裁判手続きのIT化について

令和の最初の年も,もうすぐ終わろうとしています。
私自身も,今年1年でできたことと,できなかったことをしっかり見直して,また来年からより一層頑張っていきたいと思います。
これからも,みなさまのご指導とご鞭撻をお願いいたします。

今回は,民事訴訟のIT化の話題を採りあげたいと思います。

日本の裁判手続きにおいては,以前からIT化の遅れが指摘されて久しいものがあります。

民事裁判を提起する訴状や,裁判での主張内容を記載する準備書面といった書面は,現在はすべて紙で提出する必要があります。
訴訟係属中の準備書面等はFAXによって提出していますが,枚数が多い場合にはFAXによらず郵送をする必要がありますし,郵送には費用や手間が非常にかかってしまっています。

司法当局が参加する民事司法制度改革推進に関する関係省庁連絡会議は,今月,民事裁判制度の改革の骨子案をまとめました。
骨子案によると,民事訴訟手続きを段階的にオンライン化し,最終的には全面的なオンライン化を図るというもののようです。
訴訟代理人弁護士には,裁判関係書類のオンライン提出を義務付けることで,民事訴訟手続きのオンライン化を推進するとされています。

上記のようなオンライン化が進めば,口頭弁論期日をオンラインで行うことや訴訟記録をオンラインで閲覧・謄写することも可能になるでしょう。
実際に,愛知県弁護士会では,名古屋地方裁判所との間で,ウェブ会議による争点整理手続を想定した合同模擬裁判も開かれています。

裁判手続きがオンライン化されれば,弁護士業務の効率化にもつながるため,私としてはこれに期待するところが大きいです。

他方で,訴訟代理人が就かない,いわゆる本人訴訟による場合には,なかなか弁護士以外の方がオンラインに対応することは難しく,これまでもハードルが高いとされてきた訴訟手続きにアクセスすることがより困難になるのではないかという懸念もあるでしょう。
また,オンラインでのデータのやりとりとなる場合には,情報漏洩等のリスクがより高まることも予想されますし,弁護士としても守秘義務の観点からの対応が要請されるケースもありそうです。

司法制度に関わる一員として,これらの問題点を適切に克服しながら,より効率的な紛争解決に努めていきたいと思います。