破産手続中に新たな債権者が判明した場合

1 新たな債権者の発覚

破産の申立て時には、全ての債権者を記載した債権者一覧表を裁判所に提出します。

ですので、破産の申立て前までには全ての債権者を把握する必要がありますが、申立て前には破産者の記憶をたどったり、自宅に届いている請求書を調べたり、信用情報機関へ問い合わせたりしても判明しなかった債権者について、申立後に発覚することもあります。

新たな債権者が発覚した場合は、早急に依頼している弁護士にその旨を伝えて、債権者一覧表を訂正してもらわなければなりません。

2 非免責債権

なぜなら、法律上、破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権は非免責債権となり、破産しても後日その債権者から請求されるおそれがあるからです(破産法253条1項6号)。

「破産者が知りながら」とは、破産者が債権者の存在を認識しながらあえて弁護士に伝えなかった場合だけでなく、破産者が過失によって記載しなかった場合も含むと考えられていることに注意が必要です。

少なくとも破産手続中に請求書が送付される等して新たな債権者が判明したにもかかわらず、当該債権者の追加を裁判所に伝えなかった場合には、過失が認められる可能性が高いと考えられます。

年金受給者の個人再生

弁護士の松山です。

1 老齢年金について

個人再生の手続のうち、利用者が多い小規模個人再生を例に説明します。

小規模個人再生では、手続を開始させるために「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」(民事再生法221条1項)が必要です。

これに該当する限り、年金を受給している方も個人再生を利用することが可能です。

老齢年金なら、基本的に年金額が減ることはないので、返済額さえ確保できれば個人再生の利用に問題はありません。

2 障害年金について

それでは、障害年金を受給している方が個人再生をすることができるのでしょうか。

障害年金の場合は特別な考慮が必要となります。

すなわち、障害年金のうち一部は、一度認定されても一定年数毎の申請が必要となるので、一度障害を認定されて障害年金を受給したとしても、それが生涯継続するとは限りません。

そのため、障害年金を受給していることから当然に「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」があるとは判断できず、これまでの障害年金を受給してきた実績や現在の障害の状態,通院歴等から再生計画の終了時に支給停止となる見込みが小さいと判断されたとき、「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」があるとは判断されて個人再生が利用できることになります。

実際、支給停止となる見込みが小さいと弁護士が説明することで,障害年金を受給している方が個人再生を利用できるようになった経験があります。

破産すると、車はどうなるのか

破産した場合、車はどうなるのか。

1 破産すると、一定の財産は債権者に配当する為に換価(現金に換えること)されてしまいます。

それでは、破産すると、所有している車は手放さなければならないのでしょうか。

2 自動車ローンが残っている場合

自動車ローンが残っている状態で破産すると、自動車ローン債権者は所有権留保の実行として、車の引き揚げを要求してきます。

このとき、自動車ローン債権者が対抗要件を備えていれば、引き揚げに応じざるを得ません。

一方で、自動車ローン債権者が対抗要件を備えていなければ、車の引き揚げを拒否することができます。

対抗要件を備えているか否かは、車検証や契約書の内容によって判断されます。

たとえば、普通車については、契約書の内容にかかわらず車検証の所有名義人の欄が破産者であれば、車の引き揚げ要求を拒否することができます。

3 自動車ローンが残っていない場合

車の財産的価値によって、車を手放さなければならないかが変わってきます。

名古屋地方裁判所の基準だと、個別の財産項目がいずれも20万円未満であり、かつ、現金及び普通預貯金の合計額が50万円未満であれば、原則として同時廃止となります。

同時廃止となれば、財産の換価という手続きがないため、車は手放さなくて済みます。

一方で、何らかの事情で破産管財事件となった場合、車は換価の対象となる可能性があります。

もっとも、その場合でも、外国車であったり評価額が高額であったりしなければ、生活や通勤等に必須であることを示すことで、1台のみであれば手元に残してもよいとされる運用が多いです。

