相続放棄の起算点

今年の大型連休も終わりました。

天候にも恵まれたと思いますが、名古屋でもかなりの人出があったと思います。

気温も徐々に上がってきて、過ごしやすい日が続いていますね。

 

今回は、「相続放棄の起算点」について、取り上げたいと思います。

 

民法915条では、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」に相続放棄をしなければならないとされています。

ですので、相続放棄の期間の起算点は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」ということになります。

 

そのため、よく誤解をされているのですが、「相続の開始日(亡くなった日)」が必ずしも起算点になるわけではありません。

亡くなった当日に相続の開始を知ることが多いでしょうが、後日、相続の開始を知った時にはその日が起算点になります。

 

ほかに誤解が多いのが後順位の相続人の相続放棄の起算点です。

相続人には優先順位があり、子どもがいなければ親が、親もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。

相続放棄をすると、その方は初めから相続人ではなかったことになりますので、たとえば、子ども全員が相続放棄をすれば親が相続人に、親も相続放棄をしたり、そもそも初めから先に亡くなっていたりすれば、兄弟姉妹が相続人になります。

 

そうした場合には、相続放棄の起算点は、その方が、先順位の相続人が相続放棄をしたことを知ったときとなります。

法律の条文上は「相続の開始があったことを知った時」となっていますので、亡くなったことを知った日だと思われている方がいらっしゃるので、注意されてください。

 

相続放棄は、期限を守ることが非常に重要です。

確実に相続放棄の手続きができるように注意をされてください。

 

外国人の生活保護について

台湾で大きな地震が起き、多くの被害が発生しているようです。

台湾は、地震が少なくはない地域のようで、わが国に地震があった際にも、積極的に支援を申し出てくれます。

被害を受けた方々にお見舞い申し上げるとともに、一刻も早い復興を祈りたいと思います。

 

今回は、「外国人の生活保護」について、取り上げたいと思います。

 

報道によると、今年の1月16日、千葉地裁で「外国人に生活保護法に基づく受給権はない」などとして、結論としては、ガーナ国籍の方に生保保護費の支給を認めなかった判決があったようです。

 

前提となっている状況を整理しましょう。

生活保護法では、「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護を、無差別平等に受けることができる」とされています。

最高裁は、2014年に「外国人は生活保護法に基づく受給権を有しないというべき」と判断しています。

ただし、国から1954年に発出された通達に基づいて、一定の外国人には生活保護がなされており、2018年の政府答弁でも、「一定の外国人には、その生活が困窮する場合、人道上の観点から、生活保護による保護に準じた保護が行われている」とされています。

このような状況のもと、生活保護の支給を拒否された外国人が司法的救済を求めたところ、上記のとおりの判決がなされました。

 

以上からすると、現状、外国人に対しては、行政の通達によって保護がなされているものの、仮に、自治体が保護を実施しなかったとしても、司法によってそれが救済される方途がないといえそうです。

とすると、仮に、一定の自治体が外国人への保護を一切実施しなくなったときにも、これが是正される手段がないことになり、これは平等の観点から問題があるように思われます。

 

生活保護に対しては、しばしば社会から厳しい目が向けられることがあります。

私が住む名古屋でも多くの外国籍の方が居住されており、今後、それらの方々との社会をどのように形成していくのかをしっかりと考えなければなりません。

少なくとも、現在の制度の在り方には問題があるように思われますので、あるべき制度を議論していかなければならないだろうと思います。

相続土地国家帰属制度の利用状況について

名古屋でも、街中の街路樹に花が咲いている様子もよく見かけるようになりました。

桜の開花予想日も迫ってきており、春の訪れを感じるところです。

 

今回は、「相続土地国家帰属制度の利用状況」について、取り上げたいと思います。

 

相続によって取得した土地を国に引き取ってもらう制度である「相続土地国家帰属制度」が、令和5年4月27日から施行されています。

愛知県弁護士会と東海財務局との間で意見交換会があり、会報でその内容が報告され、その中に相続土地国家帰属制度に関する内容も含まれていました。

報告によると、令和5年8月31日時点では、全国で885件の申請がなされたとのことでした。

愛知県内では、そのうち約20件の申請がされたとのことです。

 

東海財務局管内でも、すでに数件は法務局に承認され、財産の管理が行われているようです。

相続人不存在等の場合と比べると、比較的管理しやすい物件が多い印象だということで、これは対象の不動産に制限があることが影響しているのかもしれません。

 

相続土地国家帰属制度は、制度の利用がかなり難しいのではないかという前評判もありましたが、ある程度は利用されているようですし、実績もあるようです。

私自身は、弁護士として相続土地国家帰属制度を利用したことはないですが、相続財産の中に引き継ぎたくない財産が含まれていることについての相談を受ける機会はしばしばあります。

制度の利用が必要なときに、適切にアドバイスができるように、最新の情報を含めて、情報収集を進めておきたいと思います。

相続空き家特例の改正について

名古屋でもまだまだ寒い日が続いています。

令和6年も、あっという間に1か月が過ぎたわけですが、今年1年もしっかりと目標を見据えて、日々の業務にあたっていきたいと思います。

 

