民法改正~債権者代位権②~

3月になり、豊田市も少しずつ暖かくなってきたように感じます。

皆様いかがお過ごしでしょうか?

さて、今回は「債権者代位権」の【要件】に関する改正のお話をさせていただこうと思います(「債権者代位権」とはどのような権利か?ということについては、前回の記事をご参照ください。)。

まずは条文を見てみましょう。

旧法第423条
第1項 債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
第2項 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

新法第423条
第1項 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。
第2項 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。
第3項 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。

【改正点その1】
債権者代位権は、債権者が債務者の権利を行使するという形で財産管理に干渉するという性格を持ちます。
そのため、旧法下において、本来債務者の自由であるはずの財産管理に債権者が干渉することを正当化させるためには、債権者が干渉しなくては債務者の責任財産(債権者の引き当てになる財産のことです。)が減少し、その結果、債権者が自己の債権の回収を図れなくなること、すなわち「事故の債権を保全する必要性があること」が存在しなくてはならないとされてきました。
このことは、旧法の条文では明確ではありませんでしたが、新法では「自己の債権を保全するため必要があるとき」という形で明文化されました(新法第423条1項)。

【改正点その2】
債権者代位権の本来的な目的は、債務者の責任財産を確保し、後の強制執行に備えるという点にあります。
そのため、被保全債権(保全の必要性がある債権者の債権)は、強制執行によって実現できる債権でなくてはなりません(例えば、債務者が破産をして免責されてしまった債権(≒債務者が支払わなくてよくなった債務)は、強制執行をしても回収ができませんので、債権者代位権を行使することができません。)。
このことも、新法第423条3項において明文化されました。
また、上記の債権者代位権の本来的な目的からすると、責任財産に含まれない差押禁止債権は代位行使できないとされてきました。
この点についても、新法第423条1項但書にて明文化されました。

【改正点その3】
債権者代位権を行使するためには、原則として被保全債権の履行期が到来している必要があります(新法第423条2項参照)が、旧法においては、被保全債権の履行期が到来する前であっても、裁判所の許可を得て裁判上の代位をすれば、債権代位権を行使できるとされていました。
しかし、この制度はほとんど利用されておらず、かつ、債権者としても民事保全の手続によって責任財産の保全ができることから、この裁判上の代位の制度は廃止されました。