破産における仏壇の扱い

1 破産の際に仏壇は手元に残せるか

自己破産する際に、所有している仏壇はどのように扱われるでしょうか。

他の財産と同じく一定額以上の評価額があると判断された場合には、原則としてお金に換えられてしまうのでしょうか。

2 仏壇は自由財産に該当します

自己破産で残せる財産について、自己破産を規律する法律(破産法)は、差し押さえることができない財産は破産財団に属さず(破産法34条3項2号)、差押禁止財産は破産しても破産者の手元に残すことができることを定めています。

主な差押禁止財産は、民事執行法に定められています。

そして、民事執行法131条8号は、仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物が差押禁止財産であるとしています。

仏壇はこれに該当すると考えられているので、破産しても破産者の手元に残すことができます。

各地方裁判所が定めている自己破産申立てのための財産目録の書式でも、通常、仏壇を記載するための欄は用意されていません。

3 仏壇以外に残せる財産の範囲について

ただし、仏壇の評価額によっては、仏壇以外で所有している財産(預金等)のうち、何をどれくらい手元に残せるか(どの範囲で自由財産の拡張が認められるか)が影響を受ける可能性があります。

気になる方は具体的に弁護士に相談するのがよいでしょう。

否認に破産者の行為は必要か

1 破産法における否認の規定

破産法の否認を定めた条文の多くは、以下のように、文言上、破産者がした行為について規定しています。

160条1項1号「破産者が破産債権者を害することを知ってした行為」

160条1項2号「破産者が支払の停止又は破産手続開始の申立て・・・があった後にした破産債権者を害する行為」

160条2項「破産者がした債務の消滅に関する行為」

160条3項「破産者が支払の停止等があった後又はその前六月以内にした無償行為及びこれと同視すべき有償行為」

161条1項「破産者が、その有する財産を処分する行為をした場合」

162条1項1号「破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為」

2 破産者の行為の要否

しかし、実際は、破産者の行為でなくとも否認の対象となりえます。

たとえば、最高裁平成2年7月19日民集44巻5号837頁は、地方公務員である債務者が、自身が所属する共済組合から貸付けを受けていたところ、その給与支給機関は、地方公務員共済組合法115条2項に基づき債務者の退職金を債務者の退職手当を共済組合に対する債務の弁済に充て、その後、債務者が破産宣告を受けたという事案について、①地方公務員共済組合法115条2項の規定は、組合員から貸付金等を確実に回収し、もって組合員の財源を確保する目的で設けられたものであり、給与の直接払の原則及び全額払の原則との関係を考慮して、組合員の給与(退職手当を含む)から貸付金の金額に相当する金額を控除して、これを組合員に代わって組合に払い込むという方法を定めたものであることと、②当該払込は、組合に対する組合員の債務の弁済を代行するものに他ならないことを理由として、給与支給機関が給与を支給する際、地共法115条2項に基づき、その組合員の給与から貸付金の金額に相当する金額を控除して、これを組合員に代わって組合に払い込んだ行為は、組合員が破産宣告を受けた場合において、否認の対象となると示しました。

この事案と異なり、破産者を代行したとは観念しえない行為やおよそ破産者が関わっていない行為に対しても、否認の対象となるかは、考えが分かれています。

破産手続中の海外渡航許可について

1 破産手続中の居住地の移転許可

破産手続中は、破産者がその居住地を離れる場合、裁判所の許可を得る必要があります(破産法37条1項)。

この規定の趣旨は、破産者の逃亡や財産の隠匿の防止を図るとともに、破産者に説明義務を尽くさせることにあるとされています。

通常の引越しであれば、代理人弁護士を通じた許可申立てによって、破産管財人による業務遂行に支障がなく、円滑な破産手続の進行に問題ないとして、基本的に裁判所による許可がなされます。

 

