債務整理と携帯電話②(キャリア決済について)

前回、債務整理をした場合の携帯電話の利用についてお話ししましたが、今回はそれと関連した話をさせていただこうと思います。

携帯会社がキャリア決済というサービスを行っています。キャリア決済とは、お店で商品を購入する際に携帯電話会社のID等を利用して決済し、代金は携帯電話料金と一緒に後払いにすることができるサービスです(d払いやauペイなど)。

これらはキャッシュレス時代に合った便利なサービスですが、後払いの性質を持ちますので、借金の一部であることに変わりはありません。

したがって、自己破産や個人再生といった裁判所を通じた手続きをする際には、借金を作る行為は一切禁止されていますので、キャリア決済をすることも基本的にはNGとなります。

キャリア決済はほとんどが一括払いですので、あまり借金という認識がなく使い続けてしまう方もいらっしゃるのですが、これから自己破産や個人再生をお考えの方は、キャリア決済をしないようご注意ください。

なお、任意整理の場合には、このような制限はありませんので、使い続けていただいて差し支えないのですが、使いすぎて返済が回らなくなってしまうと任意整理をした債権者から一括払いを求められることもありますので、計画的にご利用されるべきでしょう。

 

債務整理と携帯電話①(強制解約・新規購入の可否)

債務整理をすると、携帯電話は使えなくなるのか?といったご質問をよくいただきます。ここでは、債務整理と携帯電話への影響についてまとめます。

①携帯料金の割賦払いが残っている場合、強制解約となるか?

任意整理であれば、携帯会社をその対象から除外し、携帯料金を支払い続けることができれば、強制解約となることもなく携帯電話を利用し続けることができます。

他方で、自己破産や個人再生の場合、すべての債権者を平等に取り扱わなければならないため、原則としては携帯電話会社も債権者として取り扱わなければならず、強制解約とならざるを得ません。もっとも、携帯電話は現代においては生活必需品と言えるものであること、携帯電話が強制解約になってしまうと連絡手段がなくなり、手続きの円滑な進行に支障が出ることから、事実上携帯電話の割賦払いを続けることを認める運用をとる裁判所もあるようです。詳しくは弁護士にご相談ください。

②債務整理後の携帯電話は購入できるか?

債務整理をすると、信用情報センターという機関に情報が登録されます。そうすると、携帯電話の機種変更に伴い、新しい機種を購入しようとする際、分割払いの審査が通らないことがあります。もっとも、その場合でも、分割払いでの購入ができないだけで、一括での購入であれば可能ですので、一切機種変更ができないわけではありません。

亡くなった方の借金について(債務整理の手続き)

前回は、亡くなった方の借金について、相続放棄の手続きをとることで引き継がなくても済む可能性についてお話ししました。

しかし、相続放棄は、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申出をしなければならず、親族が亡くなったバタバタで3か月の期間を過ぎてしまう方もいらっしゃいます(中には、相続放棄という手続き自体を知らず、プラスの財産もないから引き継ぐものもないと考えてそのまま放置してしまう方もいらっしゃいます。)。

そのような場合、亡くなった方の借金も自らの借金として支払い義務を負うことになります。厳しいようですが、亡くなった方の借金だから、プラスの財産は何も受け取っていないから、あるいは亡くなった方とは疎遠だったから、といった事情は考慮されません。

金額が少なく一括で支払うことができる場合、分割であれば支払うことができる場合には、そのまま支払っていくことになると思いますが、金額が大きく返済が難しい場合には、個人再生や自己破産という手続きを取らなければ、支払い義務を減額、免除をしてもらうことができません。

個人再生や自己破産については、裁判所の手続きで収入関係の資料や不動産、自動車、保険等の財産に関する資料など様々な資料の提出を求められますが、他方で相続放棄の手続きは戸籍等役所で取りそろえる資料のみで基本的には足りますので、自己破産や個人再生よりも労力はかかりません。

亡くなった方に借金があることが判明したら、早めに弁護士に相談された方がよいでしょう。

亡くなった方の借金について(相続放棄の手続き)

親族が亡くなったが、その債権者から請求書が届いたとしてご相談に来られることがあります。このような場合、どのように対応したらよいでしょうか。

①亡くなった当初から借金があることを知っていた場合

この場合、その方が亡くなったことを知ってから3か月以内に「相続放棄」という手続きをとると、亡くなった方のマイナスの財産(借金)を引き継がなくてもすみます。もっとも、相続放棄をすると、プラスの財産も引き継ぐことができませんので、相続したい財産がある場合には慎重に検討した方がよいでしょう。なお、プラスの財産の範囲内でのみ負債も引き継ぐという「限定承認」という手続きもあります。

②亡くなった後に借金があることを知った場合

亡くなってから3か月以内に債権者から請求書が届いた場合、①と同様に相続放棄の手続きをとることを検討した方がよいでしょう。

他方で、亡くなってから3か月以上経過した後に債権者から請求書が届いたことで初めて借金があったことを知った場合、原則としては相続放棄をすることはできません。もっとも、相続により財産を取得しておらず、請求書が届いて初めて借金の存在を認識した場合には、その時から3か月以内であれば相続放棄をすることができる可能性があります。

亡くなった方の借金についてお困りの場合には、まずは相続放棄を検討してみてはいかがでしょうか。