不動産取引における心理的瑕疵について②

暑さもかなり和らいだように思いますが、名古屋でもまだまだ暑い日も続いていますね。

季節の変わり目は体調を崩しやすくもありますし、今の季節は台風にも警戒が必要でしょうから、みなさまもくれぐれもご用心いただきたいと思います。

 

前回から引き続き、不動産取引における心理的瑕疵について取り上げたいと思います。

 

国土交通省が令和3年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、人の死の事案について「告げなくてもよい場合」が明示されていることが特徴的です。

 

告知義務のない類型の一つ目として、「対象不動産において自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合」があげられています。

この類型は、賃貸借取引と売買取引の双方が念頭におかれています。

「自然死」とは、老衰や持病による病死などのことをいい、このような人の死亡が発生することは居住用不動産において当然に予想され、一般的な死因であることから、取引判断に重要な影響を及ぼさないと考えられています。

「日常生活の中での不慮の死」とは、たとえば、階段からの転落や入浴中の溺死、食事中の誤嚥などのことをいい、これについても自然と同様に扱ってよいだろうとされています。

ただし、上記のような死因であっても、いわゆる孤独死などによって特殊清掃などが必要になったケースについては、取引判断に重要な影響を及ぼす可能性があることから、告知義務があるものと考えられています。

 

告知義務のない類型の二つ目として、「告知義務がある場合であっても、それが判明した後に概ね3年が経過した場合」があげられています。

この類型は、賃貸借取引が対象で、売買取引は対象外です。

心理的瑕疵は、時間の経過とともに希釈され、やがて消滅するとも考えられているところではあり、では、この期間がどのくらいであるのかが問題となります。

この問題に関する過去の裁判例を参考にして、賃貸借契約においては、原則として、概ね3年が経過した場合には告知義務が消滅するとされています。

ただし、例外的に、人の死の事案の事件性や周知性、社会に与えた影響等が特に大きい事案については、上記の期間の経過では足りず、告知義務がないとはいえないとされています。

 

告知義務のない類型の三つ目として、「対象不動産の隣接住戸又は借主若しくは買主が日常生活において通常使用しない集合住宅の共用部分で生じた死の事案」があげられています。

これも、第一の類型と同じく、賃貸借取引と売買取引の双方が念頭におかれています。

対象不動産そのもので生じたものではなくても、その周辺で生じたものも心理的瑕疵になりうると考えられますが、では、どのような場合がこれにあたるかが問題となります。

「対象不動産の隣接住戸」とされているので、周囲の住居で起きた死の事案については、原則として、告知義務の対象外とされています。

「通常使用しない集合住宅の共用部分」とされているので、マンションなどの共用部分のうち、居住者が通常使用しない部分で起きた死の事案も、原則として対象外とされています。

ただし、この類型でも、第二の類型と同様、人の死の事案の事件性や周知性、社会に与えた影響等が特に大きい事案については、例外として扱われています。

 

ガイドラインでは上記のとおりとされているのですが、みなさまの感じ方はいかがでしょうか。

前回のブログでも指摘しましたが、何を心理的瑕疵と考えるかは人それぞれであるといえますので、告知義務の対象外としてよいのかは慎重に考えるべきでしょう。

とはいえ、不動産の客観的な価値を評価する場合には、「一般的な視点」というものが必要になりますし、これに対する一つの考え方が明示されていることは有意義だといえます。

これは今後の社会の状況や人々の認識によって変わり得るものであろうとも思いますが、弁護士や不動産取引に関わる者としては、このような一般的な視点を理解しておく必要があるとはいえるでしょう。

 

不動産取引における心理的瑕疵について①

連日、暑い日が続いていますね。

肌の弱い私にとっては、暑さもさることながら、日差しの強さが天敵でして、なるべく日差しを避けるように行動しています。

とはいえ、普段から名古屋市内を自転車で移動していますので、この対策をしていても相当な被害を被っています。

最近は、突然の雨にも悩まされていますし、いつも天気予報を気にしながら行動しています。

「酷暑や突然の雨も、まったく気にならない」という方はごく少数でしょうから、程度の差こそあれ、みなさまも同じようなご状況でしょうか。

 

今回からしばらく、不動産取引における心理的瑕疵について取り上げたいと思います。

 

不動産取引における「心理的瑕疵」とは、その不動産で人の死に関して発生したできごとが対象の不動産の取引においてマイナスに影響するもののことです。

たとえば、その住居で過去に殺人事件があったということであれば、そのような住居には住みたくないと考えるのが一般的ですので、そのできごとが不動産の価値を損なう方向で影響するといえます。

このような不動産の価値に関する重要な情報は、取引において、相手に予め伝えておく必要があるのです。

 

ここで問題になるのは、「どのような事項であれば、予め相手に伝えておく必要があるのだろうか」ということです。

心理的瑕疵とは、あくまで主観的なものであって、人の感じ方はさまざまであることからすると、予め伝えないといけない事項であるかどうかは判断が難しい面があります。

不動産業者(宅地建物取引業者)が仲介に入っている場合には、業者には、取引にあたって、心理的瑕疵にあたりうるものを「重要事項」として予め伝える義務があるとされていますので、業務をするうえで悩ましい面が出てくるのです。

加えて、業者としても、どのような方法で心理的瑕疵にあたりうるできごとがあったかどうかを調査しなければならないのかという問題もあります。

 

これらの問題について、国土交通省で検討会が開かれ、ガイドラインが作成されました。

これまでの実務や裁判例を踏まえて作成されたものですので、参照するに値するものだと思います。

 

ガイドラインで対象となっているのは居住用の不動産だけであったり、主には業者向けの内容であったりするのですが、相続に関わる弁護士業務をするうえでもしばしば問題になりますし、興味深い点も多くありますので、これから数回に渡ってその内容を紹介していきたいと思います。

