財産分与と否認権

弁護士として仕事をしていると,夫婦の一方が破産する場合,破産の前後に離婚してしまうというケースを見ることが多いです。

これに関連して,離婚に伴う財産分与があった後間もなく,分与した側が破産した場合,財産分与が否認権の対象となって,財産移転が取り消されるかという問題があります。

財産分与は,①婚姻後の実質上の共同財産の清算分配,②離婚後の相手方への扶養,③慰謝料という3つの要素を持つとされています。

最高裁は,不動産の分与について詐害行為取消権(民法424条)の行使が問題となった事案において,上記3つの要素を挙げたうえで次のように判示しています。

「財産分与の額及び方法を定めるについては、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮すべきものであることは民法七六八条三項の規定上明らかであり、このことは、裁判上の財産分与であると協議上のそれであるとによって、なんら異なる趣旨のものではないと解される。したがって、分与者が、離婚の際既に債務超過の状態にあることあるいはある財産を分与すれば無資力になるということも考慮すべき右事情のひとつにほかならず、分与者が負担する債務額及びそれが共同財産の形成にどの程度寄与しているかどうかも含めて財産分与の額及び方法を定めることができるものと解すべきであるから、分与者が債務超過であるという一事によって、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でなく、相手方は、右のような場合であってもなお、相当な財産分与を受けることを妨げられないものと解すべきである。そうであるとするならば,分与者が既に債務超過の状態にあって当該財産分与によって一般債権者に対する共同担保を減少させる結果になるとしても、それが民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえないものと解するのが相当である。」(最判昭和58年12月19日民集37巻10号1532頁)

この判例は,直接的には詐害行為取消権の行使について判示したものであり,その趣旨が否認権の行使についてもそのまま妥当するかについては議論がありますが,不相当に過大な財産分与は財産減少行為として否認権の対象となると解されています。

自己破産と警備員

1 破産者の資格制限

破産手続開始決定を受けると,破産者には種々の資格制限がなされます。

たとえば,破産者は,宅地建物取引士や警備員,生命保険の募集人などの資格制限を受けます。

また,破産者は,後見人や遺言執行者にもなることができません。

 

2 警備業法による警備員の資格制限

破産者が警備員となることができないことを定めるのは,警備業法です。

条文は,以下のとおりです。

 

警備業法

第14条(警備員の制限)

1 18歳未満の者又は第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者は,警備員となつてはならない。

2 警備業者は,前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。

第 3 条(警備業の要件)

次の各号のいずれかに該当する者は,警備業を営んではならない。

一 成年被後見人もしくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの

(以下略)

 

破産手続開始決定から復権するまでの間,警備員になることができないことがわかります。

 

3 警備員の定義

警備員と言っても,その業務には様々なものがあります。

破産手続開始によって資格制限を受ける警備員とは,どのような業務を行う人のことを指すのでしょうか。

警備業法における警備員の定義は,2条に定められています。

 

警備業法

第 2 条(定義)

1 この法律において「警備業務」とは,次の各号のいずれかに該当する業務であつて,他人の需要に応じて行うものをいう。

一 事務所,住宅,興行場,駐車場,遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し,防止する業務

二 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し,防止する業務

三 運搬中の現金,貴金属,美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し,防止する業務

四 人の身体に対する危害の発生を,その身辺において警戒し,防止する業務

2 この法律において「警備業」とは,警備業務を行う営業をいう。

3 この法律において「警備業者」とは,第4条の認定を受けて警備業を営む者をいう。

4 この法律において「警備員」とは,警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。

 

2条4項が警備員を定義していますが,同条1項の「警備業務」に何を含むかがポイントとなることがわかります。

1項各号のうち,2号の「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し,防止する業務」は,「祭礼,催し物等によって混雑する場所での雑踏整理,道路工事現場周辺での人や車両の誘導等を行い,負傷等の事故の発生を警戒し,防止する業務」と解釈されているようです(社団法人全国警備業協会『警備業法の解説』)。

また,4号では,いわゆるボディガードの業務を定めています。

したがって,法文上は,財産管理とは無関係にも思える交通誘導の警備員やボディガードだからといって,破産手続の開始による資格制限を受けないとはいえないようです。

 

ごあいさつ

愛知県弁護士会に所属しております,松山悠です。

 

業務にかかわる情報の発信等をしようと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。