時効の援用に対する債権者からの反論

4月に入り、だいぶ暖かい季節になってきました。先日、名古屋市内にある鶴舞公園に行ったところ、きれいに桜が咲いていて、春の訪れを感じました。

さて、今回は、時効の援用をしたところ、債権者からとある反論をされたので、ご紹介しようと思います。

事案の概要としては、消費者金融A社から借入れと返済を繰り返していましたが、平成20年頃に返済ができなくなり、その後現在に至るまで返済をしなかった、という事案でした(案件の特定防止のために、事実関係を少し変えています。)。聴き取りをしたところ、今までに裁判所から書類は届いたことがないということでしたので、時効になる可能性があると判断し、時効の援用をする方向で契約をしました。

そして、当職からA社に対して消滅時効援用の通知を送ったところ、「期限の利益を喪失したのは令和3年であり、そこから5年経過していないので時効にはなっていない」との反論がありました。

確かに、時効のカウントが始まる時点(起算点)は、期限の利益(債務者が分割で債務を支払うことができる権利のこと)を喪失した時点と考えられており、A社から送られてきた取引履歴にも令和3年に期限の利益を喪失したとの記録がありました。しかし、一般的に、消費者金融との間で取り交わされる金銭消費貸借契約の約款では、「約定の支払日の支払いを怠ると、当然に期限の利益を喪失する」と規定されていることが多いので、上記主張には違和感を感じました。また、平成20年に返済がなくなったにもかかわらず、令和3年に期限の利益の喪失の処理をしたというのは、かなり不自然です(時効援用通知を受け取った後に、期限の利益喪失から5年経過していないかのように装うために、令和3年にそのように処理したという記録を残したのではないか?とさえ疑ってしまいます。)。

A社から、約款を取り寄せてみたところ、やはり約款上も約定の支払日の支払いを怠ると、当然に期限の利益を喪失する旨の規定となっていました。そこで、平成20年に返済を怠った時点で期限の利益を喪失していたはずであるから、平成20年から時効のカウントが始まっている、などの主張を行いました。

すると、後日、A社担当者から、本件債務については時効成立を認める旨の連絡が入り、無事に終了しました。

昔借入れをしていたところから請求が来ているという方は、債権者へ連絡する前に、弁護士にご相談ください。

任意整理の条件緩和

3月に入り、ある債権者から、今月中に和解が成立するのであれば、任意整理の和解条件を緩和するという連絡がありました。年度末ということもあり、債権者の方も任意整理の和解が終わっていない案件について整理したかったのだと思われます。

任意整理を取り扱っているすべての弁護士事務所に対して、条件緩和の連絡をしているかどうかは分かりませんが、弁護士法人心には、たびたび条件緩和の連絡が入ります。これは、名古屋地域に限らず、全国的に事務所全体で多くの任意整理案件を取り扱っていることから、そのような連絡をした際に多くの案件を和解に進めることができると見込まれるためであると思います。

和解条件の緩和の内容は、債権者ごとにまちまちですが、分割回数を通常3年~5年(36~60回)分割が目安になるところを100回分割まで延長してもらえたり、経過利息や将来利息をなしにしてもらえることもあります。

任意整理案件を多く取り扱っている事務所に依頼すると、任意整理に関する豊富な知識・経験を用いて、スピーディーに、最大限有利となるような交渉ができるメリットがありますが、債権者側からも和解条件の緩和を打診してくれることがある点も、メリットの一つとして挙げられるかもしれません。

偏頗弁済とは

あけましておめでとうございます、というには少し時間が経ち過ぎましたが、年が明けて最初のブログ更新となります。

今年は年が明けてすぐに能登半島で地震が発生したり、航空機の炎上事故が起きるなど、不安な幕開けとなってしまいましたが、本年も皆様のお力になれるよう、尽力してまいりたいと思います。