今回は、「相続空き家特例」について、取り上げたいと思います。

 

「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が、令和5年度の税制改正で、適用の期限が令和9年12月31日まで延長されました。

この特例は、被相続人が居住していた家屋が、被相続人の死亡により空き家になったとき、これを相続や遺贈で取得した者が、これを売却する際に譲渡所得税の控除を受けられる制度です。

この制度の目的は、社会的な問題となっている空き家の増加を抑制することにあります。

最大で3000万円までの控除を受けられますので、特に、相続によって取得した財産であるため、取得費が不明か、非常に低廉な額である場合には、とても有用な制度になります。

 

令和6年1月1日以降の譲渡について、内容が変更された点もあります。

一つは、家屋を含む譲渡のとき、耐震リフォームの要件が緩和されました。

従来は、「譲渡日まで」に、家屋が耐震基準に適合している必要があったのですが、「翌年の2月15日まで」に、この基準を満たせばよいことになりました。

もう一つは、敷地のみを譲渡するとき、従来は、「譲渡日まで」に、家屋を除去する必要があったのですが、こちらも、「翌年の2月15日まで」に、家屋の除去をすればよいことになりました。

これによって、業者などの買主がリフォームや除去をすることでもよいことになりますので、制度がより利用しやすくなります。

 

控除額の上限に制限が加えられることにもなりました。

従来は、財産を取得した者が複数であった場合、それぞれについて3000万円までの控除が認められていました。

今回の改正後は、財産を取得した者が3人以上である場合、その控除額は2000万円までとされることになりました。

 

税制については、頻繁に変更されるところでもありますので、変更内容については、しっかりと確認されるようにしてください。

 

戸籍謄本等の広域交付制度

令和6年を迎えました。

新年を迎えてすぐに大きな災害や事故が起きたようです。

被災者や被害者の方々にはお見舞いを申し上げるとともに、自分が無事に新年を迎えられたことをありがたくも感じました。

今年も、自分ができることとやりたいことを明確にしたうえで、少しでも自分ができることを増やしていきたいと思います。

 

今回は、令和6年3月1日から始められる「戸籍謄本等の広域交付制度」について、取り上げたいと思います。

 

相続手続においては、相続関係を証明する書類として戸籍の証明書が必要です。

戸籍は本籍地のある市町村で管理されているため、その証明書を発行してもらうためには、当該市町村に申請する必要があります。

 

本籍地は転居等に伴って変更する必要がありませんから、場合によっては、申請先の市町村は遠方であることもあるでしょう。

そのような場合には、役所の窓口まで行くことは負担となるため、郵送で取得するという方法を採ることが一般的でした。

そこで今回の広域交付制度が導入されることで、近くの市町村の窓口で請求をすることができるようになりました。

 

さらに便利になることがあります。

相続手続きでは、「被相続人の出生から死亡までの戸籍」といったように複数の戸籍が必要になることがあり、それらが同一の市町村にあるとは限りません。

そのように、取得が必要な戸籍が全国の複数の市町村にあった場合にも、一つの市町村の窓口で申請することで、それらすべての戸籍を請求することが可能になります。

 

ただし、この制度を利用するにあたって、以下のような制限もあります。

・ 戸籍の申請者は、対象となる方から見て、本人、配偶者、直系の尊属と卑属のみで、兄弟姉妹は申請することができません。

・ 少なくとも、どこかの市町村の窓口での申請が必須で、郵送による取得はできませんし、本人が窓口に行く必要があって、代理人による申請も認められていません。

・ いわゆる戸籍謄本の取得ができるだけで、一部事項証明や個人事項証明は取得できません

・ 弁護士や司法書士などの専門家は、この制度は利用できません。

 

このように限定的な利用に留まっている点については、さまざまな理由があるものと考えられます、

これらの制度は、法務省で戸籍情報を連携するシステムを構築したうえで実施されるようですが、であれば、今後の運用や改善によってより利用しやすいシステムを構築することもできるのだろうと思いますし、国としても、他の利用目的も想定しているのだろうと思われます。

 

いずれにしろ、市民にとって利便性が高まることはよいことだろうと思いますので、今後は、これらの制度もうまく利用していきたいと思います。

『実務解説 サイバーセキュリティ法』について

今年も、あとわずかとなりました。
例年、「年内にもめごとを解決させて、新しい年をすっきりした気持ちで迎えたい」というお気持ちを持たれる方も多く、年末は特に忙しくなる時期でもあります。
今年の残りの時間を有効に使って、引き続き、業務を集中して進めていきたいと思います。