 

相続人申告登記について

安倍元総理大臣が凶弾に倒れました。

一報を聞いたときは非常に驚きましたし、命を落とされたと聞いたときはショックでした。

その業績に対する評価はさまざまでしょうが、日本という国のことを考えて非常に尽力された方であろうと思います。

このような形で最期を迎えられたことは、関係者にとっては非常に悔しいでしょうし、何よりご本人が無念であったろうと思います。

心からご冥福をお祈りいたします。

 

今回は、相続人申告登記について取り上げたいと思います。

 

法律が改正され、相続登記が義務化されることは過去のブログでも採りあげました。

 

弁護士業務をしている中でも、「期限内に相続登記をすることが義務化される」=「期限内に遺産分割協議を成立させなければならない」と考えられている方も多いように思いますが、実は、正確には異なります。

遺産分割協議の成立による相続登記以外にも、法定相続登記による登記をすることができますし、これにより法律上の義務は果たしたことになります。

 

今回の相続登記の義務化によって、新たに「相続人申告登記」という制度が設けられることになりました。

相続人申告登記とは、相続人が、所有権の登記名義人について相続が開始した旨と自らが登記名義人の相続人である旨を申し出ることによる登記のことです。

上記の法定相続登記との違いは、登記の際に提出が必要となる書類が少なくなるということです。

法定相続登記においては、すべての相続人関係を明らかにする必要がありますから、被相続人の出生から死亡、各相続人の現在の戸籍等を提出する必要があります。

他方で、相続人申告登記では、自らが相続人であることのみを示せばよく、被相続人の死亡の記載のある戸籍と自らの戸籍(これに加えて、名古屋市等の住所を証する住所証明情報も)の提出だけで済む場合があります。

このように、相続登記が義務化されたことによって、相続人に過度の負担が生じないように簡易な制度が設けられることになったのです。

 

この登記は、「申出」とされており、「申請」とはされていません。

これは、この登記があくまで申出人からの申出によって、登記官が職権で登記をすることができるという形式が採られているためです。

登記の内容としても、権利登記への付記登記として扱われます。

 

登録免許税などの登記に必要な費用の面でも配慮がされるかもしれません。

相続登記の義務化は政策的な観点から定められたものですので、なるべく負担がないような制度としてほしいと思います。

 

特定路線価について

円安が進行しているようです。
円相場に影響を与える経済的要因としてはさまざまなものがありますが、日本と他の国家間での金融政策の違いが原因だとも分析されているようです。
すなわち、インフレを抑制しようとしている他の国の金融政策に対して、日本はインフレを許容する金融緩和を続けていることから、円の価値が相対的に下落し、円安につながっているのだと分析されています。
原料を輸入し、加工した工業製品を輸出するという経済モデルをとっていたかつての日本であれば、円安は国際競争力の強化にもつながり、歓迎すべき状況ともされたのでしょうが、現在の日本においては、このような単純な評価がされる状況にはありません。
さまざま経済人や識者が、現在の円安状況についての見解を発表していますし、私自身、それぞれの見解を興味深く読んでいますし、名古屋経済にとってどうなのかも気になるところです。
少なくとも、急激な環境の変化は生活などに与える影響も大きいでしょうから、みなさまの生活やお仕事に悪い影響がですぎることがないように願っています。

前回は、土地の路線価と固定資産評価額について取り上げましたが、今回は特定路線価についてご紹介いたします。

路線価は、相続税や贈与税において、土地の評価に使用する指標で、国税庁から毎年、発表されるものです。
路線価地域にある土地については、この路線価を基準として土地の評価額を計算していくことになります。

しかし、ありとあらゆる道路に路線価が設定されているわけではなく、評価の対象の土地に接している道路に路線価が設定されていない場合があります。
そのような場合には、税務署にその道路の路線価を設定してもらう必要があり、このようにして設定された路線価を特定路線価と呼んでいます。

特定路線価を設定してもらうためには、税務署に特定路線価設定申出書を提出する必要があります。
申出書に必要事項を記入したうえで、評価すべき土地や、特定路線価を設定する道路についての物件案内図や地形図、写真などの資料を付して、提出することになります。

国税庁のホームページでは、この手続きの処理に必要な標準処理期間は、概ね1か月程度と紹介されています。
相続税の申告期限が近い場合には、設定に要するこの期間も問題となりえますので、特定路線価の設定が必要な場合には、早めに対応しておく必要があります。

路線価と固定資産税評価額の決められ方

今年もゴールデンウイークの最終日となりました。

平日もお休みを取ることができた方は10連休、平日が暦どおりの方は3連休が2回あったようです。

コロナの影響もあったため、長期の旅行に行かれた方はあまり多くなかったかもしれません。

ただ、名古屋の栄でもさまざまなイベントは予定どおり開催されていましたし、少しずつ通常の生活が戻ってきているようにも感じます。

感染の拡大にも注意しながら、引き続き、日々の生活を過ごしていきたいと思います。

 

今回は、路線価と固定資産税評価額がどのように決められているかについてご紹介いたします。

 

路線価は、相続税や贈与税において、土地の評価に使用する指標です。

路線価は、毎年、見直しがされ、その年の1月1日時点での評価額が決められます。

具体的な数字は、国税庁や税務署が近隣の取引価格や従前の路線価などから、不動産鑑定士などの専門家の意見も聞きながら決められているとされています。

決められる時期については、毎年、7月までに決められるように運用されています。

 