さて、今回は、偏頗弁済(へんぱべんさい)についてお話ししようと思います。

自己破産や個人再生の手続きにおいては、すべての債権者を平等に取り扱わなければならないというルール(債権者平等の原則)があります。偏頗弁済とは、この原則に反し、一部の債権者のみ優先的に返済をしてしまうことをいいます。

親・きょうだいなどの親族や、友人・知人から借入れがあり、それらの人には迷惑をかけたくないとして、返済を続けてしまっていた、という場合、偏頗弁済をしたとして問題になります。

偏頗弁済をしてしまった場合、自己破産の手続きでは、破産管財人という弁護士が選任され、返済を受けた人に対して、返済を受けた額の返還請求がなされることがあります。

個人再生の手続きでは、偏頗弁済によって減った財産が清算価値に計上されることになります。

また、偏頗弁済の程度、悪質性によっては、自己破産や個人再生が認められなくなってしまうこともあり得ますので、偏頗弁済はしないように注意しましょう。

良いお年をお迎えください。

2023年も残るところあと少しになりました。今年は、名古屋地区だけではなく、岐阜地区での債務整理案件も多数担当させていただきました。

名古屋と岐阜は、距離的には近いですが、裁判所の運用が異なっている部分もありました。例えば、名古屋地裁であれば、破産・再生を受任した直後の段階で債権者から届いた債権調査票(現在の債務額が取引の履歴が開示された書類)を提出すれば問題ありませんが、岐阜地裁では、申立前6か月以内に発行された債権調査票を提出する必要があります。そのため、依頼してから申立てまでに6か月以上要する場合には、申立直前に再度、各債権者から債権調査票を送ってもらう必要がある場合があります。最近では、債権調査票を開示するために手数料を請求してくる債権者もちらほら出てきていますので、金銭的な負担が増える場合もありますし、弁護士としても再度債権調査票の発行を依頼する手間がかかります。

また、破産管財事件における債権者集会において、裁判官から破産する方に対して質問がされることがあり、破産に至った原因をどう考えているか、二度と破産しないようにどのようなことを気を付けているかなどについて質問されることがあります。名古屋地裁の裁判官は、比較的穏やかな聞き方をしてきますが、岐阜地裁は割と深く突っ込んだ質問をしてくる印象があります(※あくまで個人的な印象ですし、裁判官によっても異なるとは思います。)。ただ、これも債権者集会の場でしっかりと反省を促して、二度と借金等をしないようにさせたいという親心なのだろうと思います。

2024年も多くの人の助けとなるべく、尽力してまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

個人再生における清算価値③

個人再生における清算価値を計算する上で、漏れが生じやすい財産があります。その一例を紹介していきます。

⑴名義預金

例えば、親が子供名義で銀行口座を開設し、そこに少しづつ貯金を貯めているという場合があります。このような預金を名義預金と呼びます。名義預金については、親が口座を管理していて、子供がその口座の存在を知らないという場合もあるため、清算価値を計算する上で漏れやすい財産になりますが、個人再生をする方名義の預金であれば、基本的には清算価値として計上すべきものということになります。

⑵名義変更未了の相続不動産

親が亡くなり、その親が不動産を持っていたが、遺産分割協議をしておらず、親名義のままになっている不動産が見つかることがあります。この場合、相続放棄の手続きをしてある、又は親の死亡を知ってから3か月以内に相続放棄の手続きをとれば問題ありませんが、相続放棄の手続きをとっていない場合、法定相続分に従ってその不動産の持ち分を持っていることになります。したがって、不動産の持ち分に相当する価値が、清算価値に加算されますので、注意が必要です。

⑶親が加入している保険

⑴の名義預金と似たような話ですが、親が子供のために保険に加入していることがあります。掛け捨ての保険であれば問題ないですが、積立て型も保険の場合、解約した際に返戻金というお金が戻ってくることがあります。親がお金を払っていたとしても、基本的には個人再生をする方名義で加入した保険であれば、清算価値に含めるよう裁判所に指示される可能性が高いです。