名古屋地裁での免責審尋

1 同時廃止における免責審尋

名古屋地方裁判所ではこれまで、同時廃止決定が下された場合の免責審尋については、原則として破産者が裁判所に出頭することが求められていました。

通常は、30人程度の破産者が一つの部屋に集められ、裁判官からの質問に回答する形で審尋が行われていました。

裁判官によって、個別の破産者を指名したり、選択肢を提示して適切だと思う選択肢に挙手させたりする等の回答方法の違いは認められますが、質問内容は免責不許可事由の具体例や非免責債権の具体例は何か等、大方共通しています。

2 コロナ下での免責審尋

しかし、昨年から新型コロナ感染症の影響で、破産者を一つの部屋に集めて審尋することはせず、「免責についての申述書」という書面を提出させることによって書面による審尋を行う運用となっているようです。

破産手続の開始が決定してから1か月程度経過した時点での事情を踏まえて、主に破産の原因や今思っていること、今後同じことを繰り返さないために考えたり実行したりしていることを自筆で記入することが求められています。

新型コロナ感染症の終息が見えない現状においては、このような書面による審尋もしばらく続くと考えられます。

ギャンブルで増えた借金と債務整理

1 ギャンブルで増えた借金でも債務整理できます

債務整理は主に任意整理・個人再生・自己破産に分かれます。

このうち、任意整理と個人再生は借入れの理由は基本的に問われないので、ギャンブルで借金が増えたとしても問題なく解決ができる手続です。

自己破産ではギャンブルで返しきれない借金をしたことは免責不許可事由に当たりますが、その場合でも裁判所の裁量で借金を返済しなくてもよいとの決定(免責許可決定といいます。)が出されることが多いです。

2 任意整理や個人再生の場合

任意整理や個人再生では、基本的に借金の理由は問われることなく手続きを進めることができますので、

ギャンブルで増えた借金でも債務整理は可能です。

ただし、個人再生の場合はギャンブルを繰り返さず今後しっかりと返済を継続できると裁判所に示すために反省文を求められることがあります。

3 自己破産の場合

自己破産の場合、ギャンブルのために借金をすると免責不許可事由に該当し、原則として免責が許可されず借金が残ってしまいます。

ですので、破産管財人という弁護士の調査が必要な類型となりますが、実際に免責が許可されない事例は少ないです。

借金額が大きくないことや今後ギャンブルをしないと反省していること、現在は堅実な生活を送っていることなどを総合的に考慮した結果、裁判所から免責が相当と認められれば、例外的に免責許可の決定が下されます。

借金に関して裁判所から通知が届いたら

1 裁判所から通知が届いたら

借金の返済の滞納が続いていると、裁判所から通知が届くことがあります。

これは通常、債権者がお金を一括で返すことを求める裁判を起こしたためです。

裁判所から通知が届いたら、すぐに弁護士に相談する等の対応が必要です。

2 裁判の種類

裁判にも種類があり、債権者からどのような裁判を起こされたかによって、裁判所から届く通知の種類も異なります。

通常は、訴訟か支払督促のどちらかの手続に基づいて通知が届きます。

訴訟の場合に届く書類は、訴状や答弁書、「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」という題の書面等です。

支払督促の場合は、支払督促状と支払督促異議申立書が届きます(両者が一体となっているハガキが届くことも多いです。)。

3 裁判所から届いた通知を放っておいた場合

⑴ 訴訟の場合

「口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状」に第1回口頭弁論期日の年月日が指定されています。

多くの場合、第1回口頭弁論期日は訴状が届いてから1~2か月後に指定されます。

基本的には、指定された期日に裁判所に出頭せず、かつ、期日までに必要事項を適切に記載した答弁書を提出しないと、訴えた側の主張を全面的に認める判決が下されます。

判決が下されると、業者によっては判決前では可能だった長期の分割払いの和解が認められなかったり、給料の差押えを受けたりする可能性があります。

また、裁判所からの通知が自宅に届いたときに留守にしていて、ポストに不在票が入っていたときは、一定期間内に郵便局に取りにいかないと知らない間に裁判が進むおそれがあるので注意が必要です。