固定資産評価額のうち土地については、住宅の集中している土地と、それ以外の田舎の土地で評価方法が異なります。

住宅の集中している土地は、いわゆる路線価と同じように、道路ごとに設定されている土地単価をもとにして、固定資産評価額が計算されています。

それ以外の土地については、標準宅地比準方式という方法が採用されており、対象の土地の付近にある標準宅地の土地単価をもとに計算がされています。

評価額は3年ごとに見直しがされており、基本的には3年間は同じ金額が採用されています。

固定資産評価額は、市町村で縦覧帳簿というもので閲覧することが可能になっており、4月1日から5月31日までが縦覧期間となっています。

固定資産の評価額に不満がある場合には、担当の部署に問い合わせたり、固定資産評価審査委員会へ再審査をしてもらったりすることが可能だとされています。

 

名義財産について

前回の記事では、ウクライナとコロナの問題に触れましたが、今は地震のリスクにも注目が集まっているようです。

インターネットのホームページでは、最近起きた地震の最大震度を4以上や5弱などに限って表示できるものもあります。

それを見ると、それなりの規模の地震が最近、頻発しているように思えます。

私自身はあまり地震に詳しいわけではありませんが、このような地震もプレートのひずみがたまったために生じたものである可能性を考えると、以前から危惧されていた巨大地震の予兆の可能性もあるのだろうと思います。

個々人ができる対策には限りはあるのでしょうが、非常時の食糧や水の確保など、少しでも備えをしておくかどうかで大きな違いがあるのでしょうから、日頃からできる範囲での準備はしておきたいと思います。

 

今回は、名義財産の問題についてご紹介いたします。

 

名義財産とは、名義はその人とは異なるが、その人の財産といえるものをいいます。

たとえば、預貯金口座が妻の名義となっているものの、実質は夫のものだったというようなものです。

預貯金のほかにも、不動産であったり、株式であったり、保険であったり、名義財産となる可能性のある財産といえます。

 

名義財産であるかどうかが問題となる場面として、たとえば相続税の申告の場合があります。

亡くなった方の名義ではないものの、亡くなった方の財産である場合には、相続財産に計上しなければなりませんので注意が必要です。

 

問題となることが多いのが預貯金のケースですので、預貯金を例にとって、名義財産かどうかを判定する考え方を紹介します。

 

最も重要なのは、その口座の預貯金の出捐者が誰なのかということでしょう。

口座内の預貯金が亡くなった方が出したものであれば、名義財産と考えられる余地で出てきます。

この他の要素として、その口座が、いつ、誰によって、どのような目的で開設されたものなのか、どのような目的で利用されてきたのか、通帳やキャッシュカードは誰がどのように管理していたのかなどを考慮する必要があります。

 

名義財産であることが疑われる場合には、課税庁は、上記の事情についての資料を収集することができますので、申告をする側はしっかりと検討する必要があります。

詳しくは弁護士にご相談ください。

名古屋で相続に関するご相談をお考えの方はこちら

相続財産の国庫帰属について

ウクライナ情勢が緊迫しているようです。

他方で、コロナに関するニュースの量が少なくなっているようにも感じます。

名古屋での感染者数は、一時のようなピークを越えているようですが、依然として高い水準にあるようです。

このように考えると、コロナのニュースの中で埋もれてしまったその他のニュースも多かったのではないかと感じます。

 

先日、事務所内で、相続財産管理人による不動産の国庫帰属に関する研修をしましたので、ご紹介いたします。

 

相続人が存在しない場合等には、相続財産は国庫に帰属することになります。

この手続きは、家庭裁判所から選任された弁護士等の相続財産管理人が行います。

 

国は、従来、不動産の物納を原則として認めていなかったため、相続財産に不動産がある場合、相続財産管理人は、不動産を換価したうえ、金銭で納めることを求められてきました。

しかし、平成29年6月27日付事務連絡よって、上記のような取扱いは変更され、「相続人不存在不動産については、管理又は処分をするのに不適当であっても、引継ぎを拒否することができないので、補完を依頼する内容については必要最小限のものにとどめ、相続財産管理人の協力を求めること」とされました。

そのため、処分が困難な不動産が相続財産にある場合でも、当該不動産に適切な処置をしたうえで、国に引き継ぐことができるようになりました。

 

具体的な流れとしては、担当の財務局と事前に協議し、現地調査などを行ったうで、該当の不動産の処分に関する方針を決定し、それに従って処理がされます。

現地調査についても、必ずしも実施しなくてもよいケースもありうるとされています。

 

どのような方針で不動産の処分をすることになるのかに関して、財務局では「相続人不存在による国庫帰属の手引き(令和3年6月改訂)」という書類が作成されています。

実際にどのような方針が採用されるかについては、当該不動産の状況だけでなく、相続財産の全体の内容なども影響しますから、ケースバイケースで判断すべき事例も多いようです。

 

財務局の担当者のご厚意で、上記手引きをご提供いただきました。

私の方でも、この点の勉強も進めていきたいと思います。

 

庭園の財産としての評価について

久しぶりの投稿です。

コロナの感染拡大によって、節分の行事が、名古屋でも相次いで中止や一部中止となっているようです。

行事には参加できなくとも、コロナという邪気が払われるように願っています。

私の事務所の入っている松坂屋名古屋店本館7階の催事場では、バレンタインに合わせた店舗が数多く出店しています。

さまざまなチョコレートが並んでおり、目移りするほどですが、主なお客さまは女性であるものの、チョコ好きとして便乗したいと思っています。

 

今回は、庭の財産としての評価について触れたいと思います。

 

私自身、相続についての案件を数多く手がけてきましたが、相続財産に庭が含まれており、遺産分割協議などにおいて、この評価額が争いになったというケースを経験したことがありません。

実際に、庭というのは、亡くなった方が好きで整備していただけで、(亡くなった方にとっては残念ながらかもしれませんが、)相続人は、その庭に価値を見出していないことが多いように感じます。

むしろ、立派な庭であればあるほど、その不動産を売却するために更地にする際の費用がかかってしまうという負の側面もあるように思います。

 