2 海外への渡航の許可

行先、時期、期間等によっては、海外への渡航も許可されます。

また、許可の際に一定の条件が付される例もあります。

たとえば、東京高決平成27年3月5日判例タイムズ1421号119頁は、破産手続中の2か月間の海外旅行の許可申立てについて、海外渡航を始める3日前の債権者集会等に出頭することを条件として許可がなされたのに対し、破産者が無条件での許可を求めた事案です。

当該事案において、裁判所は、破産者に債権者集会等に出頭して説明を尽くす義務があることを前提として、破産者がこれまで1度も債権者集会に出頭していないことや破産手続開始後の過去の海外渡航状況に照らして、条件を付することに十分な合理性があり、また、条件を付することが破産者の居住・移転の自由を不当に制限するものということができないと示しました。

ETCパーソナルカードについて

1 債務整理をするとETCカードが利用できなくなる

債務整理した場合、弁護士に依頼して弁護士から債権者に通知を出したタイミングで、債務整理の対象とした業者のカードは利用できなくなります。

その結果、債務整理の対象としたクレジットカード会社が発行するETCカードも利用できなくなります。

また、信用情報機関に事故情報として数年間登録されるため、新たにETCカードの契約の審査を通すことも困難な状態となります。

 

2 ETCパーソナルカードなら作成・利用が可能

このままでは高速道路の料金支払いが不便のため、頻繁に高速道路を利用する方は「ETCパーソナルカード」の作成をご検討ください。

「ETCパーソナルカード」は、東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)、中日本高速道路株式会社(NEXCO中日本)、西日本高速道路株式会社(NEXCO西日本)、首都高速道路株式会社、阪神高速道路株式会社及び本州四国連絡高速道路株式会社の6社が共同で発行・運営しているカードです。

通常のETCカードはクレジットカードであり高速道路を利用した後で料金がカード会社から引き落とされる仕組みですが、「ETCパーソナルカード」では事前に保証金を預託します。

預託した保証金の範囲で高速道路を利用することが可能です。

ただし、利用料金が保証金額を超えるとカードが利用停止となるので、余裕を持った預託が必要です。

離婚に伴う財産分与と破産

1 破産と離婚の財産分与

破産直前に離婚して財産分与を行った場合、その財産分与は破産手続の中でどのように扱われるのでしょうか。

基本的に財産分与は離婚する当事者二人が自由に内容を決めることができ、後から第三者が口出しすることはできません。

しかしながら、債務超過に陥っている方がそのことを認識しつつ自己の財産を他人に与える行為は、破産が始まった後、破産管財人という弁護士に効果を覆される可能性があります。

このように、債権者に配当等するための財産を増やすため、以前の行為の効果を覆すことを否認といいます。

2 財産分与が取り消される基準

破産に至らなくとも同じような効果をもたらす制度として詐害行為取消権があります。

最高裁判所は、離婚に伴う財産分与は、民法768条3項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるにたりるような特段の事情のない限り、詐害行為とならないと示しています。

つまり、あくまで原則は財産分与は詐害行為ではありませんが、「特段の事情」があれば詐害行為となって後に取り消されることになるのです。

破産における否認も基本的に同様の枠組みで考えられています。

3 参考となる書籍

最近出版された書籍(佐藤鉄男ほか編『家族破産法への誘い』(商事法務、2025年)は、近時の裁判例を分析して傾向を示したり、債務超過となった時点では離婚の実体が存在しなかったなどの一定の要素が重なると、「積極財産の2分の1までの分与は相当」と単純に言えない状況にあることを記載したりしており、参考になります。

破産前の財産の贈与

1 不動産の名義変更から何年経てば破産しても大丈夫かという質問

不動産を所有している方の債務整理のご相談に乗っている際、不動産の名義を変更して何年経てば自己破産して大丈夫かとのご質問を受けることがあります。

その質問の趣旨は、次の2つの思いが合わさったものと思われます。

一方で、自己破産をする際に所有している不動産は売却の対象となり手元に残せないことを前提に、事前に不動産の所有名義を身近な他人(親族など)に変更すればその不動産は破産とは関係なくなり、売却の対象とならず、名義変更先から借りれば今と同様の生活を続けられるのではないかとの期待。