今回は、八雲法律事務所さまから発刊される『実務解説 サイバーセキュリティ法』という書籍について、取り上げたいと思います。

サイバーセキュリティという言葉自体は、ニュースでも日常的に取り上げられていますし、もはや説明が必要ないほどに一般的なものになっているでしょう。
今やインターネットに接続することなく事業を営んでいるという企業や自営業者はほとんどないでしょうし、事業で内外部の重要な情報を情報媒体で取り扱っていないということもほぼないでしょう。
その意味では社会経済活動をするうえで、サイバーセキュリティとは関係がないという方はほとんどいらっしゃらないでしょう。
 いざインシデントが発生してしまった場合には、企業は多大な経済的損害を被ることになりますし、十分な対策を怠っていれば、社会的な非難の対象にもなるでしょう。
 私が所属する組織でも、サイバーセキュリティが頻繁に会議の議題とされていますし、組織的な体制の構築と職員へのリテラシーの向上を図っています。

本書は、サイバーセキュリティに関連した法律業務分野の実務について解説した書籍です。
「サイバーセキュリティ法」では、民法、商法、行政法、刑法などの多分野の法律が関係しています。
私の認識では、独立の講学上の学問領域というよりも、実務上の領域であると認識しています。
この領域が法律以外の技術的な専門的知識を要求されること、これまでに弁護士が扱ってきた業務分野とは異なること、他方で、多数の関係法令が存在することが、この分野を専門的に扱う必要性を生じさせていると思います。
このような実務分野が存在するのは、やはりその対象の専門的な性格にあると考えられますし、一般的な弁護士が扱うことは難しい分野だと思います。

八雲法律事務所さまは、サイバーセキュリティ分野を専門的に取り扱っておられ、本書では、これに関する問題点について、とても理解しやすく解説されています。

この分野において弁護士業界に対する社会的なニーズは高まっており、より多くの弁護士がこれに応えられるよう、本書が資することは確実だろうと思います。

特別寄与料についての最高裁決定の紹介

インフルエンザが流行しているようです。

本格的に流行する時期はもう少し後なのだと思っていましたが、私の周りの名古屋の方でも、年齢を問わず、早くも流行しているという話を聞きます。

一度、罹患してしまうと生活に影響してしまいますので、私もワクチンを接種しておきました。

みなさまも、コロナに加えて、インフルエンザについても警戒していただければと思います。

 

今回は、特別寄与料に関する最高裁判所決定(令和5年10月26日第一小法廷決定)について説明することにします。

 

特別寄与料とは、被相続人に対して療養看護等の特別の寄与をした相続人以外の者に金銭的な権利を認める制度です。

特別寄与料は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定められることになっています。

相続人が複数いる場合には、各相続人が法定相続分または指定相続分に応じて特別寄与料を負担することになっています。

 

本件で問題となったのは、「遺言書によって指定相続分がないとされていたものの、遺留分侵害額請求をしたことで財産の給付を受けた者が特別寄与料の負担を受けることになるかどうか」という点です。

 

この点について、原審は、「遺言により相続分がないものと指定された相続人は特別寄与料を負担せず、このことは当該相続人が遺留分侵害額請求権を行使したとしても左右されない」と判断し、最高裁判所もこれを支持しました。

 

上記の点については、立法過程でもある程度の議論がされていました。

一つの考え方として、特別寄与料は「具体的相続分」に従って負担するという考え方がありますが、このように考えるのは以下の点で合理性がないとされました。

特別受益については、特別受益がある相続人と特別受益がない相続人との間の最終的な取得額ができるだけ平等になるように調整されたものであるにも関わらず、特別寄与料においては、特別受益がないまたは少ない相続人の負担を増加させることは相当ではないとされました。

寄与分についても、被相続人の財産の維持または増加に貢献があった相続人について、それが認められたために特別寄与料の負担が増加するということも合理性に欠けるとされました。

さらに、上記のような特別受益や寄与分が確定しない限り各相続人が負担すべき特別寄与料が確定しないとなると、紛争が複雑化・長期化することが懸念されたという事情もありました。

 

上記最高裁決定においても、特別寄与料の負担について、「相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分等によることとしたもの」と解釈され、このような理解を前提として、遺留分侵害額請求をしたからといって負担割合が変化することはないという結論に達しました。

 

この判決については、関連して考えなければならない事項もありますので、後日、取り上げたいと思います。

相続登記の申請義務化の運用について

今年の残暑も厳しく、いつになったら涼しくなるのかと思っていましたが、名古屋でもやっと涼しくなってきましたし、朝晩の冷え込みが進んだように感じます。

一気に気温が低下したように感じますので、体調を崩さないように気を付けていきたいと思います。

 

今回は、相続登記の申請義務化の運用について説明することにします。

 

相続登記の申請が義務化されるということはすでに決まっておりましたし、私の弁護士ブログでも触れたことがあると思います。

このたび、その具体的な運用に関する指針が出されていますので、それを紹介しようと思います。

 

登記官は、申請義務があるにも関わらず、申請義務を果たしていない者を職務上知ったときは、違反者に対して、相当の期間を定めて申請をすべき旨を催告することになっています。

登記官が、申請の催告をしたにも関わらず申請がされないときに限り、管轄地方裁判所にその事件を通知するということになっています。

 

