給料の差押えを受けた場合の自己破産

1 自己破産手続きにおける給料の差押えの取扱い

自己破産手続きの開始決定が下される前に,債権者から訴訟を提起されて給料の差押えを受けてしまう場合があります。

その場合,基本的には手取り収入の4分の1の額が手元に入らなくなり,生活が苦しくなるおそれがあります。

また,一般的には弁護士が介入した後に差し押さえられたお金は,特定の債権者にされた返済(これを偏頗弁済といいます。)として,手続き上問題となる場合があります。

それでは,破産手続きの開始決定があったとき,給料の差押えはどのように扱われるのでしょうか。

 

2 同時廃止事件の場合

通常,自己破産を申し立てる際には,免責許可の申立ても同時に行われ,その場合,同時廃止決定が下されれば,差押えは中止します(破産法249条1項)。

この「中止」の状態は免責許可決定が確定して差押えが失効するまで継続し,その間,破産者は差し押さえられた給料の相当額を取得することができません。

この間は,勤務先が給料に相当する額のお金を供託して,破産者は免責許可決定の確定後に供託されたお金を受け取ることになります。

 

3 破産管財事件の場合

破産手続の開始決定がなされれば,破産財団に属する財産に対して既になされている強制執行は,破産財団に対してはその効力を失います(破産法42条2項)。

すなわち,破産手続開始決定時になされている給料の差押えは効力を失うこととなります。

しかしこのままでは,給料に対する差押えが当然に抹消するわけではないので,実務上,裁判所が選任した破産管財人という弁護士が,裁判所に対して執行取消の上申書を提出し,裁判所が差押えの執行命令の取消をするのが一般的な運用であり,これによって,破産者は給料の満額を手に入れることが出来ます。