他方で、破産における財産隠しは問題があると聞いたことがあるし、裁判所に過去の通帳履歴等の資料を提出しなければならないことから、あまりに直前の名義変更は認められないのではないかとの懸念。

2 財産の贈与が否認される条件

不動産の名義変更など、所有する財産を無償で贈与する行為は、一定の条件で破産手続開始後に破産管財人という裁判所に選任された弁護士による否認の対象となります。

不動産の名義変更が否認されれば、名義変更が無かったことになり、不動産の所有権が破産した方のもとに戻ってくるため、破産手続内で売却されるのが原則です。

財産の贈与が否認される類型は主に2つあります。

第1に、弁護士に破産の依頼をする6か月前以降に贈与した場合です。

弁護士に破産の依頼をすれば、通常、弁護士から債権者に対して受任通知が送付されます。

この受任通知送付を典型とする「支払停止」の前6か月以内にした無償行為は否認の対象です(破産法160条3項)。

第2に、不動産の名義変更によって債権者の利益が害されることを知っている場合です(破産法160条1項1号)。

例えば、既に支払が困難で自転車操業状態の場合には、いずれ支払が滞ることが目に見えていると言えます。

そのような状態の中で、自分の財産を処分すれば、本来なら後の破産手続の中で売却されて債権者に配当されるべき金銭がなくなることを知っているので、否認の対象です。

ただし、名義変更先の人物が、行為の当時、債権者を害することを知らなかったことを立証すれば対象外となります。

3 年数は関係ない

以上より、自己破産するのに、不動産の名義を変更して待てばよいという明確な年数はありません。

既に支払いが遅れていたり、弁護士に相談しなければならない程の経済状態にあったりする方の場合は、名義変更して数年が経過しても後日の破産手続内で否認されてしまうケースが多いです。

個人再生における5000万円要件

1 個人再生は債務総額が5000万円を超えると利用できない

個人再生を利用するには、基本的には住宅ローン以外の債務が合計5000万円以下である必要があります。

すなわち、小規模個人再生の利用要件として、民事再生法221条1項は、個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が5000万円を超えない者は、小規模個人再生を行うことができる、と定めています。

再生債権の総額に関する要件は、給与所得再生でも同様です(民事再生法239条1項)。

 

2 5000万円要件から除外される債権

再生債権は、個人再生の手続開始決定前に発生した債権を指します。

このうち、5000万円の要件から外すことができる債権が定められています。

①住宅資金貸付債権、②別除権の行使によって弁済を受けることができる見込まれる債権、③再生手続開始前の罰金等です。

⑴ 住宅資金貸付債権

住宅資金貸付債権とは、住宅の建設若しくは購入に必要な資金又は住宅の改良に必要な資金の菓子受けに係る分割払いの定めのある再生債権であって、当該債権等を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいいます(民事再生法196条3号)。

具体的には、自宅不動産の住宅ローンで、自宅に抵当権がついているものです。

⑵ 別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる債権

住宅ローンでなくとも、不動産に抵当権を設定してローンを組むこともあるでしょう。

その場合のローンは、抵当権が実行されれば、不動産の売却額(の一部)から(少なくとも一部の)返済を受けます。

たとえば、5500万円の借金をする際に不動産に抵当権を設定し、かつ、その借金以外に当該不動産に抵当権等の担保権が設定されていないとき、その抵当権が実行されれば4000万円で売却される見込みであれば、4000万円が別除権の行使によって弁済を受けることが見込まれる債権です。

 

3 個人再生の利用をお悩みの方へ

個人再生の利用には一定の条件が存在します。

場合によっては、自分が個人再生を利用できる状態なのか分からないケースがあると思います。

専門的な判断が必要となることが多いので、個人再生の利用をお悩みの方は、お早めに弁護士にご相談ください。

最近の車検証事情

1 車検証の電子化

令和5年1月4日より、車検証の電子化が実施されました。​

この変更は、令和元年5月に公布された「道路運送車両法の一部を改正する法律(令和元年法律第14号)」に基づいています。 ​

 