この申請の催告における催告書には、「登記の申請をすべき不動産」や「登記の申請をすべき期限」などが記載されています。

登記の申請をしないことにつき「正当な理由」がある場合には、これを記載して登記所に返送することができるようにもなっています。

よって、申請義務があるにも関わらず違反をしていたとしても、急に過料を課されてしまうということはないのでしょう。

 

登記官が申請の催告を行う端緒として、遺言書や遺産分割協議書で、申請の対象となった不動産以外にも、その相続人が相続することになっている不動産がある場合が挙げられています。

そのため、これらの不動産がある場合には、特に注意が必要です。

 

上記の「正当な理由」が認められるケースについても触れられています。

具体的には、相続人が極めて多く、相続人の把握に時間がかかっている場合や、遺言の有効性や遺産の範囲などが相続人等の間で争われている場合、申請義務者に重病その他の事情がある場合などがあるそうです

 

難しいケースは多いので、今後の施行にむけて注意していきたいと思います。

 

相続の準拠法について

先日、にっぽんど真ん中祭りが名古屋市各地で開かれました。

私の事務所のある松坂屋名古屋店の道向かいの久屋大通公園がメイン会場となっており、3日間にわたって開催されました。

メイン会場でのパフォーマンスはYouTubeでのライブ配信もされており、仕事のあった私は、すぐ近くの事務所からオンライン観覧していました。

多数の団体が出場しており、白熱した演技を観ることができました。

予選ではそれぞれの団体の特性を発揮した演技も楽しむことができましたし、ファイナルステージに進出した団体には非常にレベル高い演技を観せていただきました。

楽曲、衣装、パフォーマンス内容など、コンテストとはいえ、これ以上はないのではないかという程の甲乙つけ難い演技を観ることができました。

しっかりと観覧したのは初めてでしたので、非常に感動しましたし、いつか実際に観覧をしたいと思いました。

イベントの運営は学生の方々が携われていたようであり、その点でもとても素晴らしいと感じました。

出場された各団体も、イベント自体もさらに成長していっていただき、多くの観客を感動させていただきたいと思います。

 

今回は、相続における準拠法について説明することにします。

 

準拠法とは、どの国の法律が適用されるかに関するものです。

日本法では、相続は、法の適用に関する通則法という法律で、被相続人の本国法によるとされています。

本国法とは、その方が有している国籍の国の法のことをいいます。

そのため、亡くなった方が外国籍の場合には、その国の法律が適用されることになります。

 

そのような場合には、その国の相続に関する法律がどのような内容になっているかを確認しなければなりません。

場合によっては、相続人の範囲も異なりますし、法定相続分も異なることがあります。

 

被相続人が外国籍であっても、日本法が適用される場合があります。

たとえば、当該外国法で、被相続人の住所が日本にあり、相続財産も日本にある場合には、日本法が適用されるとされていることもあり、その場合には、外国法が適用された結果、日本法が適用されるということになります。

 

被相続人が外国籍の場合には、相続手続きだけでなく、遺言書の作成方法などにも注意しなければなりません。

相続財産の分離について

台風6号が日本に大きな被害を与えましたが、その経路を予想することは専門家にとっても難しかったそうです。

気象に関する研究はかなり進んできたのでしょうが、まだまだ天候を正確に予知することは難しいのでしょう。

新たな台風も日本に迫っているようであり、名古屋の方もその他の地域の方も、最新の情報を確認しつつ、それぞれに対策をしておくことが重要でしょう。

 

今回は、相続における「財産分離」という制度について説明することにします。

 

相続が開始すると、相続人が相続放棄をしない限り、相続人が被相続人の財産と負債を引き継ぐことになります。

これにより、場合によっては、被相続人または相続人の債権者に影響があることがあります。

すなわち、被相続人の債権者としては、相続財産がプラスであっても、相続人の固有財産がマイナスである場合には、相続財産と相続人の固有財産が一緒になることで債権が回収できない可能性が生じます。

他方、相続人の債権者としては、相続人の固有財産がプラスであっても、相続財産がマイナスである場合には、同様に債権が回収できない可能性が生じます。

そのため、債権者としては、責任財産を保全するため、相続財産と相続人の固有財産を分離したいというニーズがあり、それを認めたのが財産分離の制度です。

 

相続債権者や受遺者は、相続人の固有財産が債務超過の状態にある等の場合には、家庭裁判所に相続人の財産から相続財産を分離することを申し立てることができます。

この手続きをとれば、相続人の債権者に優先して、相続財産から優先的に弁済を受けることができます。

他方で、相続人の債権者の側でも、自らの債権の確保のために相続人の固有財産と相続財産とを分離する必要がある場合にも、同様の手続きが認められています。

 

基本的には、債権者や受遺者から申し立てるものであって、相続をする側にはあまりなじみのない手続きでしょうが、債権回収との関係では重要な手続きとはいえます。

 

「相続会議」での記事執筆について

ウクライナ情勢にも大きな動きがあったようです。

ロシア国内では、民間軍事会社による反抗行動があり、その後の展開も含めて、世界を驚かせましたが、これらの動きに対しては種々の分析がなされています。

ウクライナによる反攻が行われている中、現状、世界に対して最も影響力をもっているであろう出来事に関するニュースに注目していきたいと思います。

 

