憲法の私人間効力(間接適用説)

以前にこのブログで、憲法というのは、国家権力に向けられた法規範だということを書きました。

国家が国民の権利を侵害するような法律を作ったような場合に、憲法違反だというような議論がなされるわけです。

参照:憲法と法律の違い

 

それでは、民間企業や個人の行為にも、憲法が適用されるのでしょうか?

これが今回のテーマである「憲法の私人間効力」という問題です。

憲法学の基本的な論点ですので、弁護士よりも、法学部生や法科大学院生がよく目にするものかもしれません。

例えば、民間企業に就職した人について、大学在学中に学生運動に関与した事実を身上書に記載せず、面接の際にも秘匿したことが後から発覚し、試用期間満了直前に本採用を拒否されたという場合に、この本採用拒否が憲法に違反するのではないかということが問題となったケースがあります。

 

これについて、主要な学説としては、

①憲法上の特別の定めがある場合を除き、憲法は、私人間には適用されないという無適用説

②私人間にも憲法が直接適用されるという直接適用説

③私法の一般条項を介して私人間にも間接的に適用されるという間接適用説

の大きく3つの見解があります。

 

この点、最高裁判所は、リーディングケースである三菱樹脂事件(最判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)において、憲法の自由権的基本権の保障規定について、「もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない」としつつ、「私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。」としており、最高裁判所としては、間接適用説を採用しているものと考えられます。

 

参考リンク:厚生労働省・確かめよう労働条件