酷暑

連日,酷い暑さが続いております。

人間の体温を超える気温の日も少なくありません。

この夏の暑さというような自然現象は,一見すると法律と何の関係もないようですが,

意外なところで,法律と関係してきます。

たとえば,このような暑さがつづくと,怖いのは熱中症などによる健康被害です。

そして,職場での労働者の安全と健康については,労働安全衛生法という法律が規律を設けております。

また,労働安全衛生法のなかで繰り返し登場するキーワードに「快適な職場環境の形成」という言葉あります。

労働安全衛生法では,事業者の労働者に対する安全管理として,労働者の安全と健康が確保され,快適に仕事が出来る環境を整備するように求められているのです。

とはいえ,「快適な」というだけでは,漠然としすぎていますので,より細かな規律については,法令・通達によって定められています。

この労働安全衛生法をうけて定められた細かなルールについてはは,中央労働災害防止協会安全衛生センターのホームページなどで確認できる事務所衛生基準規則で確認できます。

この規則の第4条では,「事業者は、室の温度が十度以下の場合は、暖房する等適当な温度調節の措置を講じなければならない。」,「事業者は、室を冷房する場合は、当該室の気温を外気温より著しく低くしてはならない。ただし、電子計算機等を設置する室において、その作業者に保温のための衣類等を着用させた場合は、この限りでない。」と定めています。

このように,快適な職場環境として,冷房するときは気温を外気温より著しく低くしてはならないと定められています。

そして,続く第5条では,空調設備のある部屋では,「 事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が十七度以上二十八度以下及び相対湿度が四十パーセント以上七十パーセント以下になるように努めなければならない。」と具体的な温度設定まで定めています。

このように,法律というものは,その法律をうけてつくられた法令や通達でより細目が定められている仕組みとなっているので,法律を実際に使う場面では法律だけでなく法令・通達まで把握することが必要となります。

しかし,第4条で「外気温より著しく低くしてはならない。」とされている一方で,第5条では「室の気温が十七度以上二十八度以下」とされていますが,今年の酷暑のように,外気温が二十八度よりかなり高くなる場合には,この規定をどう整合的に解釈したらいいのか悩んでしまいそうです。