⑵ 支払督促の場合

支払督促状を受領してから2週間以内に異議申立てをする必要があります。

異議申立署は、期限内に異議申立書が裁判所に到着するように郵送するか、直接持参しなければなりません。

それをしない場合、債権者は給料の差押え等ができる立場に立ちます。

4 お早めに弁護士に相談を

裁判所からの通知を放置すると、給料の差押えや債務整理の方法が限定される等の不利益を被る可能性があります。

ですので、借金の返済に関して裁判所から通知を受け取った際にはすぐに弁護士に相談するべきです。

個人再生における返済期間

1 個人再生における返済期間

個人再生をした場合,返済期間は原則として3年です。

しかし,「特別の事情」があるときは,3年を超えて返済するとの再生計画も認められます。

この場合の返済期間の上限は5年です。

「特別の事情」とは,典型的には3年では履行可能な返済計画を立てられないが,5年であれば履行可能な返済計画を立てることができる場合などです。

2 具体例

⑴ たとえば,最低弁済総額が300万円のとき,3年の返済計画を立てると,毎月8万3334円以上の返済が可能である必要があります。

一方で,5年の計画ですと毎月の返済は5万円で足ります。

ですので,毎月の手取り収入から返済に充てることができる金額が6万円の場合,3年や4年では返済できず,再生計画を5年とすべき「特別の事情」があることになります。

⑵ 「特別の事情」が認められるには,3年での返済ができないというだけでは足りず,3年を超えた期間(上限5年)であれば返済ができる必要があります。

したがいまして,返済開始から4年後に定年を迎えて退職する予定である場合等には,定年後にも再雇用がなされて一定額以上の収入を得る見込みが高いこと等を示して5年の返済計画を履行できることを認めてもらう必要があります。

具体的に何年での返済計画となるかは,現在および今後の収支の状況により変わりますので,弁護士にご相談ください。

土地や建物を所有する方の破産

1 自己破産すると,不動産は手元に残せない

不動産をお持ちの方が自己破産した場合,ほとんどの場合,その不動産を手放さなければなりません。

⑴ 競売

まず,不動産に住宅ローン等を担保する抵当権が設定されている場合,破産によって住宅ローン等の返済を滞納することになりますので,不動産に設定されている抵当権が実行され,競売手続が進行してしまいます。

⑵ 破産管財人による売却

また,競売手続とならなくても,裁判所から選任された破産管財人が不動産の売却手続を行って,債権者に対し,売却益からできるだけお金を配当することを狙います。

もっとも,買い手がつかなければ破産管財人も売却しようがなく,ある程度の期間を待っても買い手が現れなければ,破産管財人は不動産を放棄することになり,その場合は自己破産しても不動産を手元に残せることになります。

 

2 同時廃止か破産管財事件か

⑴ 原則

1⑵で説明したとおり,不動産をお持ちの方が自己破産すると,基本的には破産管財人が不動産を売却して,売却益を債権者に配当することになります。

ですので,不動産を所有したまま自己破産をすると,不動産売却等のために破産管財人が選任されます(自己破産のうち破産管財人が選任される類型を破産管財事件と言います。)。

⑵ 例外

ア 名古屋地方裁判所の運用では,原則として,①現金及び普通預貯金以外の個別財産について,財産項目ごとの合計額が20万円未満の場合,かつ,②現金及び普通預貯金の合計額が50万円未満の場合,破産管財人の選任されない同時廃止事件となります。