私の個人的な話ではありますが、「相続会議」というウェブサイトで記事を執筆することになりました。

 

「相続会議」は、朝日新聞社が運営しているサイトです。

円満な相続をサポートするという目的のもと、相続を得意とする弁護士、税理士、司法書士などの専門家が紹介されており、相続に関する記事も多く記載されています。

 

私は、運営側から、相続の案件を多く扱う弁護士兼税理士として、法律・税金の両面にわたって幅広い視点から記事を執筆することを期待されているようです。

この期待に応えられるよう、役立つ情報をなるべく分かりやすく伝えられるような記事を執筆していきたいと思います。

 

初回の記事では、山林の相続に関する手続きの問題や税金の問題、相続した山林の活用方法や手放す方法など、幅広い内容を執筆させていただきました。

私は、普段、名古屋周辺で実務をしていますが、山林の相続に関する悩みを抱えてらっしゃる方は多くいらっしゃいます。

このような悩みを抱えておられる方のご参考になるかと思いますので、よろしければお読みいただければ嬉しいです。

 

私が「相続会議」で執筆することになったのは、運営会社が旧勤務先であり、そこでお世話になった先輩からお声がけいただいたからです。

旧勤務先では在籍中に多くの経験をさせていただき、とても貴重な勉強をさせていただきました。

記事をご覧いただく読者の方にお役に立ちたいという気持ちもありますが、お世話になった会社に、在職中には返しきれなかったご恩を少しでもお返しできればという気持ちでもいます。

今後も、なるべく有益な記事を執筆していきたいと考えています。

 

相続土地国庫帰属制度の負担金について

今年の台風2号は、各地に大きな被害を与えたようです。

私の勤務地である名古屋ではそれほどの深刻な被害があったとは聞いていませんが、愛知県内では死者が出てしまうなどの被害があったようです。

被害に遭われた方に対しては、お見舞い申し上げます。

 

今回は、相続土地国庫帰属法の負担金について採りあげたいと思います。

 

弁護士として相続の案件を取り扱っていると、「相続財産に不要な不動産があるが、どうすればいいか」というご相談をしばしば受けます。

相続放棄をしてしまえば、そのような不動産を引き継ぐこともないのですが、そうすると、他の価値のある財産についても相続をすることができなくなってしまいます。

このように、やむを得ず相続することになってしまった不動産について、「費用を払ってでも引き取ってほしい」というニーズが相当程度あるのが実情です。

 

このような状況にあって、国は、国土の有効な利用等を目的として、相続で取得した不要な土地を国が引き取る制度を内容とする相続財産国庫帰属法を制定しました。

ただし、国も、管理が必要な土地を無償で引き取ってくれるわけではなく、引取りを申し出た者が管理費の一部として負担金を納付しなければならないとされていました。

この負担金は、「国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して算定した額」とされていましたが、この内容が明らかになりました。

法務省のページは、こちらです。

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

 

これによれば、宅地や田・畑などは、原則として、面積によらず20万円とされています。

ただし、宅地でも都市計画法での市街化区域などに指定されている土地は、その面積に算定式がありますし、田や畑でも、同様の取扱いがあります。

森林には、面積に応じた算定式が定められています。

 

弁護士としての私の個人的な感覚では、想定していたよりも負担金は低くなったなという印象です。

そのため、不要な土地を相続することになってしまった相続人の方には、この制度の利用も検討してみられることもおすすめします。

ただし、この制度の対象とできる土地には厳しい要件がありますし、土地に建物が建っていると利用することもできません。

そもそも利用が可能なのかというところから確かめる必要があるでしょう。

 

ルールの種類と勉強法

今年のゴールデンウイークもあと少しになりました。

私の勤務地である名古屋の栄地区でも、街中では家族連れや若い方々の姿が多く見られます。

マスクを着用されている方はまだまだ多いですが、通行中には着用されていない方々もいらっしゃいますし、コロナの影響も収まってきたように感じます。

行動の制限がなくなってきたことはよいことだと思いますし、経済に対する悪影響が再燃しないように願っています。

 

今回は、しばらく続けていた宅建試験の話題を採りあげたいと思います。

 

宅建試験は、すべて選択肢式の問題で、記述式の問題はないようです。

そのため、基本的には、すべて知識が問われる問題だといえます。

 

問題はすべて、法律なり、政令なり、「人が決めたルール」を対象としており、自然科学の知識が問われているわけではありません。

この「人が決めたルール」の話を、今回はしようと思います。

 

この「人が決めたルール」は、2つに分類することができるようです。

一つは、決めること自体に意味があるルールです。

このことを学んだ憲法の教科書では、「右側通行と左側通行」が例として挙げられていました。

すなわち、交通の整理という目的のためには、どちらにするのかが決められていればよく、決めた理由にはそれほどの意味がないというものです。

もう一つは、決めた内容に合理的な意味があるルールです。

どういう行為が禁止されているのか、そのような行為をした場合にはどのような制裁があるのかというのは、権利の調整が必要になるため、合理的な理由があるはずです。

 