そのように、相続財産としてあまり価値を見出しづらい庭ではありますが、相続税の申告の際には注意が必要です。

 

相続税においては、庭は不動産の附帯設備等の一つである庭園設備として、しっかりと相続財産として扱われており、その評価方法が決まっています。

財産評価基本通達によると、庭園設備は調達価額の7割に相当する価額によって評価するとされています。

調達価額とは、「課税時期において、その財産をその財産の現況により取得する場合の価額をいう」とされていますので、現況の庭園を造成しようとすればいくらの費用がかかったかという価額を基準に、庭園設備の価値が評価されることになります。

どのようにこの価額を調べるかというと、庭園設備の取得価額であったり、造園業者の意見であったりを参考に、この価額を検討することになります。

 

実務上は、一般家庭の庭がこの課税対象となることはほとんどなく、よほど立派なものでない限り、申告の対象とはされていないようです。

では、どの程度のものであれば申告の対象とすべきかは非常に難しく、悩ましいケースもあると感じています。

 

 

 

自筆証書遺言の保管制度の利用状況について

コロナの感染者数が落ち着いてきたこともあり、私の事務所の入っている松坂屋名古屋店にも、人出が戻ってきたように感じます。

本館7階の催事場では、バウムクーヘン博覧会2021が来週8日まで開催されており、さまざまなバウムクーヘンが並んでいます。

私自身もバウムクーヘンは好物ですので、自分のお気に入りのものを探してみたいと思っています。

 

今回は、自筆証書遺言の保管制度の利用状況について触れたいと思います。

 

令和2年7月から、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が開始されました。

国民の遺言書の作成を促進したいという政策目標を達成するために導入された制度ですが、私自身も、相続に関わる弁護士として、一般の方がどの程度利用されるのか気になっていました。

法務省から、この制度の利用状況に関する資料が公表されていますので、紹介します。

 

https://www.moj.go.jp/content/001327091.pdf

 

この資料によると、令和2年7月から令和3年3月までの9か月の保管申請数は1万6721件となっています。

日本公証人連合会が公表しているデータによると、令和元年の公正証書遺言の作成件数が11万件程度でしたので、これと比べても、相当程度の利用がなされているといえます。

公正証書遺言の作成件数はこれまで増加傾向にありましたが、令和2年は9万7700件と減っていますので、公正証書の作成の代わりに自筆証書遺言の保管制度を利用した層が一定程度あったものと分析できます。

そして、遺言書が作成された件数全体については、引き続き、増加傾向にあるのだろうとうかがわれます。

 

上記の両制度にはそれぞれメリットとデメリットがありますので、どちらの利用が望ましいのかは遺言者自身の状況によります。

どちらの形式で作成するのがよいのか悩んでおられる方がいらっしゃいましたら、ご相談をいただければと思います。

遺言に関する当法人のサイトはこちら

特別送達について

私の住む名古屋でも、新型コロナウイルスの感染者数が一時に比べると減少してきました。

これを受けて、愛知県でも18日から、飲食店への時短要請を全面的に解除することになったそうです。

なぜ感染者数がこれほどまでに減少したのかは諸説があるようで、よく分かっていないようです。

引き続き、できる範囲での感染症対策をして臨んでいきたいと思います。

 

今回は、「特別送達」について触れたいと思います。

 

特別送達とは、郵便物の特別な取扱いのことで、主に裁判所から訴訟関係者に書類が送付される場合に利用されます。

裁判所からのすべての書類が対象になるわけではなく、「送達」をしなければならない書類が対象です。

なお、特別送達をする主体は、裁判所に限られるわけではなく、公証役場や特許庁であることもあります。

 

裁判所から特別送達で届いた書類がある場合には、注意しなければなりません。

 

たとえば、特別送達で届いたものが訴状である場合、訴状に書かれたことが事実ではなく、請求には理由がないものであっても、受け取ってまったく対応をしないままにしておくと、相手の請求が認められ、重大な不利益を被るおそれがあります。

特別送達で届いた書類がある場合には、必ず弁護士に相談するなどして、ご対応ください。

 

他方、裁判所からの特別送達であると偽って、詐欺などの手段として書類が送られてくることもあるようです。

真実の特別送達による書類かどうかを見極めるためには、郵便局員から受け取ったものかどうかを確認してください。

特別送達であれば、郵便局員が、直接、受領者に受取りを求めますので、このようにして届けられたものではなく、たとえば、普通郵便で送られているものであったり、ポストにそのまま投函されたりしているものは、たとえ封筒に特別送達と書かれていても、特別送達による書類ではありません。

上で述べたように、特別送達ではない方法で裁判所から書類が送られることもありますので、裁判所からの書類が届いたら、封筒や内容物に書かれた連絡先が裁判所のものであることをホームページなどで確認したうえで、裁判所に電話で確認することが確実です。

 

「特別送達」による書類が届いた場合には、十分にお気をつけいただければと思います。

 

各種証明書のコンビニ交付について

コロナウイルス対策のため、名古屋でも緊急事態宣言の発令が続いています。

私は、2回目のワクチン接種を終えましたが、自分自身だけでなく、周囲の方々の感染予防のために、引き続き、最大限の感染症対策をして臨んでいきたいと思います。

 

このブログでは、しばらくは法改正の内容に触れてきましたが、今回は「コンビニ交付」の話題をとりあげたいと思います。

 

コンビニで各種証明書を発行できるというサービスが拡がっています。

これは「コンビニ交付」などと呼ばれているサービスですが、コンビニのキオスク端末(マルチコピー機)を使って、住民票の写しや印鑑証明書などの各種証明書の発行を受けられるというものです。

コンビニの端末を利用するわけですから、役所が閉まっている時間でも利用できますし、住んでいる市町村でなくても発行が可能です。

 