個人再生を申立てする際には、このような財産に漏れがないか、場合によっては親御様に聞いていただくなどして確認するのが無難です。

名古屋市内で弁護士をお探しの方は、当法人までご相談ください。

 

個人再生における清算価値②

前回に引き続き、個人再生における清算価値について触れていきます。今回は、清算価値を算出するための資料について説明していきます。

⑴現金・預貯金

現金については、あまり資料を提出することはなく、自己申告であることがほとんどです。しかし、直前の家計の収入・支出の状況からみて、所持していると考えられる金額と、申告された金額との間に乖離がある場合には、裁判所から財産隠しを疑われてしまうので、正確に申告するようにしましょう。

預貯金については、通常、通帳のコピーや銀行のスマホアプリ等の画面を提出して、現時点で残っている金額の資料とします。

⑵ 不動産

不動産の資料としては、登記簿謄本、固定資産税評価証明書が必要となります。また、不動産の価値をより細かく算定する必要がある場合には、不動産業者の査定書を提出する場合もあります(当職を含め、債務整理を良く取り扱っている弁護士であれば、不動産屋さんの知り合いが複数いるので、弁護士経由で査定を依頼することもできます)。

⑶保険解約返戻金

保険の解約返戻金額については、保険証券の中に記載がある場合もありますが、記載がなければ保険会社に問い合わせて、返戻金額の証明書を発行してもらう必要があります。

⑷自動車

名古屋地方裁判所の運用では、初年度登録から7年以上経っている国産車で、新車価格が300万円以下の車の価値はゼロと評価されます。それ以外の車については、中古車業者の発行する査定書、日本自動車査定協会(有料)の発行する査定書、ネット上の中古車市場で似たような車を探して資料として提出する、などの方法で、自動車の価値を算出します。

⑸退職金

退職金については、会社に退職金支給見込額証明書を作成してもらい、資料として提出するか、退職金規定など退職金の額を計算できるものを資料として提出する必要があります。

このように、個人再生では様々な資料の提出を求められます。個人再生をお考えの方は、弁護士にご相談ください。

個人再生における清算価値①

小規模個人再生事件では、100万円、借金の金額の5分の1(※借金額が1500万円~3000万円以下の場合は300万円、3000万円を超え5000万円以下の場合は10分の1)、清算価値のうち最も高い金額まで借金が減額されます。

ここにいう清算価値とは、全財産に相当する金額のことを意味します。

では、清算価値にはどのようなものが含まれるのでしょうか。名古屋地方裁判所の運用をもとに説明します。

⑴ 現金、預貯金

現金、預貯金として持っている金額は、清算価値に含まれます。

⑵ 不動産

土地、建物等の不動産を持っている場合、その評価額が清算価値に含まれます。ただし、住宅ローンが残っていて、住宅を残しつつ個人再生を行う場合は、不動産の価値が住宅ローンの残額を上回っていた場合(いわゆるアンダーローンの場合)に、差額部分が清算価値に含まれます。他方で、住宅ローン残額の方が不動産の価格よりも多い場合(オーバーローンの場合)、不動産の価値はゼロと評価されます。

⑶ 保険解約返戻金

生命保険等の中には、解約する際に返戻金というお金が戻ってくるタイプの保険があります。このような保険に加入している場合、現時点で解約した際に支払われる返戻金の金額が清算価値に含まれます。

⑷ 自動車

自動車もその時価額が清算価値に含まれます。ただし、初年度登録から7年以上経過している国産車で、新車価格が300万円未満の車であれば、その価値はゼロと評価する運用がとられています。

⑸ 退職金

仮に現時点で退職したとしたら支払われるであろう退職金の金額も、清算価値に含まれます。ただし、現時点での退職金の金額の8分の1(※直近3年以内に定年退職が見込まれる場合には4分の1)の金額が、清算価値として計上される運用となっています。