ここで、試験勉強の観点からすると、前者については単純に暗記をするしかないということになりますが、後者については、なぜそのようなルールになっているのかを理解することが可能でしょう。

そして、理解をしておいた方が、その内容が記憶に定着しやすいといえます。

 

弁護士になるための司法試験においても、同様に考えて進めていましたし、今回もこのように進めたいと考えています。

少なくとも、試験までに時間がある段階では、このように理解に関係する知識はなるべく理解をしておくように努めて、記憶の量を増やしておきたいと思います。

 

令和5年4月施行の法改正

最近は、とても暖かい日も増えてきており、名古屋でも桜が満開になっています。

ただ、先日、久しぶりに体調を崩すことがありました。

この間、十分なパフォーマンスを発揮することができず、人生の多大な時間を無駄にすることになってしまいました。

体調の管理はすべての基礎ですので、今後はこのようなことがないように用心していきたいですし、体調を崩さないように体力の増進にも努めたいと思います。

 

4月は新生活の始まる月ですが、法律の世界でも新法の施行がされることが多い月でもあります。

令和5年4月にも新法の施行がされていますので、私が普段取り扱っている分野に関連するものを紹介したいと思います。

 

民法の相隣関係に関する改正が施行されます。

「相隣関係」というのは、あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、隣接した不動産の所有者がその利用関係を調整しあう規定のことをいいます。

これに関して、現代に対応した内容の改正がされました。

 

民法に関しては、所有者が不明になっている土地の問題を解決するため、相続の制度や共有の制度、土地管理の制度などが改正されました。

 

不動産登記法の分野でも、不動産の所有者が不明な状態が続かないように改正がされています。

 

さらに相続土地国庫帰属法という新法が施行され、相続等で土地を取得した場合に、一定の条件を満たせば、国にその土地を引き継いでもらえる制度ができました。

 

これらの新制度も、利用できる局面が限られたものではあるのですが、場合によってはメリットがあることもあるでしょう。

それぞれの改正点をしっかりと踏まえておいて、必要な場面で利用できるようにしておくことが重要です。

 

試験における能力証明と成長機会について

名古屋では暖かい日が増えてきており、朝晩も含めて、コートが不要なくらいになりました。

先日、実家のある関西に行く機会もあったのですが、その際にはお昼に汗をかくくらいに暑かったです。

気温としては過ごしやすい季節になりましたが、他方で、花粉症にお悩みな方にはつらい季節でもあるようです。

季節ごとにしっかりと対策をしていきましょう。

 

今年の確定申告の時期が終わりました。

毎年、税理士としての業務が増えていく傾向にある中で、今年はかなりの業務量となりました。

それぞれの案件で検討を要すべき事項も多く、非常に勉強にもなる一方で、適正な業務処理が求められることへのプレッシャーも大きいといえます。

 

この件とも関連して、しばらく取り上げてきた宅建試験に関して考えたことがあります。

 

各人が試験を受ける際には、2種類の側面があるでしょう。

 

一つは、「試験で求められている能力をすでに持っていることを証明する」という側面です。

もう一つは、「試験勉強をするまでは持っていなかった能力だけれども、試験勉強を通じてそのような能力を手に入れることができた」という側面です。

 

「すでに知っている」という分野と、「まだ知らない」という分野と、試験を受けるうえで異なる意味があるといえそうです。

 

「前者の方が楽だしよい」という考え方もできるでしょう。

他方で、後者の方が人のモチベーションとしては上がるし、その人にとって価値があるといえそうです。

自分としては、前者については、たとえ達成したとしても、ある意味、当然のことですのであまりモチベーションにはつながらない一方で、後者は、自分の「成長を実感できる」という点でモチベーションにつながるという面があるし、価値が高く、効率的な行動なのではないかと感じます。

 

とはいえ、実際に受ける試験としては、自分が手も足も出ないような難しい問題を解いていても、自分の能力のなさを実感するだけで、モチベーションを維持するのも難しいかもしれません。

勉強を継続していくうえでは、勉強をすることでできるようになることが自分にとって楽しく、楽しいからこそ勉強が続けられるという、良い意味での循環を作り出すことが大切でしょう。

 

宅建の試験は、弁護士が備えているべき法的な知識の面と、自分がしっかりと勉強をしてこなかった不動産取引のルールなどの面の両方が対象となっており、今の自分にとって難しすぎることはありませんので、ちょうどよい試験なのかもしれません。

 

しばらく宅建の試験勉強をする時間を確保できないでいましたが、自らの成長のためにも、日常の業務とともに勉強を進めていきたいと思います。

 

宅建試験の過去問について

名古屋では寒い日が続いていますが、徐々に暖かさを感じる日も増えてきているように思います。

春が近づくにつれて、毎日の寒暖差も大きくなってきますので、みなさまにはご体調にもご留意いただいて、元気に過ごしていただきたいと思います。

 