イ 不動産の評価額は,原則として処分価格の合計額です。

固定資産税評価証明書のみを裁判所に提出したとき,①建物ですと,その担保する被担保債権額が固定資産税評価額の1.5倍以上である場合,②土地ですと,その担保する被担保債権額が固定資産税評価額の2倍以上である場合には無価値とみなすことができます。

また,固定資産評価証明書のみでは,上記の基準を満たさないときでも,当該不動産の被担保債権額が複数の不動産業者の査定額の平均値の1.5倍以上であるときにも,無価値とみなすことができます。

2回目の任意整理の可否

弁護士の松山です。

一度任意整理をした場合でも,入院や転職によって今まで通りの収入が途絶えてしまったり,急な出費が発生したりして途中で支払が出来なくなることがあります。

通常,任意整理だと,2回分以上滞納があると期限の利益を喪失するという条項がついた和解をすることが多く,数カ月にわたって返済ができないと一括で請求を受けることになります。

 

このような場合,2回目の任意整理をすることを検討することがあります。

任意整理は,債権者である貸金業者やカード会社と交渉をして和解をまとめる手続ですので,2回目の任意整理ができるかは,債権者の意向次第です。

たとえば,1回目の任意整理をしてから一度も返済をしていなかったり,1回目の任意整理をした直後だったりするときは,債権者からの信用を得られず2回目の任意整理ができない場合があります。

一方で,そのような事情が無ければ,2回目の任意整理の交渉自体が断られることは少ないです。

2回目の任意整理がまとまった場合は,その時点から分割払いとなって毎月の返済額を少なくすることや毎月の返済額は変えずに完済時期のみを遅らせることが可能となります。

たとえば,1回目の任意整理のときに債務額180万円を5年間(60回)で分割して支払う和解をしていて,ちょうど2年間返済したタイミングで支払が出来なくなったときを考えます。

このとき,1回目の任意整理では毎月3万円を返済することとなっており,2年間返済したタイミングでの債務額は108万円です。

支払が出来なくなった理由が入院等で一時的に収入がなくなったことであり,近いうちに退院の見込みがあって職場復帰すれば以前の収入を継続的に得る見込みがあれば,毎月の返済額はそのまま3万円として,支払ができなかった数カ月だけ返済期間をずらすという和解をすることになります。

一方で,支払が出来なくなった理由が,転職等で収入が減少したり子の進学等で支出が増大したりして,1回目の任意整理と比べて返済に回すことができるお金が少なくなったことであれば,以前と同じ返済額を支払うという和解はできません。

その場合は,たとえば,その時点からさらに5年分割での交渉を行うことで毎月の返済額を1万8000円に抑えることを狙うことが考えられます。

万が一,失職等で今後しばらくの間収入の見込みが無かったり,債権者との話し合いがまとまらなかったりすると,2回目の任意整理はできず,自己破産等を決断しなければならないこともあります。