このように、清算価値には様々なものが含まれます。次回は、清算価値の資料としてどのようなものを提出する必要があるか、その資料の集め方等も含めてお話ししていきたいと思います。

差押えについて①

借金問題でお悩みの方の中には、借金の支払ができなくなるとすぐに財産が差し押さえられてしまうのか?、差押えがなされると家に債権者が押しかけてきていろいろなものを持っていかれてしまうのか?(急に家に来て周り近所に知られてしまうのか?)など、差押えに関する不安を抱えている方は少なくないでしょう。

そこで、今回は借金の支払ができなくなった際に行われる差押えまでの流れついて解説していきます。

借金の支払ができなくなると、まずは債権者から訴訟(裁判)を提起されたり、支払督促といった裁判所の手続きが行われることがあります。それを無視してしまったり、適切に反論をしないと、訴訟の場合は判決が、支払督促の場合は仮執行宣言付支払督促の申立てがなされ、それらが確定してしまうと、債権者は財産の差押えなどの強制執行をすることができるようになります。

このように、強制執行をすることができるようになる確定判決や仮執行宣言付支払督促の確定などを、「債務名義」と呼びます。

債権者からの督促状や法的手続予告通知書等の書面には、この一連の流れを「支払をしない場合、訴訟などの法的手続をとって財産を差押えします。」とさらっと記載してあることが多いです。おそらく、あえてそのように記載することで、支払しないとすぐに差押えが来るから大変だと思わせて、支払を促したいという思惑があるのだと思います。しかし、実際は裁判を起こしてから、初回期日まで1~2か月ほどかかる場合もありますし、支払督促の場合は受け取ってから2週間以内に督促異議を出せば、債権者は訴訟に移行せざるを得なくなるため、債権者が債務名義を獲得するまで、少し時間がかかります。

とはいえ、訴訟等の手続きがなされると、早ければ数か月程度で差押えがなされる危険性がありますので、支払いに困ったら、訴訟や支払督促などされる前に、弁護士に相談した方がよいでしょう。

次回は、差押えの対象となる財産について触れたいと思います。

債務整理と相続財産

債務整理の相談に乗っていると、まれに、亡くなった親の名義のままの不動産が残っている、という場面に出くわすことがあります。例えば、お父様が亡くなったが、お父様名義の実家にそのままお母様が住み続けることに相続人間で争いがなかったため、特に遺産分割協議等をすることもなく、名義変更もしなかった、ということがあります。

しかし、自己破産や個人再生をする際にこのような財産が残っていると、処理が非常に大変になります。

遺産分割協議や名義変更をしていない財産がある場合、法定相続分通りの財産を持っているとみなされてしまいます。

自己破産の場合は、名古屋地裁の運用では、その財産価値が20万円を超えると処分しなければならなくなります。そして、その処分のために破産管財人という別の弁護士が裁判所によって選任されるため、裁判所に収める予納金が、個人の破産ですと22万円~42万円ほどかかります。

個人再生の場合は、清算価値(=個人再生する方の全財産)に、その財産価値が加算されますので、借金の減額幅が少なくなってしまう可能性もあります。

遺産分割協議や名義変更をしていない財産がある場合、手続きに大きな影響があるため、忘れずに申告するようにしましょう。

自殺の動機に「奨学金の返済苦」が追加

ネットニュースを見ていて、気になった記事を見つけました。

朝日新聞の報道によると、2022年の自殺者の中で、奨学金の返済苦がその原因の一つとなっている方が、10名いたそうです。この数字は、自殺と判断された事案について、警察による遺族等からの聞き取り調査の結果、自殺原因を複数の選択肢から選択した統計から明らかになったようです。

もっとも、統計で明らかになった10名以外にも、遺族等からの聞き取り調査で明らかにならなかっただけで、「奨学金の返済苦」が自殺原因の一つになっている方が他にもいた可能性は否定できません。また、もっと広く「借金の返済苦」を原因とするものととらえると、さらに多くの人が該当することになるでしょう。