2 変更点

⑴ 大きさ

電子化に伴い、まず車検証の大きさが変更されました。

​従来はA4サイズだったものがA6サイズへとコンパクトになりました。

新たな車検証にはICタグを貼付されています。 ​

⑵ 券面記載事項

新たな車検証の券面に記載される事項は、​車両番号、車台番号、使用者の氏名または名称、車名・型式、寸法、車体の形状、原動機の型式、燃料の種類、総排気量、用途、乗車定員、車両重量、初度登録年月などです。​

従来、車検証に記載されていた所有者の氏名・住所は、ICタグに記録されるようになったため、車検証のみでは所有者が誰であるかは確認できなくなりました。

3 ICタグに記録された情報の確認方法

ICタグに記録された情報は、スマートフォン等を用いて専用の「車検証閲覧アプリ」から閲覧可能です。 ​

また、車検証の交付時や更新時に発行される「自動車検査証記録事項」という紙には、ICタグに記録された情報の一部が記載されており、所有者の氏名は「自動車検査証記録事項」で確認することもできます。

車検証と一緒に保管している方も多いかと思います。

 

4 自己破産や個人再生での申立に必要な資料

名古屋地裁を含めた多くの裁判所では、基本的に、破産や個人再生の申立ての際、申立人または同居家族が所有又は使用している車の車検証の写しの提出が求められます。

新しいタイプの車検証では、券面上、所有者が確認できなくなったので、最近は自動車検査証記録事項の提出も求められるようになっています。

自宅のリフォームローンが残っている場合の個人再生

1 リフォームローンと住宅資金特別条項

個人再生において、自宅のリフォームローンが残っている場合に住宅資金特別条項を付けた再生計画案を作成することはできるでしょうか。

「住宅資金貸付債権」に該当しなければ、住宅資金特別条項によって個人再生において例外的に支払い続けることはできません。

リフォームローンを被担保債権とする抵当権が自宅に付されていると、住宅資金特別条項を定めなければ、抵当権が実行されて自宅を手放すことになってしまいます。

 

2 住宅資金貸付債権の定義

「住宅資金貸付債権」は、「住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とするものに限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているもの」と定義されています(民事再生法196条3号)。

ここで、住宅の建設購入に必要な資金だけでなく、「住宅の改良に必要な資金」のローンも「住宅資金貸付債権」に含まれるので、自宅のリフォームに必要な資金を借りて分割で払うローンは「住宅資金貸付債権」に該当します。

したがって、自宅のリフォームローンが残っている場合でも住宅資金特別条項を付けた再生計画案を作成することは可能です。

 

何が住宅資金貸付債権に該当して、どのような住宅資金特別条項を付すことができるかは、自宅を残すにあたって非常に重要です。

条文の文言どおりに解釈されない場合もあるので、ご自宅に抵当権が付されている方は弁護士にご相談ください。

債務整理をしても家族に迷惑をかけないポイント

債務整理を考える際、多くの人が心配するのが、家族に迷惑をかけてしまうのではないか、という点ではないでしょうか。

しかし、適正に手続きを進めることで、家族に大きな影響を与えずに問題を解決することが可能です。

1 家族の財産や信用情報

債務整理はあくまで債務者本人の問題なので、基本的に家族の預貯金や信用情報には影響しません。

同居の配偶者や子、親であっても、債務整理をする本人とは別人格です。

したがって、本人の債務整理を直接の原因として、家族が契約者となっているクレジットカードの利用停止や、将来の借り入れができなくなるという影響は原則としてありません。また、保証人でない限り、家族が代わりに返済義務を負うこともありません。