現金化と免責不許可事由

1 免責とは

免責手続とは,債務がゼロとなる手続のことをいいます。

自己破産をすると,破産者は,基本的には免責許可決定を受け,それが確定すれば,それまでの債務から解放され,経済的に新たなスタートを切ることができるようになります。

2 免責不許可事由

⑴ 免責不許可決定

しかし,自己破産をすれば必ず免責許可決定を受けられるわけではなく,場合によっては免責不許可決定を受けることがあります。

免責不許可決定を受けると,破産者は全ての債務について支払う義務が残ります。

免責不許可決定を受ける可能性がある事項は,免責不許可事由といい,破産法で定められています。

⑵ 信用取引により買い入れた商品の著しく不利益な条件での処分

免責不許可事由の中には,信用取引により買い入れた商品の著しく不利益な条件での処分が定められています。

たとえば,換金目的でクレジットカードを利用して商品を購入し,その商品を安く換金することは免責不許可事由となります。

このような現金化は,ブランド物のバッグや新幹線のチケットの購入・売却によってなされることが多いです。

クレジットカードの利用明細にそのような商品の購入が多数見受けられる場合には,現金化の疑いがあるため,購入目的等を詳しく聞かれることになります。

弁護士法人心千葉法律事務所のサイトは以下です。

https://www.chiba-saimuseiri.com/

破産と給料差押え


1 自己破産における給料の差押えの取扱い

破産手続開始決定が下される前に,債権者から訴訟を提起されて給料の差押えを受けてしまう場合があります。

その場合,基本的には手取り収入の4分の1の額が手元に入らなくなり,生活が苦しくなるおそれがあります。

また,一般的には弁護士が介入した後に差し押さえられたお金は,特定の債権者にされた返済(これを偏頗弁済といいます。)として,手続き上問題となる場合があります。

それでは,破産手続きの開始決定があったとき,給料の差押えはどのように扱われるのでしょうか。

2 同時廃止事件の場合

通常,自己破産を申し立てる際には,免責許可の申立ても同時に行われ,その場合,同時廃止決定が下されれば,差押えは中止します(破産法249条1項)。

この「中止」の状態は免責許可決定が確定して差押えが失効するまで継続し,その間,破産者は差し押さえられた給料の相当額を取得することができません。

この間は,勤務先が給料に相当する額のお金を供託して,破産者は免責許可決定の確定後に供託されたお金を受け取ることになります。

3 破産管財事件の場合

破産手続の開始決定がなされれば,破産財団に属する財産に対して既になされている強制執行は,破産財団に対してはその効力を失います(破産法42条2項)。

すなわち,破産手続開始決定時になされている給料の差押えは効力を失うこととなります。

しかしこのままでは,給料に対する差押えが当然に抹消するわけではないので,実務上,裁判所が選任した破産管財人という弁護士が,裁判所に対して執行取消の上申書を提出し,裁判所が差押えの執行命令の取消をするのが一般的な運用であり,これによって,破産者は給料の満額を手に入れることが出来ます。

 

弁護士法人心は,新たに四日市に「弁護士法人心四日市法律事務所」を開設いたしました。

四日市で自己破産をお考えの方はこちら

再生計画中の履行中に退職する場合

1 弁護士の松山です。

個人再生では,圧縮された債務額を3~5年間かけて返済するという再生計画を裁判所に認可してもらう必要があります。

通常は,現在の収入から生活費を差し引いて,返済に回す余裕がどれくらいあるのかを計算して,返済計画が実行できることを資料とともに示すことになります。

 

2 それでは,再生計画を実行中に定年等で退職が見込まれる場合,それ以降の収入について,どのようなことを裁判所に示す必要があるでしょうか。

まずは,退職した後も継続的に収入があることを示すものとして,再就職の有無が挙げられます。

勤務先に再就職の例が多いか少ないかや,再就職した場合の収入の見込みを上申書等で説明することとなります。

また,退職金が出る場合に,退職金を返済に充てても生活ができることを示したうえで,退職時に一括で返済するという内容で計画を立てることも考えられます。

 

3 再就職しなかったり,今まで再就職の例がなかったりする場合でも,年金を得ることが出来るなら,その金額の見込みをもって再生計画を履行できることを示すことも考えられます。

いずれにせよ,再生計画を履行している間に退職する見込みがある場合,今後の生活の見込みを検討したうえで,複雑な考慮が必要となる場合がありますので,弁護士と相談して計画を立てるのがよいでしょう。

債権者名簿に記載しなかった債権

名古屋の弁護士の松山です。

1 破産をし,免責許可決定を得ても免責の効力が及ばない債権を非免責債権と言います。

破産法253条には非免責債権が列挙されており,その中の一つに破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権があります(破産法253条1項6号)。

2 債権者名簿に記載されなかった債権者は,免責に対する異議申立の機会を奪われ,免責に対する防御の機会が完全に失われることから,このような債権を保護する趣旨とされています。