奨学金には、一定の条件を満たせば、減額返還や返済猶予等の制度がありますので、返済に困ったらそのような制度を利用できないか検討してみるのがよいと思います。また、弁護士に相談して、個人再生や自己破産をすることで、債務額を減額したり、ゼロにすることも可能です。

奨学金を含む借金の返済に苦しんでいる方は、一人で抱え込まず、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。解決の糸口が見つかるかもしれません。

コロナ第5類に移行

新型コロナウイルスが、5月8日より、季節性のインフルエンザと同等の第5類感染症に移行しました。これにより、外出自粛や行動制限等はなくなり、感染症対策も個人の判断に委ねられることとなりました。

これに伴って、気になるのが、破産手続における裁判所の運用が変わるかどうかです。

名古屋地裁(本庁)では、コロナ前には、免責審尋の手続きが行われていました。名古屋地裁の免責審尋では、破産をする方が何名か集まり、裁判官から手続きの説明、今後二度と破産をしないようにという注意喚起、申立て書類に嘘偽りや変更がないかなどの確認などが行われていました。

しかし、コロナの流行に伴い、大勢の人が裁判所に集まるのは感染リスクが高いためか、免責審尋は省略されるようになりました。

3月にマスク着用が個人の自由となった以降に破産開始決定を受けた方も、免責審尋の手続きは省略されていましたが、第5類に移行した以降は従前の運用が再開するのか、あるいはコロナ後の運用が維持されるのか、気になるところです。

個人的には、免責審尋の手続きを実施していない裁判所も多いですし、平日の日中に裁判所に行かなければならない負担は、(場合によっては仕事を休まなければならず)破産をする方にとっても重いと思いますので、免責審尋が省略される運用が維持されるとありがたいなあと思います。

税金の滞納と債務整理

4月になり暖かい気候となりました。先日、名古屋市内にある鶴舞公園にお花見に行きました。人出も多く、出店もたくさん出ていて、コロナ前のような活気を少し取り戻したように感じました。

さて、今回は税金の滞納と債務整理の関係をお話ししたいと思います。

まず、税金については、自己破産や個人再生をしても免除・減額されることはありませんので、滞納している金額全額を支払っていかなければなりません。

もっとも、裁判所が滞納税金についてどこまで気にするかは、手続きによって違いがありそうです。

例えば、自己破産の場合には、滞納税金を今後どのように支払うかについて、裁判所はそこまで深く追求してこないことが多いです。これは、自己破産が認められれば、借金の支払義務がなくなるため、今まで返済に回していたお金で滞納税金の支払いは可能であろうと考えているからかもしれません。

他方で、個人再生の場合には、減額された借金の支払いと、生活費の支出、滞納税金の支払いを両立できるかが重視されます。個人再生では、減額後の借金をちゃんと返済できる能力があるか(再生計画の履行可能性があるか)、という点がとても重要になりますので、滞納税金についても、役所等と協議の上、月々いくらずつ支払って滞納を解消する計画かを、書面にて提出することが求められます。

税金の滞納がある方は、債務整理の相談をされる際には、滞納している税金をどのようにしたらよいか、弁護士にお尋ねください。

家計の状況の作り方

自己破産や個人再生など、裁判所の手続きによって借金の金額を減額・免除してもらう場合、月ごとに収入・支出の状況をまとめた家計の状況を作成し、裁判所に提出しなければなりません。

しかし、今まで家計簿等を付けたことがない方にとっては、どのように作成したらよいか分からないという場合もあると思います。そこで、家計の状況をどのように作成していったらよいかについてお話しします。