2 家族の協力

とはいえ、すべての手続きを家族に内緒で完了できるわけではありません。

個人再生や自己破産では、裁判所に対して給料明細の写しなどの書類提出が必要となり、同居家族の協力を得る場面が出てきます。

可能な限り事前に「今、生活の立て直しを図りたい」といった前向きな理由とともに、手続きの流れや必要書類について簡単に説明し、理解と協力をお願いしましょう。

3 家族が保証人となっている場合

注意したいのが、家族が保証人になっている場合です。

保証人がついた債務を整理の対象とすると、債権者から保証人である家族に対して一括請求がなされる可能性があります。

任意整理では、家族への請求を防ぐため、保証人がついた債務を整理の対象から除外することも考えられます。

一部の債権者を除外しても任意整理ができるかは慎重な判断を要するので、弁護士にご相談ください。

官報の電子化と破産

1 官報の電子化

令和7年4月1日から、官報の発行方法が大きく変わりました。

「官報の発行に関する法律」が施行されたことにより、官報は電子化され、内閣府が運営する「官報発行サイト」に掲載される電子データが正本となりました 。

 

2 破産に関する記事の検索機能の制限

この官報の電子化に伴い、プライバシー保護の観点から、破産手続開始決定や免責許可決定などの「プライバシー配慮が必要な記事」については、検索機能が制限されることとなりました。

具体的には、該当記事は画像化されたPDF形式で提供され、テキスト検索ができないようになっています 。

これにより、破産情報が氏名で容易に検索されるリスクが大幅に低減されました。

 

3 安心して破産をご検討ください

これまでも、官報を逐一確認する人は稀なため、破産をしても近所や職場に知られる可能性は非常に低い状態でした。

今回、官報の電子化と新たな運用により、破産者のプライバシー保護が強化されたことで、周囲に破産の事実を知られるリスクは一層小さくなりました。

破産手続きを検討している方や、既に手続きを終えた方にとって、安心材料となるでしょう。

なお不安な点がある場合には、弁護士にご相談ください。

個人再生の再生計画における少額債権の取扱い

1 個人再生における原則~全債権者の平等~

個人再生では、全ての債権者を平等に扱うのが原則です(民事再生法229条1項、244条)。

したがって、基本的にすべての債権は同じ割合で減額され、同じタイミングで返済されることになります。

 

2 少額債権に関する例外

⑴ しかし、この原則を貫くと支障が出る場面が存在します。

たとえば、債権者がA社~F社の6社いて、それぞれの債権額がA社5万円、B社95万円、C社100万円、D100万円、E社100万円、F社100万円の場合を考えてみます(債権総額500万円)。

このとき、再生計画の内容が債務額の20%を3年かけて返済するというものとすると、A社に対しては1万円(5万円の20%)を3年かけて返済することになり、A社に対する1回の返済額が振込手数料さえ下回ることにもなりかねない事態が発生します。

⑵ そこで、個人再生では、「少額の再生債権の弁済の時期」について特別の定めをすることが認められています(民事再生法229条1項、244条)。

具体的には、少額債権のみ初回に一括払いする特別の条項をつけることが多いです。

 

3 いくらが「少額」か

このような特別の定めをすることができる少額債権の金額について、法律は定めておらず、具体的な運用は各地の裁判所に委ねられていないので、一概には言えません。

ただ通常、3万円未満なら少額債権と判断されると思われます。

気になるようでしたら、地元の弁護士に相談するのが良いでしょう。

個人再生で残せる財産

個人再生は、裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年で返済を完了させる債務整理の方法です。

この手続きを利用すると、一定の財産を残しながら生活を立て直すことが可能です。

1 不動産

たとえば、住宅ローンがある自宅については、住宅ローン以外の借金について自宅が担保となっていない等の条件を充たしていれば、特別の条項を付けた返済計画を裁判所に認めてもらうことで、手放さずに済む可能性があります。

