空き家シンポジウムの講演内容

11月も終わりが近づき,今年もあとわずかとなりました。

今年1年を振り返ったときに,良い1年だったと思えるように残りの日も頑張っていきたいと思います。

 

弁護士の江口潤です。

 

今回は,私も,先日,参加した空き家シンポジウムの講演内容をご紹介したいと思います。

空き家が発生する理由についてはさまざまありますが,少子高齢化による人口減少,建物の老朽化や接道のない建物であることによる取引需要の低下などがあるそうです。

また,名古屋市が平成27年度に行った市政アンケートによると,空き家を所有することになった理由について,「相続」と回答した割合が66パーセントであったそうです。

相続人の間で遺産分割協議が進まないなどの問題が生じると,家屋を誰が相続するかについて決めることができませんし,長い期間を経過することで,家屋の権利関係がより複雑になってしまい,空き家が放置される要因になるという点が,指摘されていました。

私が名古屋で相続に関する相談を受けていても,遺産分割の方法について相続人間でもめてしまって協議が進まなかったり,遺産分割をせずに放置したままであったりしたことで,長い期間が経過してしまい,数次相続が発生して相続人が変更されることで,問題の解決がより困難になっているケースは,しばしばうかがいます。

たしかに,相続人にとって思い出のある実家を残したいという気持ちもよく理解できますし,家を継ぐ方が実家から離れてしまった状況で,仏壇や家財道具が実家に残ったまま倉庫代わりになっているケースは,致し方ないようにも思います。

ただ,遺産分割協議を進めることができなかった結果,相続人間の誰も住む予定がなく管理が大変な自宅を押し付けあったり,自宅を売却するかどうかでもめたりするケースについては,空き家のまま放置し,管理が十分にされなかった結果,災害等によって倒壊し,周囲の人や者に損害を与えた場合には,所有者として民事上の責任を負うリスクがありますので,相続人にとってもできるだけ早く解決することにメリットがあるといえます。

また,このようなリスクは,亡くなる方が生前から,適切な内容の遺言書を作成しておけば避けられた場合が少なくありません。

ただ,相続に関する場合には限られませんが,管理が大変な空き家を所有することになってしまった者に対しては,行政からさまざまな支援を受けることができる制度があります。

たとえば,このブログの掲載時には,老朽化して保安上危険な家屋に対して解体費の一部を行政が補助する制度であったり,空き家の発生を抑制するため,被相続人の居住の用に供していた家屋を取り壊すなどして土地を譲渡する等いくつかの条件を満たした場合には,売却に伴う譲渡所得から3000万円まで控除するという特例があったりします。

すでに空き家になってしまっている家屋を抱えている場合には,お早めに対応をされた方がよいですし,空き家になってしまいそうな家屋を所有されているのであれば,予めそれについての対策をされておかれるようにおすすめします。