1 破産法における否認の規定
破産法の否認を定めた条文の多くは、以下のように、文言上、破産者がした行為について規定しています。
160条1項1号「破産者が破産債権者を害することを知ってした行為」
160条1項2号「破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て・・・があった後にした破産債権者を害する行為」
160条2項「破産者がした債務の消滅に関する行為」
160条3項「破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為」
161条1項「破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合」
162条1項1号「破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為」
2 破産者の行為の要否
しかし、実際は、破産者の行為でなくとも否認の対象となりえます。
たとえば、最高裁平成2年7月19日民集44巻5号837頁は、地方公務員である債務者が、自身が所属する共済組合から貸付けを受けていたところ、その給与支給機関は、地方公務員共済組合法115条2項に基づき債務者の退職金を債務者の退職手当を共済組合に対する債務の弁済に充て、その後、債務者が破産宣告を受けたという事案について、①地方公務員共済組合法115条2項の規定は、組合員から貸付金等を確実に回収し、もって組合員の財源を確保する目的で設けられたものであり、給与の直接払の原則及び全額払の原則との関係を考慮して、組合員の給与(退職手当を含む)から貸付金の金額に相当する金額を控除して、これを組合員に代わって組合に払い込むという方法を定めたものであることと、②当該払込は、組合に対する組合員の債務の弁済を代行するものに他ならないことを理由として、給与支給機関が給与を支給する際、地共法115条2項に基づき、その組合員の給与から貸付金の金額に相当する金額を控除して、これを組合員に代わって組合に払い込んだ行為は、組合員が破産宣告を受けた場合において、否認の対象となると示しました。
この事案と異なり、破産者を代行したとは観念しえない行為やおよそ破産者が関わっていない行為に対しても、否認の対象となるかは、考えが分かれています。