10月に入って、夜などは涼しい日も増えてきました。
名古屋では、日中はまだまだ暑いと感じることもありますが、過ごしやすい日が増えてきたように感じます。
今回は「再度の相続放棄の受理」について、取り上げたいと思います。
再度の相続放棄の受理が認められるかどうかが問題になった事例があります。
東京高等裁判所の令和6年7月18日の決定です。
申述人は、再転相続によって、被相続人の相続になりました。
この相続を「第一相続」ということにします。
その後、他の相続人についても再転相続が発生し、その相続人が相続放棄をしたことによって、申述人は、改めて、その相続人の地位を承継することになりました。
この相続を「第二相続」ということにします。
そのような場合に、申述人が、一度、相続放棄を申述し、これが受理されていれば、再度の申述をすることが認められないのかどうかが問題となりました。
家庭裁判所は、この点について、申述人は、一度目の相続放棄によって、すでに相続人ではなくなっているため、再度、相続放棄をする必要はなく、相続放棄の申述も受理できないと判断しました。
これに対して、抗告人は、当初の相続放棄は、第一相続についてされたものであり、本件の相続放棄は第二相続についてしたものであって、これも放棄をする必要がると主張しました。
すなわち、本件では、申述人は、第二相続を理由とした相続人ではあったため、相続人としての地位が残っているという立場を主張しました。
高等裁判所は、この判断をするにあたって、前提として、相続放棄の申述は、却下すべきことが明白な場合を除いては、受理するのが相当であるとしました。
これは、他の裁判所での決定でも述べられていることですが、相続放棄の申述が受理されたとしも、これは相続放棄の効果を確定させるものではなく、後日の民事訴訟で争われた場合には、そこで最終的な判断がなされるものである一方、申述が受理されなければ相続放棄の効果が発生しないことが確定するからです。
そのため、家庭裁判所における審判では、上記のとおり、緩やかに判断がされることになっています。
高等裁判所は、上記のような判断の前提からすると、抗告人が主張したような解釈も、「およそ成り立ち得ないものということはできず、採用される見込みがないとはいえない。」としたうえ、当初の相続放棄が第一相続のものであって、第二相続についての相続人の地位が残っていると解する余地もあるとしました。
そうすると、申述人が相続人でないことが明白であったとはできないとして、相続放棄を受理するのが相当であるとしました。
この判断を理解するにあたって重要なことは、高等裁判所も、民法の解釈上、申述人が相続人であったと判断しているわけではなく、「相続人でないことが明白ではない」という判断をしているということです。
この決定からも、相続人の立場から考えておくべきことがあるように思います。
すなわち、相続放棄が認められなかったことのリスクを考えれば、「相続放棄によって相続人でないということが明白でない限り、念のため、相続放棄の申述をしておく。」という方針が正しいのではないかと考えられます。