所在等が不明な共有者から持分を取得する制度について

東京オリンピックの開幕が間近になってきました。

現在のコロナ情勢の中で、無観客での開催方法や、そもそも開催することの適否など、賛否に関するみなさまのご意見はそれぞれでしょう。

無観客での開催となると、オリンピックを通じて見込んでいたさまざまな効果は喪われることになってしまいますし、多くの労力が結果につながらなかったことは非常に残念に思います。

とはいえ、実際に開催するのであれば、選手の方々にはスポーツの素晴らしさを純粋に伝えてほしいと思いますし、大会を支える関係者を名古屋の地から応援したいと思います。

 

今回は、民法改正で導入される所在等が不明な共有者から共有持分を取得する制度について触れたいと思います。

 

前回は、所有者不明土地の解消のために制定された相続財産国庫帰属法について取り上げましたが、この制度も同じ目的で制定されたものです。

 

不動産の中に、所在等が不明な共有者(「他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない共有者」)がいる場合に、共有者は当該共有者の持分を有償で引き取ることができるようになりました。

適用可能な場面としては、相続財産国庫帰属法のように相続等によって取得された不動産に限られず、通常の共有状態であれば利用することができます。

 

所在等が不明であるというためは、不動産登記の内容や住民票などを調査することで、所在などを調査しても不明であることが必要です。

このような調査を尽くしても所在等が不明であることが裁判所に認められれば、そのような共有者から共有持分を取得することができます。

 

その後、裁判所は、申立てをした共有者に対して、当該持分に応じた供託金を納めることを命じます。

これは、所在等不明共有者からの時価相当額請求権に基づく支払いの担保とするためです。

この供託がなされれば、当該持分は申立てをした共有者に移り、他方、所在等不明共有者は申立てをした共有者に対して時価相当額請求権を取得することになります。

 

注意しなければならないのは、供託を命じられた供託金額が、必ずしも時価相当額請求権の価額と一致するわけではないということです。

当事者間でこの価額が争われた場合には、最終的には裁判所での訴訟で決することになります。

 

この制度がどの程度利用しやすいものとなるかは、所在等の不明に関する裁判所の判断や、供託金の算定に関する裁判所の運用によるでしょう。

不動産の権利関係の整理に対するニーズは高いものと思われますので、弁護士として制度開始後の運用に注目していきたいと思います。