①毎月1日から末日までに購入した物、支払ったものについてレシートや領収証をとっておき、月末に食費・日用品等に分けて足し合わせます。②レシート等がないものについては、何にいくら使ったかのメモを残しておき、①との合計額を家計の状況に反映させます。③家賃、水道光熱費、電話代、保険料などが通帳から引落しになる場合、通帳の記載を参照して家計の状況に反映させます。④収入については、給与明細の支給金額や通帳に入金のあった金額を収入欄に記入します。⑤収入の合計額から支出の合計額を差し引いて、翌月への繰越額を計算します。

このようにして家計の状況を作成するのが理想的ではありますが、実際は一つのレシートの中に食費と日用品、その他が混在していて分けて計算することが困難な場合もあります。その場合、すべてのレシートの合計額から、日用品のだいたいの金額(5000円とか1万円とか、丸い数字でよいです。)を引いた金額を食費として計上することもあります。

また、レシート等をとっていなかった場合は、収入の金額と、通帳から見てとれる支出の金額、月末時点で残っている預金額等から、食費、日用品の額を逆算してだいたいの金額を割り出す、ということもあります。

家計の状況の作り方が分からないという方は、適宜弁護士にアドバイスを求めて進めていきましょう。

破産・再生における債権の取り扱い

11月に入り肌寒い季節になってまいりました。また、新型コロナウイルスについても第8波になることが予想されていますので、体調にはお気を付けください。

さて、自己破産や個人再生をしようとする方が、例えばAさんにお金を貸しているような場合、Aさんに対してお金を返してと請求する権利(貸金返還請求権)を持っていることになります。このような債権も、破産・再生をする方の財産に含まれることになります。

自己破産の場合、債権の金額が20万円以上であれば、破産管財事件となる可能性があり、破産管財人からAさんに対して、破産者が貸していたお金を返すよう請求することがあります。

個人再生の場合、Aさんに貸していた金額も清算価値に含まれることになりますから、金額次第では借金がいくらまで減額されるかに影響が及ぶこともありえます。

なお、Aさん自身も金銭的な余裕がなく返済能力がない場合や、Aさんとは音信不通であり連絡も取れないし居場所もわからないということもあります。そのような場合には、Aさんに対する貸金返還請求権は回収の可能性がないから、財産的価値はないとの主張をすることも考えられます。

ただし、裁判所に対してそのような主張をするのであれば、Aさんが生活保護を受けているとかAさん自身も破産の申立て準備中であるといった具体的な事情を説明する、弁護士がAさんの住民票を取得するなどしてAさんの住所の調査を尽くしたが見つからなかったことを報告する、などの対応が必要になる場合もあります。

破産・再生をお考えの方で、第三者に対して債権を持っている場合には、弁護士に対応方法を相談すべきでしょう。

自己破産の際の財産隠し

最近急に寒くなってまいりました。季節の変わり目には体調を崩しやすいですので、お気を付けください。

さて、先月、自己破産の申し立てをした人が、ビットコインなどの暗号資産を裁判所に報告せずに隠していたことから、詐欺破産の疑いで逮捕されたというニュースが出ました。

詐欺破産罪は、破産法265条に規定されており、債権者を害する目的で、財産の隠匿や譲渡、安価で処分するなどした場合に、適用される可能性があります。

破産をしようとする方が高額の財産(名古屋地裁の運用だと、20万円を超える価値のあるもの)を持っていた場合、財産を処分(換価)して、債権者への配当に回す必要があります。それにもかかわらず、その財産を隠匿、譲渡、安価での処分等をしてしまうと、債権者が配当によって得られる金額が減少してしまい、債権者が害されてしまうため、許されません。

したがって、そのような行為をした場合には、刑事罰が科される可能性があるのです。

詐欺破産罪が適用されるケースはさほど多くはないですし、今回ニュースになったケースでも起訴されたかどうかは分かりません。とはいえ、破産をしようとしている場合に、財産の隠匿等をしてしまうことは、詐欺破産罪に該当する可能性がありますし、免責不許可事由に該当する可能性もありますので、絶対にしないようにしてください。

