自己破産と警備員

1 破産者の資格制限

破産手続開始決定を受けると,破産者には種々の資格制限がなされます。

たとえば,破産者は,宅地建物取引士や警備員,生命保険の募集人などの資格制限を受けます。

また,破産者は,後見人や遺言執行者にもなることができません。

 

2 警備業法による警備員の資格制限

破産者が警備員となることができないことを定めるのは,警備業法です。

条文は,以下のとおりです。

 

警備業法

第14条(警備員の制限)

1 18歳未満の者又は第3条第1号から第7号までのいずれかに該当する者は,警備員となつてはならない。

2 警備業者は,前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。

第 3 条(警備業の要件)

次の各号のいずれかに該当する者は,警備業を営んではならない。

一 成年被後見人もしくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの

(以下略)

 

破産手続開始決定から復権するまでの間,警備員になることができないことがわかります。

 

3 警備員の定義

警備員と言っても,その業務には様々なものがあります。

破産手続開始によって資格制限を受ける警備員とは,どのような業務を行う人のことを指すのでしょうか。

警備業法における警備員の定義は,2条に定められています。

 

警備業法

第 2 条(定義)

1 この法律において「警備業務」とは,次の各号のいずれかに該当する業務であつて,他人の需要に応じて行うものをいう。

一 事務所,住宅,興行場,駐車場,遊園地等(以下「警備業務対象施設」という。)における盗難等の事故の発生を警戒し,防止する業務

二 人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し,防止する業務

三 運搬中の現金,貴金属,美術品等に係る盗難等の事故の発生を警戒し,防止する業務

四 人の身体に対する危害の発生を,その身辺において警戒し,防止する業務

2 この法律において「警備業」とは,警備業務を行う営業をいう。

3 この法律において「警備業者」とは,第4条の認定を受けて警備業を営む者をいう。

4 この法律において「警備員」とは,警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するものをいう。

 

2条4項が警備員を定義していますが,同条1項の「警備業務」に何を含むかがポイントとなることがわかります。

1項各号のうち,2号の「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し,防止する業務」は,「祭礼,催し物等によって混雑する場所での雑踏整理,道路工事現場周辺での人や車両の誘導等を行い,負傷等の事故の発生を警戒し,防止する業務」と解釈されているようです(社団法人全国警備業協会『警備業法の解説』)。

また,4号では,いわゆるボディガードの業務を定めています。

したがって,法文上は,財産管理とは無関係にも思える交通誘導の警備員やボディガードだからといって,破産手続の開始による資格制限を受けないとはいえないようです。