利用にはマイナンバーカードを使用するようですし、発行にはパスワードの入力も必要です。

 

注意しなければならないのは、現在のところ、すべての市町村がコンビニ交付に対応しているわけではないということです。

さらに、利用できる証明書の種類も市町村によって異なるようですし、住所のある市町村と本籍地のある市町村が異なる場合には、戸籍を取るために利用登録申請をしておく必要もあるようです。

 

コンビニ交付が利用できれば非常に便利ですが、利用方法の変更や利用可能な市町村・証明書の種類の拡充は、今後も頻繁になされそうです。

相続の分野では証明書の取得は必須ですので、引き続き、このようなサービスについても調べておくようにしたいと思います。

 

 

登記官が職権で登記情報を更新する制度について

東京オリンピックも閉幕しました。

私自身、スポーツをするのも、観るのも好きなのですが、昨今のコロナ事情のもとで、どちらも十分にしづらい状況になっているなあと思います。

オリンピックが東京で開催されるということで、心に残ったシーンもたくさんありましたが、特に名古屋にいると日本で開催されたという実感があまりなかったのが実際のところです。

その間、コロナについては、デルタ株の隆盛もあって、感染が急速に広まってしまっていますし、とても憂慮すべき状況にあると思います。

私は、2回目のワクチン接種を済ませましたが、変異株への有効性は疑問視されていますし、引き続き、気を引き締めて感染対策に臨みたいと思います。

 

今回は、登記官が職権で不動産の登記情報を更新することについて、法改正の内容に触れたいと思います。

 

登記名義人が死亡しているにも関わらず、不動産の登記情報にそのまま残っていることや、住所や氏名が変更されているにも関わらず変更がされていないことが問題視されてきたことは、何度か取り上げてきたとおりです。

ここで、登記所・登記官が、登記名義人の死亡や住所や氏名の変更の事実を把握したときには、その内容を登記に反映されるという仕組みができた場合には、このような状態の解消につながりそうです。

 

改正不動産登記法では、登記官は、登記名義人が権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合には、職権で、その旨を示す符号を表示することができることになりました。

「権利能力を有しないこととなったと認めるべき場合」というのは、少し難しい言い方がされていますが、死亡のほかに、災害などによって亡くなったと扱われる認定死亡や、普通は存命ではないだろうという年齢になっている高齢者消除などが想定されています。

 

住所についても、登記官は、名義人の住所などに変更があったと認める場合には、職権で、変更の登記をすることができるようになりました。

ただし、登記名義人が自然人であるときには、申出があった場合に限られています。

DVやストーカーの被害者など、最新の住所を公示することに問題のある場合があるため、このような扱いとなっています。

 

ネックとなるのは、登記官がこのような情報をどうやって取得、収集するのかということです。

死亡等の情報については、登記所が住基ネット等にアクセスすることで得られそうです。

しかし、現在の登記情報には名義人の氏名と住所しか記載されておらず、その情報のみで個人を特定するということは困難だと考えられます。

そこで、登記の名義人の情報と、住基ネットの情報を連携させるため、新たに所有権の登記名義人となる場合、登記の申請の際に、生年月日等の検索用情報を提供しなければならないこととなりました。

ただし、このような検索用情報は登記情報として公示されるわけではなく、あくまで登記所内部のデータとして取り扱われることになっています。

 

これらの情報の紐づけのために、登記所が保有する情報と、住基ネットワークの情報との定期的な照会と照合がされることが想定されています。

今後、検索情報として、生年月日のほかに、たとえば、マイナンバー等のどのような情報の提供が要求されるのかも確認していく必要があるでしょう。

弁護士の立場からすると、利便性が向上する一方で、登記申請にあたっての負担やリスクが増大しないように注意していただきたいと考えています。

 

所在等が不明な共有者から持分を取得する制度について

東京オリンピックの開幕が間近になってきました。

現在のコロナ情勢の中で、無観客での開催方法や、そもそも開催することの適否など、賛否に関するみなさまのご意見はそれぞれでしょう。

無観客での開催となると、オリンピックを通じて見込んでいたさまざまな効果は喪われることになってしまいますし、多くの労力が結果につながらなかったことは非常に残念に思います。

とはいえ、実際に開催するのであれば、選手の方々にはスポーツの素晴らしさを純粋に伝えてほしいと思いますし、大会を支える関係者を名古屋の地から応援したいと思います。

 

今回は、民法改正で導入される所在等が不明な共有者から共有持分を取得する制度について触れたいと思います。

 

前回は、所有者不明土地の解消のために制定された相続財産国庫帰属法について取り上げましたが、この制度も同じ目的で制定されたものです。

 

不動産の中に、所在等が不明な共有者(「他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない共有者」)がいる場合に、共有者は当該共有者の持分を有償で引き取ることができるようになりました。

適用可能な場面としては、相続財産国庫帰属法のように相続等によって取得された不動産に限られず、通常の共有状態であれば利用することができます。

 

所在等が不明であるというためは、不動産登記の内容や住民票などを調査することで、所在などを調査しても不明であることが必要です。

このような調査を尽くしても所在等が不明であることが裁判所に認められれば、そのような共有者から共有持分を取得することができます。

 

その後、裁判所は、申立てをした共有者に対して、当該持分に応じた供託金を納めることを命じます。

これは、所在等不明共有者からの時価相当額請求権に基づく支払いの担保とするためです。

この供託がなされれば、当該持分は申立てをした共有者に移り、他方、所在等不明共有者は申立てをした共有者に対して時価相当額請求権を取得することになります。

 

注意しなければならないのは、供託を命じられた供託金額が、必ずしも時価相当額請求権の価額と一致するわけではないということです。

当事者間でこの価額が争われた場合には、最終的には裁判所での訴訟で決することになります。

 