2 自動車

また、評価額が大きい自動車を所有している場合でも、必ず処分しなければならない訳ではありません。

もっとも、自動車ローンが残っている場合には、車検証の記載内容や売買契約の内容によって、自動車を残せないことが多いです。

3 残せる財産の総額

自己破産の場合、基本的にすべての借金を返済する責任を免れますが、原則として99万円を超える財産は処分され、債権者への返済に充てられます。

一方で個人再生では、残せる財産額に定まった上限はありません。

しかし、裁判所に提出する返済計画は、所有する財産の額以上を返済することを内容とする必要があり、毎月の収入では財産を残したまま返済計画を実行できる見込みがなければ、財産を処分するなどして頭金を用意しなければならない場合があります。

4 弁護士へ相談を

個人再生は、財産を保有しながら借金を整理したい人にとって有効な手段です。

ただし、条件や手続きの複雑さもあるため、弁護士に相談し、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

任意整理を依頼する際の注意点

1 任意整理を依頼した業者のクレジットカードは使えない

任意整理を弁護士に依頼すると、依頼した業者のクレジットカードは利用できなくなります。

そのクレジットカードから生活費を引き落としていた場合、依頼後は引き落とされずに生活費を滞納してしまうことがあるので、電気代なら電気会社、電話代なら携帯電話会社、保険料なら生命保険会社等に連絡して、早めに預金口座引落し等に支払方法を変更すべきです。

 

2 信用情報の登録

任意整理を弁護士に依頼すると、それまで支払いを滞納したことが無かったとしても、事故情報として信用情報機関に登録されます。

その場合、新たにクレジットカードの作成や借入れができなくなることのほか、任意整理を依頼しなかった業者のクレジットカードも使えなくなることがあります。

カード会社は、カード更新の際や、カード契約中の一定の時期に途上審査のため、信用情報を確認することがあり、その時に、数年以内の任意整理の事実が発覚してクレジットカードの利用が停止されるおそれがあります。

 

3 銀行口座の凍結

銀行からの借入れがある場合、その銀行に対する債務を任意整理したり、その銀行からの借入れの保証会社に対する債務を任意整理したりすると、その銀行の預金口座が凍結されるおそれがあります。

凍結は通常3か月程度ですが、銀行口座が凍結されると、凍結時点の残高は引き出せなくなり、債務と相殺されます。

また、凍結されたのが給料口座のときは、収入源が絶たれてしまいます。

そのため、給料口座となっている銀行に対する債務を任意整理しようとする場合は、事前に勤務先と調整して、関係ない銀行口座へと給料口座を変更すべきです。

CICによる「クレジット・ガイダンス」提供開始

弁護士の松山です。

今年の10月、信用情報機関の一つであるCICが、「クレジット・ガイダンス」の提供を開始するとの発表がありました。

CICによると「クレジット・ガイダンス」とは、CICが保有する信用情報を分析のうえ算出した「指数」と「算出理由」をCICの加盟企業及び消費者に提供するサービスです。

指数は、支払い状況や残高等の客観的な取引事実に基づいて算出した指標であり、200から800までの数値で示されます。

CICのウェブサイトでは、指数の算出方法として、理由の明示が可能な統計的分析手法を採用しており、AI等の手法は採用していないと説明されています。

消費者に対する提供は既に令和6年11月28日から開始されており、加盟企業(クレジットカード会社など)への提供は令和7年4月1日から開始されるとのことです。

今後は、数値で示されることになるので、一見して個人の信用状態が分かりやすくなりますが、指数の算出に用いられる支払い状況や残高等の客観的な取引事実は、従来から提供されていた情報のため、クレジットカード会社等の与信判断が大きく変化することはないと思われます。

また、一定の手続によって、CICの加盟企業に自分の指数や算出理由が提供されることを停止することが可能です。

相続放棄の際、故人の預金から葬儀代を払ってよいか

1 故人の預金から葬儀代を払っても、基本的に相続放棄は可能

相続放棄をご検討中の方から頂戴することの多い質問として、故人の預金から葬儀代を払っても相続放棄ができるか、というものがあります。

結論としては、一般的な葬儀に通常かかる費用であれば問題ないです。

2 裁判例

⑴ この問題について論じた裁判例として、大阪高決平14・7・3家月55巻1号82頁が存在します。

問題となった事案では、故人の貯金302万4825円と香典代144万円の計442万4825円で、葬儀費用等に273万5045円を支出し、仏壇92万7150円及び墓石127万0500円が購入されました(不足分の46万円余りは相続人らが負担しました)。

