一部の属性の人を入店拒否にするという差別的な取り扱いが、違法かどうかという民法709条の解釈・適用を行う上で、憲法14条1項が保障する平等権の趣旨・価値を反映させるというのが、現在の判例・通説の考え方です。

そのため、入店拒否が「違憲」かどうかではなく、民法上「違法」かどうかというのが、正しい位置づけとなります。

 

3 女性同士の客の入店拒否は違法か?

まず、店側にも「営業の自由」があるというのが大原則ですが、営業の自由も無制限に認められるものではなく、合理性のない差別的な取り扱いというのは違法になり得ます。

合理性の有無については、店側が差別的取り扱いをする「目的」がポイントとなります。

例えば、店側が、「女性同士の場合は滞在時間が長く回転率が悪い」あるいは「注文が少ないから客単価が低い」と考えて、女性同士の入店を拒否した場合はどうでしょうか。

まず、滞在時間や注文金額については、当然ながら、男性同士でも滞在時間が長い客もいますし、男性でも小食で注文量が少ないという客も多く、性別から一律に決まるものではありません。

また、店側が、回転率を上げたい、客単価を上げたいと考えるのであれば、滞在時間については時間制限を設ける、注文金額については最低注文金額を設けるなどの代替手段もありますので、女性同士の客を一律に入店拒否する必要性は低いといえます。

そうだとすると、上記のような理由による女性同士の客の入店拒否であれば、合理性が乏しいものとして、違法とされる可能性が高いのではないかと思います。

なお、違法かどうかと適切かどうかは別問題で、仮に適法であっても社会的に不適切と評価されることも少なくありませんので、弁護士に相談等されるような場合でも、その点も注意が必要です。

特に、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地」という事項については、歴史的に差別が存在し、憲法が明示的に掲げているということが十分に尊重されなければなりません。

憲法の私人間効力(間接適用説)

以前にこのブログで、憲法というのは、国家権力に向けられた法規範だということを書きました。

国家が国民の権利を侵害するような法律を作ったような場合に、憲法違反だというような議論がなされるわけです。

参照:憲法と法律の違い

 

それでは、民間企業や個人の行為にも、憲法が適用されるのでしょうか?

これが今回のテーマである「憲法の私人間効力」という問題です。

憲法学の基本的な論点ですので、弁護士よりも、法学部生や法科大学院生がよく目にするものかもしれません。

例えば、民間企業に就職した人について、大学在学中に学生運動に関与した事実を身上書に記載せず、面接の際にも秘匿したことが後から発覚し、試用期間満了直前に本採用を拒否されたという場合に、この本採用拒否が憲法に違反するのではないかということが問題となったケースがあります。

 

これについて、主要な学説としては、

①憲法上の特別の定めがある場合を除き、憲法は、私人間には適用されないという無適用説

②私人間にも憲法が直接適用されるという直接適用説

③私法の一般条項の解釈・適用に憲法の趣旨・価値を反映させることで、私人間にも間接的に適用されるという間接適用説

の大きく3つの見解があります。

 

この点、最高裁判所は、リーディングケースである三菱樹脂事件(最判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)において、憲法の自由権的基本権の保障規定について、「もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」としつつ、「私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。」としており、最高裁判所としては、間接適用説を採用しているものと考えられます。

 

参考リンク:厚生労働省・確かめよう労働条件