名古屋の弁護士・税理士の小島です。
先月、日本税理士会連合会から「税理士事務所のためのAI・クラウド活用ガイドライン」が公表されました。AIは「脅威」ではなく「協働者」という位置づけで、使うことを前提に、どう安全に使うかを示している点は、とても好感が持てます。
1 ガイドラインの骨子
ポイントは「3つの鉄則」です。
①ビジネス向けの有料プラン(企業版)を契約すること。個人向け・無料版は業務利用禁止とされています。
②DPA(データ処理契約)を締結し、学習利用をオフにすること。
③事務所でルールを決め、教育し、年1回以上の確認をすること。
顧問先の財務データや個人情報などの機密情報は、企業版のみ使用可。
一方、公開情報や一般的な情報、匿名化した情報であれば、事務所が承認したツールに限り、個人版・無料版でも使ってよいという整理です。
2 「同意があれば個人版でもいいのでは?」
ここで素朴な疑問が出てきます。
顧問先の同意を得て、学習をオフにしていれば、個人版でもいいのか・・・?。
ガイドライン全文を読んでみた私の理解では、結論は次のとおりです。
個人版はDPAがなく、適法な委託先として扱えません。
そうすると、個人情報保護法上は「第三者提供」の問題になり、本人の同意があれば、理屈の上では適法にできる余地があります。
ただ、同意だけで解決するわけではありません。
・顧問先の従業員、取引先、ご家族の個人情報は、顧問先の同意では代わりになりません。
・マイナンバーは、同意があっても入力できません。
・安全管理や職員の監督の義務は、同意をもらっても残ります。
・ガイドラインのひな型は、同意の有無にかかわらず、個人版で機密情報を取り扱うことを禁止しています。
では従業員のいない個人事業主ならよいか。
本人の情報だけなら障壁は低くなります。
ですが、通帳や請求書には取引先の情報が入っていますし、事務所の内部規程も別問題です。
「個人事業主だから個人版でOK」とまでは言えないのではないでしょうか。
3 まとめ
結局のところ、企業版を契約するのが一番安全で手間も少ないという結論です。
個人版は、一般的な質問や、個人が特定できない情報に限って使う。
そのように使い分けたいところです。
なお、本稿は私見で、法的な最終判断は原文や個人情報保護委員会の資料でご確認ください。
ガイドラインの解釈は、まだ固まっていない部分も多いですね。