3 上記の趣旨から,破産者があえて債権者名簿に記載しなかった場合だけでなく,破産者が過失によって記載しなかった場合も含むと考えられています。

4 過失の有無の認定には,様々な要素を考慮されますが,破産者が調停調書による債権を債権者名簿に記載することを失念したまま免責許可決定を得た事件について,債権者が当該債権につき調停調書作成以後免責許可決定から4年ほど経過するまで一度も請求しておらず,原告の債務不履行後免責申立の時まで六年が経過していたこと,破産の原因は当該債権の発生日以後の債権がほとんどであり,当該債権について免責不許可事由がないこと,当該債権は破産債権全体からするとほんの一部であること等を指摘して,非免責債権とした裁判例が存在します(神戸地裁平成元年9月7日)。

自己破産に対する誤解

弁護士として,できるだけ自己破産をしたくない方のご相談をお受けすることも多いですが,その理由を聞いてみると,自己破産手続について誤解をしているケースが少なくありません。

1 基本的に会社や親戚に知られることはありません。

自己破産をしても,戸籍や住民票に破産の事実が記載されることはありません。

また,政府が発行する「官報」に氏名が載りますが,一般の人が官報を目にすることはめったにありません。

したがいまして,滞納が続いて給料の差押えがなされたり,親戚と同居していたりする場合でなければ,会社や親戚に自己破産を知られる可能性は低いです。

2 必ず仕事をやめないといけないわけではありません。

自己破産をすると,手続きをしている間は,警備員や生命保険募集人等の一定の資格・職業に就くことが制限されます。

しかし,制限があるのは手続中のみですし,そのような資格・職業に就いていたり就く予定があったりするわけでなければ,自己破産による影響はありません。

3 選挙権はなくなりません。

自己破産をしても選挙権が制限されることはありません。

4 破産手続き終了後は,海外旅行の制限はありません。

自己破産の手続中は,転居や宿泊を伴う出張をするには裁判所の許可を得る必要があり,海外旅行の許可がなされないことも多いです。

しかし,上記の許可が必要なのは自己破産の手続中だけですし,自己破産をしてもパスポートに制限が加えられるわけではありませんので,自己破産の手続きが終了した後は海外旅行をすることができます。

会社の破産につきましては,こちらもご覧ください。

債権者に対する返済と破産

1 一部の債権者に対する返済

自己破産をして免責許可決定が下りると借金の支払義務がなくなります。

そのため,親族や知人等から借入れしている場合,その債権者に迷惑をかけたくないとの思いから,一部の債権者にだけ返済をしてしまうことがあります。

しかし,全ての債務を十分に返済することのできない資力しかない状況で,一部の債権者のみに返済を行うこと(これを偏頗行為といいます。)は,返済を受けなかった債権者にとっては,返済しなかったならば破産手続で平等に分配されたであろう部分を得ることができなくなることを意味する行為です。

2 否認権

偏頗行為は,上述したような意味で債権者を害するため,破産法上,否認権行使の対象となっています。

否認権とは,破産手続開始前の一定の行為を破産手続開始後に破産財団のために失効させ,流出した財産を破産財団に回復し,また,債権者間の公平を図る制度です。

否認権の対象行為となる返済があった場合,破産手続開始決定後に,破産管財人という弁護士から返済を受けた相手方に対して,返済を受けた分の返還請求がなされます。

3 偏頗行為の否認

偏頗行為の否認は,大きく二つの類型があります。

まず,破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした返済等の行為です(破産法162条1項1号)。

この場合,否認権行使の対象となるには,返済が支払不能後になされたときには,債権者が破産者の支払不能又は支払停止の事実を知っていたこと(同項1号イ),返済が破産手続開始の申立て後になされたときには,債権者が破産手続開始の申立ての事実を知っていたこと(同項1号ロ)が必要です。

次に,破産者の義務に属せず,又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって,支払不能になる前30日以内にされたものです(破産法162条1項2号)。

