名古屋の弁護士・税理士の小島です。
4月にお伝えした非上場株式の評価の見直しについて、その後も有識者会議が続いております。
8月20日の第5回会議では、国税庁から「残余利益方式」という新しい評価方法が示されました。簿価純資産に、将来の超過利益(5年程度)を加えて評価するもので、類似業種比準方式は廃止の方向のようですね。
これに対して、日本商工会議所の委員の方から、かなり厳しい意見が出ています。
1 評価額が2倍から5倍近くになる可能性
商工会議所が一定の仮定のもとで試算したところ、一定規模以上の中小企業では、評価額が現行の2倍から5倍近くになるとのことです。相続税の負担も大きく増えることになります。
国税庁側は、小規模な会社や赤字・低収益の会社では下がることもあると説明していますが、事業承継が問題となるのは、ある程度の規模で利益も出ている会社が多いのではないでしょうか。
2 頑張るほど株価が上がる
残余利益方式では、純資産が増え、利益が出るほど評価が上がります。そのため、事業承継が近づくと、あえて投資も利益も控えた方が得ということになりかねません。
成長を促したい政府の方針とも逆行するのでは・・・という懸念は、実務の感覚としてもよく分かります。
3 役員報酬やグループ化への手当て
役員報酬を評価上加算する案や、持株会社によるグループ経営への対応も議論されています。租税回避は許されませんが、ほとんどの中小企業は、後継者への承継や多角化のために、通常の経営判断として行っています。
一部の節税スキームのために、全体の評価体系まで変える必要があるのかは、正直疑問です。
9月16日には、中小企業庁も意見を出しました。中小企業の数は多く、業種ごとの実態も様々ですので、影響の分析や検証が十分でないまま進めるべきではないという趣旨と理解しています。
また、非上場株式は、相続しても売ってお金にすることはできません。従業員や取引先、地域のことを考えて会社を引き継ぐ後継者に、評価だけを先に引き上げて納税を求めるのは、酷な気がします。
評価の見直しは、事業承継税制の拡充だけでなく、税負担の議論とセットで、時間をかけて進めてほしいところです。