否認対象行為と個人再生における清算価値

1 個人再生手続きでの清算価値

個人再生手続きでは,再生計画の不認可事由の一つとして「再生計画(の決議)が再生債権者の一般の利益に反するとき」が定められています(民事再生法民再231条1項、174条2項4号、241条2項2号)。

つまり,個人再生では,破産によって債権者が得られる経済的利益よりも,再生計画によって得られる経済的利益が大きくなければならないのです。

このことを清算価値保障原則といいます。

 

2 否認対象行為の扱い

⑴ 否認対象行為とは,たとえば,全社に対して今後支払うことができない状態になってから行った財産の贈与や債務者がそのような状態に陥っていることを知っている一部の債権者のみに返済すること等を指します。

⑵ ある行為が否認対象行為に該当するとき,破産手続きにおいてはその行為が破産管財人という弁護士から否認されることで,その分破産者の財産が回復します。

そのため,個人再生では,破産によって債権者が得られる経済的利益よりも,再生計画によって得られる経済的利益が大きくなければならないという清算価値保障原則からは,現在ある財産の額に,否認権の行使によって回復するであろうと想定される財産の額を上乗せした額を上回る返済をする必要があり,これに反する再生計画案は不認可となります。