4 否認権の対象となる偏頗行為の具体例

破産者が自ら積極的に一部の債権者にだけ返済する場合の他,銀行口座からの自動引き落としを利用していたときや勤務先からの借入について給料から天引きされていたときで,債権者への受任通知到達後に自動引落としや天引きがあった場合にも,偏頗弁済となって否認権の対象となります。

破産前の債権者の一部のみに対する返済

1 一部の債権者に対する返済

自己破産をして免責許可決定が下りると借金を支払う責任がなくなります。

そのため,破産をしようとしている人が親族や知人等から借入れしている場合,その債権者に迷惑をかけたくないとの思いから,一部の債権者にだけ返済をしてしまうことがあります。

しかし,全ての債務を十分に返済することのできない資力しかない状況で,一部の債権者のみに返済を行うこと(これを偏頗行為といいます。)は,返済を受けなかった債権者にとっては,返済しなかったならば破産手続で平等に分配されたであろう部分を得ることができなくなることを意味する行為です。

2 否認権

偏頗行為は,上述したような意味で債権者を害するため,破産法上,否認権行使の対象となっています。

否認権とは,破産手続開始前の一定の行為を破産手続開始後に破産財団のために失効させ,流出した財産を破産財団に回復し,また,債権者間の公平を図る制度です。

否認権の対象行為となる返済があった場合,破産手続開始決定後に,破産管財人という弁護士が返済を受けた相手方に対して,返済を受けた分の返還請求がなされます。

迷惑をかけたくないからこそ特定の借入を返済したにもかかわらず,そのような偏頗行為をすることで,相手方は破産管財人からの返還請求を受ける等,かえって迷惑をかけてしまう場合もあるのです。

3 偏頗行為の否認

偏頗行為の否認は,大きく二つの類型があります。

まず,破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした返済等の行為です(破産法162条1項1号)。

この場合,否認権行使の対象となるには,返済が支払不能後になされたときには,債権者が破産者の支払不能又は支払停止の事実を知っていたこと(同項1号イ),返済が破産手続開始の申立て後になされたときには,債権者が破産手続開始の申立ての事実を知っていたこと(同項1号ロ)が必要です。

次に,破産者の義務に属せず,又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって,支払不能になる前30日以内にされたものです(破産法162条1項2号)。

4 否認権の対象となる偏頗行為の具体例

破産者が自ら積極的に一部の債権者にだけ返済する場合の他,銀行口座からの自動引き落としを利用していたときや勤務先からの借入について給料から天引きされていたときで,債権者への受任通知到達後に自動引落としや天引きがあった場合にも,偏頗弁済となって否認権の対象となります。

勤務先の借入についての給与天引き

1 勤務先からの借入について給与天引きされている人が破産や個人再生を行った場合は,給与天引きされている事実はどのように扱われるのでしょうか。

 

2 破産の場合,勤務先からの借入も破産債権ですので,弁護士が受任通知を送付した後になされた給与天引きは偏頗弁済にあたり否認対象行為です(破産法162条1項1号)。

破産手続開始前までに勤務先が天引き分を任意に返還しなければ,裁判所から選任された破産管財人という弁護士が勤務先に対して天引き分のお金の返還請求を行うこととなります。

破産管財人が選任される事件類型だと,裁判所に納める予納金も最低20万円以上となることが通常です。

 

3 個人再生では否認という制度はありませんが,故意に否認対象行為を行うと,不当な目的による申立てとされ,申立てが棄却されるおそれがあります(民事再生法25条4号)。

また,破産したとすれば債権者に配当されたであろう金額以上の金額を返済するという計画案でなければ裁判所に認可されません(清算価値保障原則)。

したがって,弁護士が受任通知を送付した後の給与天引きは否認対象行為となることから,その分の金額は個人再生をする方の財産に上乗せされて計算され,それ以上の金額を返済する計画案を立てることとなります。

