美人局と強盗・恐喝

先日、名古屋市内のホテルで殺人事件があり、警察が、実行役とみられる男女2人を強盗殺人容疑で逮捕し、指示役とみられる男1人が恐喝容疑で逮捕したとの報道がなされています。

なぜ逮捕の被疑事実が異なるのかについて、強盗と恐喝の違いにも触れつつ、考えてみたいと思います。

 

1 強盗と恐喝の違い

強盗と恐喝は、いずれも、暴行・脅迫によって相手から財物を交付させるという点で、類似する犯罪類型です。

両罪の違いは、相手の犯行を抑圧する程度の暴行・脅迫がなされたか否かです。

相手の犯行を抑圧する程度の暴行・脅迫がなされた場合には「強盗」、そこまでは至っていない場合には「恐喝」となります。

これを判断する際には、場所、時刻、周囲の状況、体格、年齢など様々な要素が考慮されます。

 

2 美人局は恐喝?強盗?

上記名古屋の事件でどのような行為がなされたのかは現時点で明らかにされていませんが、一般論として、「会社にバラす」「警察に通報する」などと脅したような場合には、通常、「恐喝」に当たるものと考えられます。

また、暴行がなされたとしても、犯行を抑圧する程度のものでなければ、「恐喝」に当たります。

 

3 実行役が相手を殺害してしまったらどうなるか?

指示役から実行役に対して、どのような指示がなされていたかがポイントとなります。

これについても、上記名古屋の事件でどのような指示がなされていたのかは現時点で明らかにされていませんが、例えば、指示役が、「金を出さなければ美人局について会社にバラすと脅せ。ただし、相手に怪我はさせるな。」と指示していたが、実行役が、自分の判断で、相手を殺害してしまったというような場合であれば、実行役には強盗殺人罪が成立するのに対し、指示役には恐喝罪しか成立しない可能性が高いと考えられます。

他方で、極端な例ですが、指示役が、「金を出さなければ美人局について会社にバラすと脅せ。それでも応じなければ殺せ。」と指示していたような場合であれば、実行役にも指示役にも強盗殺人罪が成立する可能性が高いと考えられます。