自己破産する場合の郵便物の取り扱い

1 郵便物の取り扱い

自己破産をすると,郵便物が届かなくなるということを聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。

自己破産する場合の郵便物については,同時廃止事件か破産管財事件かによって,異なった取り扱いがなされています。

同時廃止事件とは,破産手続開始決定と同時に手続の廃止が決定する手続きで,破産管財事件とは,破産管財人(申立代理人とは別の弁護士)が選任されて,破産者の財産や免責の可否についての調査がなされる手続きです。

2 破産管財事件の場合

⑴ 郵便物の転送嘱託

破産管財事件となった場合,裁判所は,破産管財人の職務の遂行に必要があると認めるときは,信書の送達の事業を行う者に対し,郵便物を破産管財人へと転送する旨の嘱託をすることができます(破産法81条1項)。

破産管財人は,破産者にあてた郵便物を受け取ったときは,これを開いて見ることができます(破産法82条1項)。

これらの定めは,破産者の憲法上の権利である通信の秘密(憲法21条2項)を制約するものですが,破産財団に属すべき財産の発見,破産者による財産の隠匿や散逸の監視のために必要かつ有益であることから認められています。

原則として全件の郵便物について,破産管財人への転送嘱託をするというケースが多いです。

破産管財人へと転送されるのは破産者の郵便物のみで,同居している家族宛ての郵便物は転送されません。

⑵ 破産者への返還

破産者は,破産管財人に対し,破産管財人が受け取った郵便物の閲覧や当該郵便物で破産財団に関係しないものの交付を求めることができます(破産法82条2項)。

破産財団に関係しないことが判明した郵便物は,通常,ただちに破産者に返還され,返還の方法としては,破産者本人が破産管財人の事務所に取りに行く,破産管財人から破産者に郵送で返還される,申立代理人を通じて返還されるなどがあります。

郵送で返還する場合,再度の転送防止のために破産管財人発送である旨を封筒に朱筆して発送するのが通常であり,これによって同居の家族に自己破産手続中であることを知られるおそれがあります。

破産手続開始直後の破産管財人との面談の際に,返還方法について打ち合わせ,ご自身の要望を伝えるのがよいかと思われます。

⑶ 転送嘱託の期限

裁判所が転送嘱託をできるのは破産手続中のみですが,裁判所は,破産手続が終了する前でも,転送嘱託について,1回目の財産状況報告集会まで等一定の期限を定めることができます。

3 同時廃止事件の場合

同時廃止事件の場合は,破産手続開始決定後においても,郵便物は今までどおり破産者のもとに郵送されます。

名古屋で自己破産をお考えの方はこちら