自己破産した場合の財産の帰趨

1 自己破産手続の開始決定があると,破産者の財産は原則としてすべて破産管財人という弁護士が管理処分権を持ちます。

破産管財人が管理処分権を有する財産は,破産財団に属する財産といいます。

 

2 しかしながら,破産者が所有する財産でも,破産財団に帰属しない財産が存在します。

こういった財産を自由財産といい,破産者は手元に残すことができます。

 

3 まず,破産手続開始決定後に取得した財産は,自由財産です。

4 次に,個別の法律で差押えが禁止されている財産も自由財産となります。

たとえば,破産者の生活に欠くことができない衣服や寝具,家具がこれにあたります。

また,確定拠出年金も差押えが禁止されているため,本来的には自由財産となります。

5 99万円以下の現金についても,自由財産となります。

これら,新たに取得した財産,差押えが禁止された財産及び99万円以下の現金は,本来的自由財産と呼ばれます。

6 本来的自由財産以外でも,裁判所が認めた財産については自由財産となります。

すなわち,本来は破産財団に帰属する財産であっても,破産者の生活の状況,破産者の財産の種類及び額,破産者が収入を得る見込みその他の事情を考慮して,裁判所が認めると,自由財産とされる財産の範囲が拡張されます。

自己破産に関する弁護士法人心のサイトはこちら

障害年金受給者の個人再生

障害年金を受給している方が個人再生をすることができるのでしょうか。

個人再生の手続のうち,利用者が多い小規模個人再生を例に説明します。

小規模個人再生では,手続を開始させるために「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」(民事再生法221条1項)が必要です。

これに該当する限り,年金を受給している方も個人再生を利用することが可能です。

老齢年金なら,基本的に年金額が減ることはないので,問題ありません。

しかしながら,障害年金の場合は特別な考慮が必要となります。

すなわち,障害年金のうち一部は,一度認定されても一定年数毎の申請が必要となるのです。

したがって,一度障害を認定されて障害年金を受給したとしても,それが生涯継続するとは限らないのです。

そのため,障害年金を受給していることから当然に「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」があるとは判断できず,これまでの障害年金を受給してきた実績や現在の障害の状態,通院歴等から再生計画の終了時に支給停止となる見込みが小さいと判断されたとき,「将来において継続的に又は反復して収入を得る見込み」があるとは判断されて個人再生が利用できることになります。

実際,支給停止となる見込みが小さいと弁護士が説明することで,障害年金を受給している方が個人再生を利用できるようになった経験があります。

個人再生に関する弁護士法人心のサイトはこちら

住宅資金特別条項とマンション管理費

1 個人再生と住宅資金特別条項

弁護士の松山です。

個人再生では,原則としてすべての債権者を平等に扱う必要があります。

しかしながら,住宅ローンの返済を滞ると住宅についている抵当権が実行され,債務者は自宅を手放さざるを得なくなります。

それでは,生活の本拠を失った債務者の経済的な再生が困難になってしまいます。

そこで民事再生法は,一定の条件を満たす場合に,特別に住宅ローンを今まで通り返済して住宅を残して個人再生をすることを認めています。

このように,住宅を残すために再生計画案に付す条項を住宅資金特別条項といいます。

 

2 マンション管理費を滞納しているとき

住宅資金特別条項は一定の条件が満たされていないと再生計画案に付けることができません。

たとえば,自宅のマンションをローンで購入している方が個人再生を考えているとき,そのマンションの管理費を滞納している場合には,住宅資金特別条項は認められません。

すなわち,住宅の上に住宅ローン以外の担保権がある場合は住宅資金特別条項を定めることができないところ(民事再生法198条1項但書),区分所有者は,マンション管理費請求権について債務者の区分所有権の上に先取特権が認められており(建物の区分所有等に関する法律7条1項),住宅の上に住宅ローン以外の担保権があることになります。