⑵ このようなケースにおいて、裁判所は、葬儀費用と仏壇・墓石の購入とを分けて論じました。

まず、葬儀費用の支出に関しては、①社会的儀式として必要性が高いこと、②葬儀の時期の予想が困難であり、その執行には必ず相当額の支出を伴うこと、③相続財産があるにもかかわらず、これを使用することが許されず、相続人らに資力がないため葬儀を執り行うことができない事態は非常識な結果であることを理由として、法定単純承認事由である「相続財産の処分」(民法921条1号)に該当しないとしました。

また、仏壇及び墓石の購入に関しては、夫や父親が亡くなった場合、仏壇や墓石を購入して弔うことは日本の慣例であり、遺族が被相続人の預貯金を利用するのも自然な行動といえることを理由に、購入された仏壇や墓石が社会的に不相当に高額とは断定できない本件では、遺族が貯金を解約して費用の一部に充てた行為が、「相続財産の処分」に該当すると断定することはできないとしました。

⑶ 夫ないし父親が「一家の中心である」と述べられていたり、20年以上前の裁判例であり、ここで述べられた我が国の慣例が今後もそのまま妥当するかは不明な点があったりしますが、故人の貯金の使い道や金額を考える際には参考となります。

葬儀費用の金額等によっては判断が異なる場合もありえるので、詳細は弁護士にご相談ください。

個人再生における住宅ローンとおまとめローン

1 個人再生と住宅資金特別条項

借金を整理しつつマイホームを残すというのが個人再生のメリットとして挙げられることが多いです。

しかし、一部には、個人再生でもマイホームを残すことができない場合もあります。

マイホームが残せない典型例として、住宅ローン以外のローンを担保するための抵当権が自宅に付されているケースがあります。

このような場合、多くは、住宅資金特別条項(住宅ローンのみは特別扱いで払っていく条件)を付した再生計画が認められません。

 

2 おまとめローンについて抵当権があるとき

たとえば、数社からの借り入れを一本化するためのおまとめローンについて、自宅に抵当権を付けていると、多くの場合、自宅を残した個人再生をすることができません。

しかしながら、住宅ローンを組む際に、他の借金を完済することを求められることは通常よくあります。

このようなローンを組んでいる場合について、一律に住宅資金特別条項を付すことが認められないと、マイホームを残して経済的再建を図ることを目的とした制度趣旨を没却することにもなりかねません。

そこで、住宅ローン債権者との間のおまとめローンであり、実際に他社の借金を返済し、その金額が僅少であること等が書面上明らかであれば、例外的に住宅資金特別条項を付すことが認められることがあります。

もっとも、相当例外的な対応を裁判所に求めることになるので、客観的な資料をもとに具体的に説明する必要があります。

ご自宅に住宅ローン以外のローンの抵当権が付いている方は、そのローンの具体的な使い道を明らかにしたうえで弁護士に相談することをお勧めします。

否認権行使の効果

1 否認権が行使されたときの効果

弁護士の松山です。

破産手続において、破産管財人による否認権行使が認められるとどうなるのでしょうか。

詐害行為否認が認められると、原状回復が効果として定められています(破産法167条1項)。

破産者が破産直前に相場よりも著しく安い価格で財産が売却された場合に、その財産を破産財団に取り戻すケースが分かりやすいです。

もっとも、現物を取り戻すことが困難なことも多く、財産の金銭的評価をしたうえ、金銭的価値による回復も認められています(破産法168条4項)。

2 目的財産の価額算定の基準時

ところで、財産の価額は、時の経過によって変動しえます。

そのため、価額賠償請求がなされたときに返還すべき額は、どの時点の価額なのかが問題となります。

判例は、否認権が行使された時の価額とすべきとしており、学説の多数もこれを支持しているようです。

しかし、学説は多岐に分かれており、財産の処分時とする説や口頭弁論終結時とする説、否認権行使時を基本としつつ価値変動分を部分的に反映させる説などが唱えられています。