この制度がどの程度利用しやすいものとなるかは、所在等の不明に関する裁判所の判断や、供託金の算定に関する裁判所の運用によるでしょう。

不動産の権利関係の整理に対するニーズは高いものと思われますので、弁護士として制度開始後の運用に注目していきたいと思います。

 

 

相続財産国庫帰属法の利用可能性について

私の住んでいる愛知県でも、暑さがだんだんと増してきました。

日中、外に出る際には、暑さや日差しへの対策をしていきたいと思います。

 

今回は、新たに成立した相続財産国庫帰属法(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律。法務省のリンクはこちら)について取り上げたいと思います。

この法律も所有者不明土地の解消のために設けられた関連法の一部です。

 

相続においては、相続財産の一部のみを相続人の誰も相続しないという選択をすることができませんので、誰もが取得を希望しない不動産が出てしまう場合があります。

そして、そのような不動産を取得した相続人が、引取手を探しても見つからないというケースがしばしばあります。

 

このような場合の選択肢の一つとして、相続人が不動産を国に引き取ってもらうことができる制度ができました。

 

ただし、どのような不動産であっても国が引き取ってくれるわけではありません。

 

たとえば、「建物の存在する土地」は対象外となっていますので、そもそも建物は法律の対象外であるだけでなく、土地上に建物が存在すらしてはいけません。

その他に、土壌汚染がされている土地や、境界が明らかでない等の土地も対象外とされています。

 

これに該当しない土地である場合には、国は対象の土地の事実調査を実施して、管理を阻害する工作物や車両の有無などを調べたうえで、「通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地」として定められたものなどに該当しないと認められれば、国に引き取りを承認してもらうことができます。

 

ただし、実際に国に引き取ってもらうためには、管理に要する十年分の標準的な費用の額を考慮して定められた負担金を納付する必要があります。

この納付金を納めなかった場合には、引き取ってもらうことができません。

 

今後、この制度がどの程度利用されることになるのかは、どのような運用の基準となるのかや、負担金の額がどのように定められるかによります。

私が弁護士としてこれまでに関わってきた依頼者さまの中でも、上記のような不動産を相続された方がいらっしゃいますので、制度を利用することにメリットがあるかどうかを慎重に検討して、ご利用を提案したいと考えています。

 

所有者不明土地問題の関連法の成立について

私の住んでいる愛知県でも、再度の緊急事態宣言が発出されました。

5月12日から5月31までの20日間が対象であるとのことです。

自分自身だけでなく、身近な大切な方をまもるためにも、個々人が自覚をもって行動していくべきだと思います。

 

以前のブログで触れてきた、所有者不明土地の問題に関する不動産関係の民法や不動産登記法の法改正、相続土地国家帰属法が、令和3年4月21日の参院本会議で可決され、成立しました。

法の公布日は4月28日であり、原則として、2年以内の政令で定める日に施行される予定です。

(法務省のリンクはこちら

 

今回は、世間でもっとも注目を集めている「不動産登記の義務化」について触れたいと思います。

 

不動産の登記については、登記権利者の権利であって義務ではないと考えられてきました。

つまり、自らが不動産を所有しているのであれば、その不動産が自らのものであることの証明として登記をしておくのは、原則として、その者の権利ではあるけれども義務ではないと考えられてきたのです。

 

しかし、所有者が不明な土地が社会問題として深刻化してきた昨今、これが見直されることになりました。

今回の法改正では、相続登記と住所・氏名変更登記については、法的な義務とされることになったのです。

 

具体的には、相続登記については、不動産を取得した相続人に対して、その取得を知った日(「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日」)から3年以内に相続登記をすることが義務付けられました(改正不動産登記法76条の2第1項)。

そして、この登記義務を怠った場合には、正当な理由がない限り、10万円の過料の制裁を受けることになりました。

 

住所・氏名変更登記については、氏名や住所について変更があったときは、変更があった日から2年以内に変更の登記を申請することが義務付けられました(改正不動産登記法76条の5)。

そして、この場合においても、登記義務を怠ったときには、正当な理由がない限り、5万円の過料の制裁を受けることになりました。

 

これらの施行については、他の規定と異なって、相続登記については公布後3年以内の施行、住所氏名変更登記については公布後5年以内の施行と、より長期の猶予が与えられています。

この間に社会的な周知を広めて、適正な対応をしていくことが求められます。

 

私も、弁護士としての職務を通じて、みなさまが適正に上記の義務を果たしていかれるように気を付けていきたいと思います。

 

所有不動産記録証明制度(仮称)について

私の住んでいる愛知県では、お昼間は暖かくなり、すっかり春となった印象です。
今年はゆっくり桜を観ることもできず、もう少し余裕を持ちたいところではありますが、必要なことをしっかりと対応していけるように頑張りたいと思います。

前回のブログで触れたとおり、今回も、所有者不明土地の問題に関する不動産関係の民法や不動産登記法の法改正について取り上げることにします。

今回は、「所有不動産記録証明制度(仮称)の創設」について取り上げたいと思います。

現在の提案内容の一部を紹介すると、「① 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。後記②において同じ。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下「所有不動産記録証明書(仮称)」という。)の交付を請求することができる。」とされています。

不動産の登記記録には、所有者の住所や氏名が記載されています。
不動産の登記内容はすでにデータ化されていますが、その方がどのような不動産を所有しているかを、住所や氏名から検索する公的な方法はありませんでした。

たとえば、相続の案件の場合には、自治体から届く固定資産税の通知書を確認したり、自治体に名寄帳(自治体によって名称は異なりますし、取得できる書類の内容も異なります)を申請したりすることで、被相続人の不動産の内容を調査しています。
この調査方法には、不動産が所在する自治体が分からなければならないため、調査の網羅性には限界があります。

