来月、7月には参議院の選挙が行われるそうです。
テレビなどでも政治や選挙に関する話題を目にする機会が増えた気がします。
政治や選挙に関する話では、国会とか内閣とか総理大臣とかいろんな用語がでてきます。高校の頃に政治経済の授業で三権分立とかで、この辺の言葉の意味とか勉強したなという記憶があります。
もっとも、法律をつかうことを生業とする弁護士でありながら、逐一、国会の仕組みや政治の話について、法律上の根拠を確認して整理したことはありませんでした。
例えば、「なんで選挙ってやらなきゃいけないの?」というような質問を受けたとき、「ずっと任せっぱなしだったら、その人がちゃんと仕事してるかチェックする機会がなくなるから。」といった制度趣旨の説明はできますが、法律上の根拠を示して回答できるかというと自信がありません。
そこで、この機会に、日本の政治や選挙に関わる基本的な法律を確認してみたいと思います。
まず、今回、どうして参議院選挙をする必要がある法律上の理由ですが、これは憲法まで遡って説明する必要があります。
日本国憲法は、そもそも三権分立で国会に立法、内閣に行政、裁判所に司法という3つの権限を分割し、相互に均衡をとることで、独裁権力が暴走して国民の権利が侵害されることを防止する仕組みをとっています。
このうち、国会については憲法の41条から64条に基本的なルールがかかれています。
今回選挙が行われるのは、参議院ですが、憲法42条には「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。」と書かれており、参議院の存在根拠は憲法に定められています。
そして、憲法43条には「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」と書かれており、憲法1条の主権在民の考え方や、憲法前文の「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動」するという基本的な考え方を反映しています。
日本国の主権は、国民一人一人が持っているのだから、国のルールを決める国会の議員は、国民が選挙で代表者として選んだ議員でないといけないということです。
国民が選挙で国会議員を選ぶという仕組みは、現在では、当たり前のように受け入れられている制度ですが、例えば大日本帝国憲法では貴族院は「貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所󠄁ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス」とされているので、国会議員を選挙以外の方法で選抜する制度というのは、歴史的に見れば様々な制度設計の選択肢があったことがわかります。
ちなみに、憲法43条2項には「両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。」と書かれており、国会議員が何人必要なのかは、憲法ではきめられていません。極端な話、衆議院3人、参議院3人が定数ですというように、極端に少数の議員に国政に関わる立法を委任してしまうような制度設計も、憲法上は可能です。
ただし、現実的には、立法機能をきちんと果たすためには、相応のマンパワーが必要になりますので、「法律でこれを定める」というところをうけて、公職選挙法4条で「衆議院議員の定数は、四百六十五人とし、そのうち、二百八十九人を小選挙区選出議員、百七十六人を比例代表選出議員とする。」「参議院議員の定数は二百四十八人とし、そのうち、百人を比例代表選出議員、百四十八人を選挙区選出議員とする。」とされています。
憲法47条では「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」とあり、詳細は公職選挙法などの各種法令を参照する必要があります。
例えば、選挙区などは一票の格差で問題になることが多いテーマですが、公職選挙法12条以下に、別表などをつけながらどのように選挙の区域を決めるのかが定められています。
ところで、参議院の選挙については、今回ニュースで「非改選の・・・」というような言葉がでてきてます
これは、参議院の議員のなかで、今回選挙になる人と、ならない人がいることを示しています。
これは、公職選挙法の問題ではなく、憲法に根拠のある話です。
憲法46条では「参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。」とされており、3年毎に半分ずつ議員を入れ替える選挙をすることが決められています。
ところで、選挙といえばどこの政党が勝つか負けるかといった話題がニュースで盛り上がります。
この政党というのは、法律上どのような根拠をもったものでしょうか。
政党についても、いろんな法律に定義がありますが、例えば政党助成法という法律によって国から資金面での援助(政党交付金)を受けることができる政党の定義は、同法の2条に記載されており「(政党の定義)第二条 この法律において「政党」とは、政治団体(政治資金規正法(昭和二十三年法律第百九十四号)第三条第一項に規定する政治団体をいう。以下同じ。)のうち、次の各号のいずれかに該当するものをいう。一 当該政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有するもの 二 前号の規定に該当する政治団体に所属していない衆議院議員又は参議院議員を有するもので、直近において行われた衆議院議員の総選挙(以下単に「総選挙」という。)における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は直近において行われた参議院議員の通常選挙(以下単に「通常選挙」という。)若しくは当該通常選挙の直近において行われた通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であるもの」とされています。要するに国会議員が5人以上いるか、選挙で有効投票の2%以上を得るような規模の大きな政治団体を、特に「政党」として、特別な扱いをするという仕組みです。
なお、この定義の中にある、政治資金規正法3条1項の政治団体とは「第三条 この法律において「政治団体」とは、次に掲げる団体をいう。
一 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体
二 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対することを本来の目的とする団体
三 前二号に掲げるもののほか、次に掲げる活動をその主たる活動として組織的かつ継続的に行う団体
イ 政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、又はこれに反対すること。
ロ 特定の公職の候補者を推薦し、支持し、又はこれに反対すること。」というように定められています。
また、政治資金規正法3条2項では、政党助成法とほとんど同じ内容で「政党」の定義がかかれています。
政党というと、自民党を代表に、いろんな政党がニュースにでますが、法律上「政党」と認められる条件はどんなものなのかというのは、あまり意識をすることがありませんでした。
このように、法律上の根拠を知っておくと、ニュースなどで「~党は、国会議員が5人未満のため、次の選挙で比例票をしっかりとらないといけない。」といった話をより深く理解できます。