民法改正~代償請求権~

早いもので今年も残すところあと一ヶ月を切りました。

弁護士の仕事も,年の瀬が近づくにつれて慌ただしくなりがちなので,早め早めに対応ができるように心がけたいです。

さて,今回のテーマは,「代償請求権」です。

用語だけではピンとこないと思われますので,条文を見てみましょう。

新法第422条の2
債務者が,その債務の履行が不能となったのと同一の原因により債務の目的物の代償である権利又は利益を取得したときは,債権者は,その受けた損害の額の限度において,債務者に対し,その権利の移転又はその利益の償還を請求することができる。

具体例がないと分かり難いかと思われますので,事例を用いて解説をしたいと思います。

事例:Aさんは,Bさんと賃貸借契約を締結し,Bさんから家を借りて暮らしていました。しかし,ある日,地震が起きて借りていた家が倒壊してしまいました。これが原因で,Aさんは,賃貸借契約の期間が満了した際に,Bさんに借りていた家を帰すことが出来なくなってしまいました。他方で,Aさんは,自分が入っていた地震保険から地震保険金を受け取りました。

この事例では,債務者(=Bさんに家を返すという債務を負っているAさん)が,その債務の履行が不能となったのと同一の原因(=地震)により,債務の目的物の代償である利益(=地震保険金)を取得したと言えますので,新法422条の2により,債権者(=Bさん)は,被った損害の限度で,債務者(=Aさん)に対し,その利益(=Aさんが受け取った地震保険金)の償還を請求することができます。

このBさんからAさんに対する地震保険金を請求する権利が「代償請求権」です(貸していた家の代償として,Aさんに地震保険金を請求する権利ということです。)。

代償請求権は,旧法下でも,裁判例や学説において認められていた考え方ですが,条文は存在しませんでしたので,民法改正により,従来の考え方が明文化された形となります。