所有不動産記録証明制度が整備され、この証明情報の申請者に相続人も含められた場合には、被相続人の所有する全国の不動産を調査することが可能になるといえそうです。
そうすれば不動産の相続手続き漏れを防ぐための有効な手段になります。

ただ、この調査方法の網羅性にも限界があるとはいえそうです。
この方法で検索をかける場合には、おそらく、住所や氏名の全面一致がある場合に限られると考えられますが、不動産については住所の変更があった場合にも変更の登記がされていない場合がしばしばみられるため、このような場合には検索にかからないと考えられます。
このような場合に備えて、過去の住所も含めて検索を実施するも必要になりそうです。

(さらに進んで、過去に被相続人が所有していた不動産についても検索ができれば、相続案件を扱う弁護士の立場としては助かる面があるのですが、現在はそのような話では進んでいないようです。)

このように、所有不動産記録証明制度が整備できれば非常に有効な財産調査のツールになると考えられますが、不動産登記に関する膨大なデータを検索可能になるシステムを構築できるまでには、どの程度の準備期間が必要になるのかについての心配もあります。
この点については、民事執行法の分野で、強制執行の実効性を高めるため不動産に関する情報取得手続きの制度が整備されることになっているため、担当部局で、すでにある程度の検討やシステム構築作業は進んでいるのではないかと思っています。

効率的で実効的な相続手続きができるように、より制度の充実を進めていただきたいと考えています。

他方で、まったく違った視点ですが、このような制度ができた場合の濫用の危険に対する懸念はありうるでしょう。
たとえば、上記の所有不動産記録証明書の申請者が非常に広く認められた場合、これを営業目的の情報として商業的に利用されるおそれがないともいえません。
他方で、破産管財事件での破産管財人には、破産者の財産内容の把握のために、所有不動産記録証明書の申請権を認めることに合理的な理由があるともいえそうですし、公的な必要性との考量が必要な分野はあると思います。

なかなか難しい問題もあるところですが、おおまかな方向性として、このシステムが導入されることには大きなメリットがあると評価しています。

法制審議会のページのリンクはこちらです。
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00302.html

不動産についての法改正

私の住んでいる愛知県での緊急事態宣言は、先月28日に解除されました。

所属事務所のある名古屋市栄地区の人出は、これによってただちに変わったとの印象はありません。

ワクチンの接種が進むまでは、引き続き、感染対策と警戒が必要だと思います。

 

コロナの影響で、コロナ対策と関わりのない法律の整備もかなり遅れたところがあるようです。

私の業務分野に深く関わるところとして、不動産関係の民法や不動産登記法の法改正が、平成31年から法制審議会で取り扱われていたのですが、先月10日に、法制審議会から法務大臣への答申がなされるところまでやっと進みました。

 

今回の法整備は、社会問題となっている所有者不明土地の問題に対処するためになされるものです。

この問題の現状を少し紹介しますと、平成28年度地積調査で土地所有者に関して調査したところ、不動産登記簿のみでは所有者の所在が確認できなかった土地の割合が、全体の約20.1%にのぼったようです。

土地の所有者が分からなければ、土地を管理する場合や、さまざまな目的で土地を利活用しようとした場合に問題が生じかねません。

所有者が不明となってしまっている原因としては、相続登記がなされていないものが約66.7%、住所変更登記がなされていないものが約32.4%であるとのことです。

 

このような現状に対処するため、さまざまなアプローチで解決策が提案されており、その中には実務的に重要なものが多く含まれています。

 

報道では、相続登記が義務化され、その違反については行政罰が規定されることになる点が強調されています。

この施策は、相続登記を義務化することで、相続登記がされないまま所有者が不明となっている事態を予防するとの観点から、導入されようとしています。

今後、どのような場合に、この行政罰が適用されるのかについても、細かく検討していく必要があります。

 

そのほかにも、さまざまな制度が整備されることになっていますので、土地の管理や相続の手続きがより円滑に進められる手段が増えることにはなっています。

他方で、これらの制度を利用することにはさまざまな制限があり、制度利用の限界や、費用の問題、本来の権利者に対するリスクの問題もあります。

 

今後のブログでは、しばらく、これらの点についてとりあげていきたいと思います。

 

法制審議会のページのリンクはこちらです。

 

 

コロナ禍と経路依存性からの脱却

コロナの影響で、愛知県でも緊急事態宣言の発出が続いています。

私の事務所がある名古屋市栄地区でも、人出は以前に比べると減っていますし、特に夜間の繁華街の人出は減っていると感じます。

飲食店などの店舗も、そのほとんどが午後8時には閉店していますし、廃業をされたお店も目立つため、飲食業を営まれている方には厳しいご状況であると察することができます。

テイクアウトへの対応が充実しているお店も増えていますし、今はしっかりと対策をして、厳しい時期を乗り切っていければと思います。

 

このような状況は、当然、社会や組織にとっての危機にあたるのですが、この状況に直面したことをきっかけに、社会や組織のルールを変えていく好機であるともいえます。

どういうことかを説明しますと、社会や組織には経路依存性というのがあります。

経路依存性とは、英語のpath dependenceの訳語であるため即座に意味を理解するのが難しい言葉ですし、厳密には様々な用法があるのですが、ここで問題になっていることを簡単に言うと、「これまでのやり方に縛られる」というものです。

 

たとえば、キーボードの配列もこの例にあたると考えられます。

 

現在、一般的にはQWERTYの配列になっているキーボードが使用されていますが、この配列は入力の効率性を考えて配置されているとはいえません。

このキーボード配列になったのは、タイプライターが開発された時期からであり、当時は早くタイピングしすぎると機械がうまくタイピングできないため、あえてタイピングをしにくくしていたとう説があります。