また、とくに暗号資産のように価値が大幅に変動する財産をも視野に入れようとすると、従来の議論では限界が生じる場面もあるようです。

自己破産と個人再生のどちらを選ぶべきか

弁護士として債務整理の相談を受けていると、手続の名前は知っているけれど、個人再生と自己破産のどちらが適切か迷っていらっしゃる方も多く見受けられます。

以下では、それぞれの手続の特徴を示して、どのような方がそれぞれの手続をするのに適しているかをご説明します。

 

1 自己破産

裁判所を利用した手続で、裁判所から免責決定を得ることが目的となります。

免責決定が確定すれば、基本的にすべての債務を支払う責任がなくなります。

個人再生と比べたときのメリットは、債務を支払う必要がなくなる点です。

一方で、個人再生と比べたときのデメリットは、主に2点あります。

1点目は、一定額以上の財産を手元に残せない点です。

原則として、合計99万円の範囲内でしか財産を残せません。

また、合計99万円の範囲内であっても、一定の類型の財産(預貯金や保険など)以外は、換価の対象となり手元に残せません。

2点目は、一定の資格や職業に制限がある点です。

警備員や生命保険募集人などは、それぞれの職業を規制する法律で、破産手続中はその職務に就いたり、職務を遂行したりすることが認められていません。制限される期間は、短くて3か月程度ですが、その職業を続けたい方にとっては支障となります。

また、破産の注意点として、免責不許可事由の存在があります。

具体的には、浪費やギャンブルによって過大な債務を負担したこと等であり、これらの事由が存在すると原則として免責が認められません。

ただし、免責不許可事由がある場合でも、例外が認められており、現在は反省し節制した生活をしていること等の事情があれば免責が認められることが多いです。

 

2 個人再生

裁判所を利用して、債務額を圧縮し、3~5年間で返済する手続です。

自己破産と比べたときのメリット・デメリットは、自己破産の項目で述べたことの裏返しです。

すなわち、一定額以上の財産を所有している場合でも必ず手放さなくてはならないわけではなく、資格や職業の法律上の制限もありません。

一方で、債務額は圧縮されるもののゼロになりません。

 

3 まとめ

破産も個人再生も、裁判所を利用する手続です。

裁判所に申し立てる際に提出する書類のほとんどは、両方の手続で共通するため、申立ての準備にかかる手間は同程度です。

そのため、資格や職業の制限が関係なく、大きい財産を持っていなければ、破産を選択するのが適切であることが多いです。

給料天引きの支払い

名古屋の弁護士の松山です。

個人再生をお考えの方の中には、勤務先や勤務先の共済組合から借り入れをして、毎月給料から天引きされることで返済をしている方がいらっしゃることと思います。

このような方が個人再生をする際には注意が必要です。

個人再生においては、債務者が所有する財産よりも多くの額を債権者に返済しなければならないというルール(これを清算価値保障原則といいます。)が存在し,否認対象行為は債務者の財産に計上されることとなっております。

給料からの天引きは、再生債権に対する一部弁済と考えられ、遅くとも弁護士による受任通知送付後は偏頗行為(一部の債権者のみに対してした弁済)として、否認権行使の対象となりますので(破産法162条1項1号イ、同条3項、165条)、個人再生においては、天引きされた給料の額が債務者の財産に計上されると考えられています。

すなわち,受任通知送付後に毎月5万円が天引きされており,それが10カ月続くと合計50万円が清算価値に計上されることとなるのです。

また、再生手続開始決定がなされた後は、原則として再生計画によらない弁済が禁止されています。

したがって、それ以上の天引きが行われないよう、給料天引きの停止を申し出る必要があります。