時効の援用に対する債権者からの反論

4月に入り、だいぶ暖かい季節になってきました。先日、名古屋市内にある鶴舞公園に行ったところ、きれいに桜が咲いていて、春の訪れを感じました。

さて、今回は、時効の援用をしたところ、債権者からとある反論をされたので、ご紹介しようと思います。

事案の概要としては、消費者金融A社から借入れと返済を繰り返していましたが、平成20年頃に返済ができなくなり、その後現在に至るまで返済をしなかった、という事案でした(案件の特定防止のために、事実関係を少し変えています。)。聴き取りをしたところ、今までに裁判所から書類は届いたことがないということでしたので、時効になる可能性があると判断し、時効の援用をする方向で契約をしました。

そして、当職からA社に対して消滅時効援用の通知を送ったところ、「期限の利益を喪失したのは令和3年であり、そこから5年経過していないので時効にはなっていない」との反論がありました。

確かに、時効のカウントが始まる時点(起算点)は、期限の利益(債務者が分割で債務を支払うことができる権利のこと)を喪失した時点と考えられており、A社から送られてきた取引履歴にも令和3年に期限の利益を喪失したとの記録がありました。しかし、一般的に、消費者金融との間で取り交わされる金銭消費貸借契約の約款では、「約定の支払日の支払いを怠ると、当然に期限の利益を喪失する」と規定されていることが多いので、上記主張には違和感を感じました。また、平成20年に返済がなくなったにもかかわらず、令和3年に期限の利益の喪失の処理をしたというのは、かなり不自然です(時効援用通知を受け取った後に、期限の利益喪失から5年経過していないかのように装うために、令和3年にそのように処理したという記録を残したのではないか?とさえ疑ってしまいます。)。

A社から、約款を取り寄せてみたところ、やはり約款上も約定の支払日の支払いを怠ると、当然に期限の利益を喪失する旨の規定となっていました。そこで、平成20年に返済を怠った時点で期限の利益を喪失していたはずであるから、平成20年から時効のカウントが始まっている、などの主張を行いました。

すると、後日、A社担当者から、本件債務については時効成立を認める旨の連絡が入り、無事に終了しました。

昔借入れをしていたところから請求が来ているという方は、債権者へ連絡する前に、弁護士にご相談ください。