前回は宅建試験を受験することに触れましたので、今回の記事では、私がどのように試験勉強を進めているかもお伝えしたいと思います。

 

前回は試験自体を採りあげて、試験の日や必要な受験の手続きを確認しました。

私は、次に試験の問題内容自体を確認することにしました。

 

私は、試験の合格を目標とするときには、まず過去問を確認します。

過去問は、実際に出題されたものですから、試験の資料としては最も確実なものです。

 

過去問を確認する目的は、その試験ではどのような能力が必要とされているのか、自分にその能力のうちどの部分が不足しているのかを確認することです。

何らかの目標を達成するときは、まずは現状の把握からとされていますが、このような試験勉強の進め方もその一つでしょう。

 

最新の令和4年度の過去問を確認すると、試験では全50問が出題され、合格には36問以上正解することが必要だということですので、最低でも7割以上を正答する必要があるようです。

 

実際に問題を解いてみると、序盤は宅建業に必要となりうる民法や判例の内容についての設問が続いていました。

自分の職業上、この部分の勉強はそれほど必要ではないと感じましたが、改正後の民法の内容の再確認や、現在の自分の実務ではあまり使用しない知識のおさらいをしておく必要はあると思いました。

法律についての知識のない方であれば、まずは、細かい知識にとらわれることなく、試験問題に登場する法律上の用語の意味をしっかりと確認することや、各制度がどのような内容なのかを確認されるところから始められるのがよいと思います。

 

ただ、この試験の内容の大部分は、宅地建物取引業法の内容から出題されています。

私自身も、宅建業法には日頃から携わっていませんし、これまでに試験勉強などで学んだことのない分野です。

ほとんど馴染みのない分野については、過去問を確認したからといってあまり深い理解が得られるわけではありませんから、出題内容のおおまかな把握をするだけに留めておき、テキストでの勉強をすることにしました。

 

過去問研究は重要ですが、初めからあまりこの点にこだわりすぎる必要もないと思います。

毎年、それほど出題傾向が変わらないということさえ確認できれば、出題範囲についての一定の勉強を進めるため、テキストの勉強や問題集の回答に移るのが効率的だと思います。

 

試験時期が近づいてきた時期に、過去問の利用方法については、再度、触れたいと思います。

 

令和5年の目標

令和5年になりましたので、今年の目標を考えたいと思います。

昨年は、特に税の分野で勉強を進めていこうとしていましたが、今年はどの分野での勉強に力を入れようかと考えていたところです。

 

今年は、不動産の勉強に力を入れて、宅建試験も受けようと考えました。

この試験は宅地建物取引業法に基づいて実施される試験で、合格者には宅地建物取引士となる資格が与えられます。

 

弁護士業務をする中で、日々、不動産に関する案件を扱っていますし、私自身も不動産についての知識をある程度は持ち合わせているつもりです。

ただ、今年は、せっかく勉強をするのであれば、資格が手に入るもので、業務に役立つ可能性のあるものを対象にしようと思いました。

普段の業務においても、日々、勉強や調査をする必要があるものの、資格試験などとしてしっかりと腰を据えた勉強をする場合には、自分の知識の整理にもなりますし、新たな発見や理解が得られるのではないかと楽しみにしています。

 

宅建試験は、不動産適正取引推進機構という一般社団法人が取り扱っています。

試験日は、例年、10月の第3日曜日とされていますが、正式には6月の第1金曜日に官報で発表されることになっています。

受験申込みは、インターネットによる方法と郵送による方法があり、通例、前者は7月中旬まで、後者は7月下旬までは期限だということです。

受験地は、受験者の住所地によって会場が決まっているようですので、私の場合は名古屋市内の会場になりそうです。

 

これらはコロナウイルスの影響で変更される可能性があり、イレギュラーになることもあるそうですので、まずは最新で正確な情報を収集しておきたいと思います。

 

何ごともしっかりと計画を立てることが重要だと思います。

次回は、宅建試験の試験範囲について触れようと思います。

 

相続財産清算人について

今年も師走に入りました。

ここからは私の弁護士業務も、毎年、非常に忙しい時期になります。

「年内に案件を解決しておきたい」という機運があるため、これにしっかり対応できるように私も今まで以上に集中して取り組んでいきたいと思います。

 

今回は令和5年4月1日に施行される予定の民法改正後の相続財産清算人について取り上げたいと思います。

 

相続人が存在しない場合には、相続財産は法人(「相続財産法人」と呼ばれます)とされます。

具体的には、戸籍を調べても相続人が存在しない場合とか、遺言書で相続人以外に財産が遺贈されている者も存在しない場合、相続人がいたとしても全員が相続欠格や廃除、相続放棄で相続権がなくなった場合に、相続人が存在しない(法律上の条文だと「相続人のあることが明らかでない」という文言になっています)と扱われます。

 

相続財産法人は清算の手続きをすることが必要なのですが、相続財産清算人という清算手続きを進めることができる権限のある者が選任されるまで、清算手続きは進められません。

相続財産清算人は利害関係のある者が家庭裁判所に選任を申し立てることができ、これがない限り、選任や手続きがされないのです。

 