自己破産をする際には、自分の持っている財産は包み隠さず、弁護士に報告し、裁判所にも申告するようにしましょう。

リボ払いの恐怖

債務整理の相談をしていると、「支払が厳しくて、カードをリボ払いしていた。そうしたら、気付いた時には返済ができないほど借金が膨らんでいたため、債務整理をしたい。」というような方が非常に多くいらっしゃいます。

リボ払いとは、月々の返済金額を一定の金額に固定して、毎月その金額を返済していくような支払方法をいいます。一定の金額に固定されると、大きな買い物をした場合でも返済金額が少ないため、生活が安定すると思ってリボ払いにされる方もいらっしゃるのですが、実際は借金がどんどん膨れ上がっていくだけの状態になってしまうことが多いです。

具体的に言うと、例えば、生活費として5万円をカード決済したとして、リボ払いで毎月の返済金額を1万円に設定したとします。すると、毎月の返済額は1万円で済みますが、残りの4万円は借金として残ります。そして、次の月もまた生活費で5万円カード決済をしたとすると、借金の残額が9万円となり、1万円返済しても借金が8万円残ることになります。このように、継続的にカードの利用を続けながらリボ払いにした場合、毎月ちゃんと返済できていたとしても借金の金額がどんどん膨らんでいくのです。さらに、今の例ではわかりやすくするために省略しましたが、当然借金には利息や手数料がかかりますから、1万円返済しても借金の金額は利息や手数料を引いた金額分しか減りません。つまり、思っている以上に借金の金額が増えるペースが速いのです。

リボ払いは、1回限りの大きな買い物をした場合に、分割払いをする方法としては便利な側面もあるかもしれませんが、借金を大きく増やしてしまうきっかけになってしまうケースを多く見てきました。

借金の支払が多く、リボ払いをしようか迷っているという方は、リボ払いにする前に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。借金の金額が少なければ、債務整理の選択肢も広がりますので、早めに手を打った方がよい場合もあります。また、すでにリボ払いをしていて、完済の目途が立たないという方も、弁護士に相談してみることをお勧めします。

債権者集会における各裁判所の違い

前回の続きで、各地方裁判所ごとの債権者集会における質問内容についての違いについて、お話しします。

名古屋地方裁判所や津地方裁判所では、免責に関する質問として、例えば、自己破産に至った経緯はどのようなものか、自己破産をすることについてどのように考えているか、二度と自己破産をしないようにどのようなことに気をつけて生活しているか、などの質問がなされることが多いです(事案によっては、裁判官から質問がなされることもなく、二度と破産をしないように気を付けてください、という注意のみで終わることもあります。)。これらの質問に対して真摯に答えれば、その場で免責許可決定が出され、数分で債権者集会は終わることが通常です。

しかし、岐阜地方裁判所本庁では、自己破産に至った経緯について、浪費やギャンブル、投資などがある場合、それらにのめり込んでしまった原因は何か、なぜ途中でやめられなかったのか、また同じような失敗を繰り返さないために実践していることは何かなど、かなり細かく、厳しく追及されることがあります。そして、回答の内容を踏まえて、免責許可するか後日決定するものとして、債権者集会が終わることもあります。

個人的な感想ですが、岐阜地裁の裁判官は、債権者集会における質問を通して、しっかりと自己破産に至ってしまったことを反省させ、二度と同じ過ちを繰り返さないようにしようという意識が強いのかな、と感じました。
たまたま厳し目の裁判官に当たっただけなのか、事案の性質的に免責を許可すべきか微妙な案件だったからなのか、真相は分かりませんが、岐阜地裁の本庁はそのような傾向が強いように感じました。

破産管財事件における債権者集会

私は普段、名古屋駅近くの事務所で執務しておりますが、岐阜県や三重県にも出張で相談に出向くこともありますし、職場が名古屋市内にあるため、岐阜県や三重県にお住まいの方が名古屋駅の事務所まで相談に来られることもあります。