タイピングの効率性などを重視したキーボードも存在し、そちらを利用した方が早くタイピングができることが分かっていますが、これが広まっているとはいえません。

 

普通に考えると、現在、タイピングを早く打ちすぎると機械が対応できないという事情は無くなったため、当時のキーボード配列を続ける理由はなく、よりタイピングのしやすさを重視したキーボード配列に変えるべきだといえそうです。

しかし、すでに非常に多くの人が現在のキーボード配列に慣れてしまっており、このキーボードも広く流通しているため、これを変更するためにはコストが生じるといえます。

そのため、変化を取り入れる際のコストも計算して、現在の方法を続けることが経済的にも合理的だと考えられる場合もあるわけです。

これに加えて、人が変化を恐れるという心理的な要素もあるでしょう。

 

現在のようなコロナの危機に直面したときには、当然、以前とは周囲の状況が大きく異なるわけですし、人の心理的にも「なんとかしなければ」という気持ちが生じやすいといえます。

そのため、コロナの状況への対応をすべきであるのはもちろん、これまでも変化をさせるべきことが認識されていながら上記の経路依存性の問題から対応ができていなかった事項についても、社会や組織が対応できる好機であると考えられます。

 

弁護士業務においても、このような事項は多くあるように感じますし、個人のレベルでもこのことは言えるかと思います。

私自身、このような観点から、これまでの業務や自らの行動についても考えていきたいと思います。

 

また、当法人の代表社員である西尾有司が、YouTubeでの動画配信を始めました。

よろしければご視聴ください。

みなさまにとって、有益な気づきがございましたら幸いです。

 

リンクはこちらです。

https://www.youtube.com/watch?v=SrsEcalLXQU

 

 

税務と法務の勉強

明けましておめでとうございます。

昨年は、多くの方に大変お世話になりました。

コロナの中で、気軽にお会いできない方も多かったのですが、リモートなどを利用して、逆に、普段はお会いすることができなかった遠方の方とも久しぶりにお話ができるきっかけができたのは、よかったと思います。

名古屋でもまだまだコロナの影響は続いておりますが、対策をしっかりして頑張っていきたいと思います。

本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

 

昨年、名古屋税理士会で税理士登録したことがきっかけで、税務に関する勉強をする機会も増えてきました。

弁護士業務をするうえでも、依頼者に選択肢を提示するときのメリット・デメリットをアドバイスする際、税務の知識は欠かせないものだと感じていました。

ただ、実際に税務分野についてのアドバイスをするうえでは、より細かな運用を確認しないと、そもそも適用があるのかないのか、適用された場合にどのような結果がとなるのかについて、確定的な見解をお伝えすることが困難な場合も多くありました。

このような点について、より多くの勉強をすることで、依頼者により精度の高いアドバイスをできるようになりたいと思っています。

 

ただ、実際に勉強を進めていて分かってきたのは、「想像よりもより奥が深い」ということでした。

たとえば、一つの制度を利用した場合に、その制度を利用したことで特定の税についての納付額は下がるのですが、他の税務や社会保険料に対しての影響が及ぶため、全体としてはマイナスになるということが起こる場合があります。

このような視点も持っていなければ精確なアドバイスはできませんから、そこまでのアドバイスをすることの難しさを痛感するところでもあります。

 

このようなことを踏まえると、一つの業務をするうえで、関係する分野での幅広い知識を持っていることは、非常な強みになるということにも気付かされます。

もちろん、これが強みになるのは、それを達成することが容易ではないからであって、知識は正確であることが必要ですし、税務の分野での目まぐるしい改正内容にも対応していく必要があり、これが容易なことではないということは自明だろうと思います。

 

今年一年は、税務についての勉強も進めることを自らの課題の一つにしていきたいと思います。

 

コロナ禍の一年

今年も残すところわずかとなりました。

毎年、この時期には一年を振り返ってみて、自分ができたことと、できなかったことを見返すようにしています。

このとき、私は、はじめは、いつも自分がやり残したことばかりに目が行きがちです。

ただ、日々の行動内容を細かく手帳に付けるようにいますので、これを見返してみると、今年自分がやってきた行動内容が意外に多かったことにも気付くことができます。

他方で、一日の振り返りを記入している欄を見ると、だいたい同じような内容が記載されてもおり、まだまだ成長が足りないなと感じてもいます。

 

今年は、何といっても、コロナの一年であったと思います。

緊急事態宣言が出されている間、裁判所での裁判手続きもほぼストップしてしまい、事件を進めることができないということがありました。

一日も早い事件の解決を望む依頼者にとって、事件が遅れることはそれだけストレスのかかる時期が伸びるということですから、弁護士としても忸怩たるものがありました。

他方で、裁判所でもあまり進んでいなかったウェブを使ったウェブ期日が積極的に利用されるようにもなり、そうでなくとも電話での期日への参加が認められやすくなりました。

社会情勢の変化が社会を進化させるきっかけとなってきたことは歴史的にも多くみられるところですし、このような社会の変化は、おそらく今後の社会が進むであろうと予想されていた方向とも一致しますので、コロナ禍がこれを後押ししたのだといえるのでしょう。

個人的にも、初めは鬱陶しかったマスクの着用や、手荒れが気になっていたアルコールでの手指消毒も、今ではストレスなく自然にしていますし、人間の環境への適応力というのも感じるところではあります。

 

みなさまにとって、今年一年を振り返ってどのような年だったでしょうか。

大変なことがなかったという方はほとんどいらっしゃらないでしょうが、特別な年に対してはそれぞれの感じ方があるのだろうと拝察します。

 

ここ名古屋でも、コロナが終息するどころか、より猛威を振るっているようです。

一人ひとりがやるべきことを当然のようにできるようになり、新しい年がコロナを克服できた年になることを願っています。