給料天引きの支払い

個人再生をお考えの方の中には,勤務先や勤務先の共済組合から借り入れをして,毎月給料から天引きされることで返済をしている方がいらっしゃることと思います。

このような方が個人再生をする際には注意が必要です。

個人再生においては,債務者が所有する財産よりも多くの額を債権者に返済しなければならないというルール(これを清算価値保障原則といいます。)が存在し,否認対象行為は債務者の財産に計上されることとなっております。

給料からの天引きは,再生債権に対する一部弁済と考えられ,遅くとも弁護士による受任通知送付後は偏頗行為(一部の債権者のみに対してした弁済)として,否認権行使の対象となりますので(破産法162条1項1号イ,同条3項,165条),個人再生においては,天引きされた給料の額が債務者の財産に計上されると考えられています。

すなわち,受任通知送付後に毎月5万円が天引きされており,それが10カ月続くと合計50万円が清算価値に計上されることとなるのです。

また,再生手続開始決定がなされた後は,原則として再生計画によらない弁済が禁止されています。

したがって,それ以上の天引きが行われないよう,給料天引きの停止を申し出る必要があります。

個人再生を名古屋でお考えの方はこちら

相続した債務の整理

1 相続の対象

財産だけでなく債務についても相続の対象となります。

ですから,何もしなければ亡くなった人の借金はその相続人が相続します。

2 相続放棄

この場合,亡くなった人の債務をどう整理するかが問題になります。

一つの方法として,相続放棄をすることが考えられます。

相続放棄とは,「自己のために相続の開始があったことを知った時から」3カ月以内に家庭裁判所に申述する方法で,相続の対象となる財産や債務を一切放棄する手続です。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは,借金していた人が亡くなったことを知った時をいうのが典型的です。

3 限定承認

亡くなった人の借金がどの程度あるか不明であり,財産が残る可能性がある場合には,相続人が相続によって得た財産の限度で借金の負担を受け継ぐ方法があり,これを限定承認といいます。

限定承認する場合も,自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

4 債務が残った場合

相続放棄や限定承認は,一定期間内に裁判所に申述する必要がありますし,遺産を処分してしまったら,それ以降は原則としてこれらの方法をとることができません。

また,限定承認の場合でも返済しきれない債務が残る可能性があります。

こうして相続した借金が残ってしまった場合の債務整理の方法としては, 任意整理,個人再生,自己破産があります。

どの方法が適切かは,弁護士にご相談ください。

名古屋で債務整理をお考えの方はこちら

自己破産した場合の税金の取扱い

1 免責

自己破産をすることの最大のメリットは,自分が負っている債務をなくすことができる点だといえるでしょう。

自己破産をすることによって債務をなくすことを免責といいます。

しかし,どのような債務でも免責を受けられるわけではありません。

2 滞納している税金

自己破産をする方の中には,税金を滞納している方もいらっしゃいますが,滞納している税金は,免責の対象とはなりません。

このように免責の対象とならない債権のことを非免責債権といい,法律で定められています。

他の非免責債権としては,健康保険料,年金,養育費,罰金等があります。

滞納している税金が免責の対象とならないということは,自己破産をしてその他の債務については支払う義務がなくなったとしても,税金を支払う義務は残るということです。

したがって,自己破産をしたとしても,税金を支払わないままだと財産が差し押さえられる可能性があります。

3 分割払いの話し合い

もっとも,役所との話し合いによって滞納している税金を分割して支払うことができる場合もあります。

税金を支払う意思があること及びすぐに支払うだけのお金がないことを役所の担当者に伝えることで,長期の分割払いに応じてもらったり,一部を猶予してもらったりすることができるかもしれません。

4 法人の自己破産の場合

以上は個人が自己破産した場合ですが,法人の自己破産では扱いが異なります。

法人は,破産手続が終了した時点で完全に消滅します。

法人が税金を滞納している場合には,破産手続終了によって税金を支払う義務のある主体が消滅するので,税金の支払義務も消滅します。

したがって,法人が自己破産したときは,滞納している税金を支払う必要はありません。

名古屋で自己破産について弁護士をお探しの方はこちら

破産財団からの放棄

破産法78条2項12号は,破産管財人の権限として「権利の放棄」を定めています。

破産管財人の管理処分権のみを放棄することもできると解されています。

破産するのが法人であっても,一般論としては,破産管財人は管理処分権の放棄をすることができるとされています。

破産法人の破産管財人が,ある財産の管理処分権を放棄した場合,その管理処分権は破産法人に戻ることとなります。

そのような場合,財産価値がないとされる財産につき,誰が破産法人の代表権限をもつかには,学説上考えが分かれるようです。

旧商法のもとでは,裁判所が選任する清算人に権限があるとの最高裁の判断がありますが(最決平成16年10月1日),会社法下でどうなるかについては,代表取締役が代表権限を持つとの解釈も可能であり,決着がみられていないようです。

判例は,破産手続開始決定時の取締役らは,破産手続開始によりその地位を当然には失わず,会社組織にかかる行為等については取締役らとしての権限を行使しうると解するのが相当であるとしており(最判平成21年4月17日),このことからすれば,破産財団に関しないことは,従前の代表取締役がその地位で代表権限を有するとの解釈も可能です。