そして、自己破産や個人再生は、原則として申立を行う方の住所を管轄する裁判所に申立てをしなければなりませんから、名古屋地方裁判所だけでなく、岐阜地方裁判所、津地方裁判所へも自己破産や個人再生の申立てをすることがあります。

手続きの流れ自体は法律に従って進められますので、裁判所ごとの運用が異なることはありませんが。自己破産の中でも破産管財事件において開かれる債権者集会という期日について、裁判所(もしかしたら裁判官かもしれませんが。)ごとに傾向が違うような気がしてきています。

そもそも、債権者集会では、破産管財人として裁判所から選任された弁護士から、破産者の財産調査、財産の換価、債権者への配当に関する報告がなされ、その後裁判官から破産者に対して免責に関する質問がなされます。
このような流れについては裁判所ごとに運用が異なるということはありませんが、免責に関する質問について違いがあるように感じています。
次のブログで具体的に書いていきます。

自己破産における車の取り扱い

自己破産をする場合に、持っている車がどのような取り扱いを受けるか不安に思われる方は多いと思います。そこで、自己破産における車の取り扱いについてお話しします。

①ローンの残っている車

車のローンを組んだ際、ローンを支払い終えるまで車の所有権をローン会社やディーラーに残しておく「所有権留保」という条項が契約内容に含まれていることがあります。その場合、ローンの残った状態で自己破産をすると、車がローン会社等によって引き揚げられてしまい、手元に残すことができません。

その場合、例えば親族等から援助を受けて、自己破産をする前にローンを完済してしまえば、ローン会社等に引き揚げられることはなくなります(ただし、下記②によって処分される可能性はありますので、注意が必要です。)。

他方で、銀行系の車のローンですと、所有権留保が付いていない場合もありますので、引き揚げられずに済む場合もあります。

②ローンの残っていない車

ローンの残っていない車であっても、名古屋地裁の運用では、時価額が20万円を超えるものは、処分されてしまい、債権者への配当に回ります。他方で、20万円を下回るものについては、手元に残すことが可能です。

なお、名古屋地裁では、初年度登録から7年以上経過していて、かつ新車価格が300万円以下の国産車であれば、原則として時価額をゼロと評価する運用となっていますので、手元に残すことができます。

裁判所の運用は、各地の裁判所によって異なることがありますし、変更になる可能性もありますので、気になる方は弁護士にご相談ください。

名古屋で自己破産のご相談をお考えの方はこちらをご覧ください。

債務整理と携帯電話①(強制解約・新規購入の可否)

債務整理をすると、携帯電話は使えなくなるのか?といったご質問をよくいただきます。ここでは、債務整理と携帯電話への影響についてまとめます。

①携帯料金の割賦払いが残っている場合、強制解約となるか?

任意整理であれば、携帯会社をその対象から除外し、携帯料金を支払い続けることができれば、強制解約となることもなく携帯電話を利用し続けることができます。

他方で、自己破産や個人再生の場合、すべての債権者を平等に取り扱わなければならないため、原則としては携帯電話会社も債権者として取り扱わなければならず、強制解約とならざるを得ません。もっとも、携帯電話は現代においては生活必需品と言えるものであること、携帯電話が強制解約になってしまうと連絡手段がなくなり、手続きの円滑な進行に支障が出ることから、事実上携帯電話の割賦払いを続けることを認める運用をとる裁判所もあるようです。詳しくは弁護士にご相談ください。

②債務整理後の携帯電話は購入できるか?

債務整理をすると、信用情報センターという機関に情報が登録されます。そうすると、携帯電話の機種変更に伴い、新しい機種を購入しようとする際、分割払いの審査が通らないことがあります。もっとも、その場合でも、分割払いでの購入ができないだけで、一括での購入であれば可能ですので、一切機種変更ができないわけではありません。