相続財産清算人は、選任があった旨と相続人があるならば最低6か月間の期間内に権利主張をすべき旨の公告をすることになります。

この期間内に相続人が見つかった場合には、その相続人が相続の承認をすると精算手続きは終了することになります。

併せて、相続債権者や受遺者に対して請求の申出をすべき旨の公告を2か月以上の期間を定めてすることになります。

相続債権者や受遺者がこの期間内に権利主張をしなければ、権利を行使することができなくなります。

 

相続人や債権者が現れない場合には、相続財産が国庫に帰属することになる前に、特別縁故者がいないかが問題になります。

特別縁故者がいる場合には、特別縁故者が相続財産の全部または一部を取得することが認められます。

 

上記の相続財産清算人の職務は、これまでの相続財産管理人が行ってきたものですが、改正法では保存型の相続財産管理人の規定ができたため、これと区別するために相続財産清算人の呼称が用いられるようになったとされています。

 

相続に関わる分野では、法律の改正も多く、変更内容に注意していかなければなりません。

 

民事裁判書類電子提出システムmintsについて

11月に入り、今年もあと2か月になりましたね。

今年初めに立てた目標のことを思い出しつつ、今年一年で達成できたこと、十分に達成できなかったことを振り返ると、反省しなければならない点も多く感じています。

今年の残りの時間を利用して、まだ達成できていない目標の達成と、日々の目標をしっかりと見据えて、なるべく多くのことを達成できるように進めていきたいと思います。

 

今回は、民事裁判書類電子提出システムmintsについて取り上げたいと思います。

 

裁判所でもIT化にともなう環境の整備を進めています。

これまでは、裁判所に提出する主張書面や書証の写し、証拠説明書などの書面は、基本的にファックスで提出されていました。

mintsでは、これらの書類がオンラインで提出できるようになります。

これらの書類は、裁判所だけでなく、訴訟の相手方(他の当事者)にも直接送付(直送)する必要がありましたが、裁判所と当事者が事件ごとに作成されたページで共有することになるため、これも同時にされることになります。

 

ただ、これから運用されるシステムはあくまで現行の民事訴訟法をベースにしたもので、利用できる書面の範囲や利用方法に制限があります。

裁判所においても、データで提出されたものはいったん紙にプリントアウトして記録に編綴するという運用がされますし、裁判手続きのIT化はあくまで過渡期にあるといえます。

 

これが実施される時期は、裁判所によって異なります。

名古屋地方裁判所の本庁では、令和5年1月頃から運用される予定のようです。

 

以上は、先日、愛知県弁護士会向けに行われた裁判所の研修会での内容を参考にしています。

これからも、裁判手続きのIT化は一層進むことになるでしょうし、手続きにおける利便性も高まるでしょうし、報道でも問題になっている裁判の記録保管の問題も解消されることになるかもしれません。

他方で、IT化に伴うセキュリティやIT弱者への対応などのトラブルも生じるおそれがあるでしょう。

裁判所も、利用者の要望に応じて現在のツールを改修していくことになるのだと思いますし、私も、裁判手続きに関与する専門家として、しっかりと運用ができるようにしたいと思います。

不動産取引における心理的瑕疵について③

朝晩もめっきり寒くなり、すっかり秋という感じになりましたね。

私の弁護士事務所が入っている松坂屋名古屋店の本館7階のフロアでは、大北海道展が開催されています。

連日、多くのお客様が来店されていますが、商売をする側にも熱気を感じますし、非常ににぎわっています。

 

前回から引き続き、国土交通省が令和3年10月に策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」について取り上げたいと思います。

 

心理的な瑕疵の内容に該当する事実の有無や内容は、売主から買主に伝える必要があります。

不動産取引に関わる宅建業者は、販売活動・媒介活動に伴う通常の情報収集を行うべき業務上の一般的な義務を負っているとされていますが、心理的な瑕疵についてはどこまでの調査をしなければならないのかが問題となります。

 

ガイドラインにおいては、宅建業者は、原則として、自ら周辺住民に対する聞き込みやインターネットを使用した調査を行う義務まではなく、売主や貸主から過去の事案についての記載を求めることによって、通常の調査義務を果たしたものとするとされました。

宅建業者には原則として調査義務までは負わないとされているものの、仮に調査をする場合においては、亡くなった方やその遺族の名誉や生活の平穏に十分に配慮して進めることが必要とされています。

 

売主や貸主から上記の確認を取る際には、宅建業者としては、記載が適切になされるように助言をすることや、事案が存在することを故意に告知しなかった場合等には民事上の責任を問われる可能性がある旨をあらかじめ伝えることが望ましいとされています。

そして、宅建業者が、事案の存在を疑うに足りる事情があると考える場合には、売主や貸主に確認することが必要であるとされました。

 

業界で使用されている告知書(物件状況等報告書)においては、すでに事案に関する記載欄がありますし、宅建業者としては、後日、トラブルとなってしまったときに備えて、しっかりとこの書類を保存しておくことが必要だといえます。