政治家の相続対策

前回、相続税の法改正で生前贈与が難しくなる、課税が強化されるかもしれないというお話しを紹介させていただきました。

今回の改正の理由について、当時の甘利大臣は暦年贈与を行っていた人と行っていなかった人で相続税額が変わるのは不公平だから、という理由を説明していたようです。

ただ、「不公平」という観点で考えると、実は非常に不公平に思える相続対策を行うことができる方がいます。

それは、政治家です。

実は、日本の政治家は政治団体・資金管理団体を活用して、合法的に無税で財産を親から子へ承継させることができます。

政治団体は、法的には「権利能力なき社団」と解釈されています。

実は、この政治団体を利用し、親の政治団体から子の政治団体へ「寄付」という方法で資産を移動させた場合、法人税・贈与税・相続税のいずれも課税されることがないのです。

ただ、政治団体間の寄付は、政治資金規正法によって年間5000万円までとされています。

・・・が、実はこれは「政治団体1つにつき」ですので、政治団体が多ければ多いほど、無税で財産を移動させることのできる金額は増えるんですね。

親子の2世議員が多い理由もこれを読むとわかっていただけるかと思います。

ですので、私なんかは、政治家が「相続税を課税される人と課税されない人で不公平だ。」なんて理由付けをしているところを見ると、「なんだかなぁ・・・」という気持ちになります。

なお、これらの方法は、いずれも合法ですので、国会答弁で質問をされたとしても、「法律の範囲内で適法にやらせていただいております。」との答弁が可能です。

暦年贈与ができなくなる?

最近、週刊誌等の相続特集で「2022年4月以降は暦年贈与ができなくなる」、「110万円贈与ができなくなる」との記事をよく見かけます。

そもそも、相続税は亡くなったときの遺産の額が多ければ多いほど高額になりますので、皆さん、「生きている間に家族に財産をあげて遺産を少なくしよう」と思われます。

税務署は皆さんがそのように考えることをわかっていますので、日本の法律では相続税よりも贈与税の税率の方が高く設定されています。

そうすることで、皆さんが安易に贈与しないようにしているわけです。

ただ、贈与税には「基礎控除」といって、一定の金額までは贈与しても税金がかからない額が設定されています。

それが、110万円です。

そのため、皆さん、110万円まで贈与しようという発想になり、毎年=暦年贈与を保険会社や銀行等の金融機関でもお勧めされます。

この暦年贈与が2020年12月に発表された税制改正大綱に「相続税と贈与税の一体化」という文言が記載されていたため、これまでと同じように行うことはできなくなるのではないか、と言われています。

具体的な改正内容としては、現行法では亡くなる前3年以内に生前贈与した財産は相続財産として取り扱われていますが、こちらの期間を例えば10年にするなどの案が考えられます。

まだ明確に法改正の内容が定まったわけではありませんが、相続に詳しい税理士や弁護士等の専門家は何らかの方法で記載される可能性は高いと考えているようです。

確かに、最近の法改正の動向を見ていると、相続財産に対する課税を強化する動きであろうとは思います。

しかし、この話をきっかけに、「早めに生前贈与をしなければ損をしますよ。」、「生前贈与に有効な商品がありますよ。」という保険会社や信託銀行の売り込みが予想されます。

私の相続教室でもよくお話しをさせていただいていますが、本当にこれらの商品が相続対策になっているかどうかは慎重に判断する必要がありますので、相続に詳しい税理士・弁護士にご相談されることをお勧めします。

相続のご相談はお早めに

弁護士・税理士の小島です。

最近、色んなところからお声がけをいただき、一日ものや連続ものの相続教室を開催させていただくこともよくあります。

その際に、「一度、家に帰ってから整理してご相談したい」とおっしゃっていただくこともありますが、相続は、法律・税金・不動産・保険などのあらゆる知識・経験が求められる特に専門性の高い分野ですので、ご自身で現状の整理を行うことは非常に困難です。

最初のご相談では、関係する書類をすべて持ってくる必要もありませんので、とりあえずはご自身やご家族の状況を整理し、把握するくらいの軽い気持ちでまずはご相談されることをお勧めします。

相続の対策は、対策が遅れれば遅れるほど、効果的な対策を採ることが困難になるという性質を持っています。

例えば、生前贈与を利用した相続税対策も、法改正によってこれまでとは同じことができなくなる可能性は十分にあります。

他にも、遺言書を活用した「争族」対策も、たとえ公正証書遺言で作成していたとしても、遺言書を作成した年齢が高齢になればなるほど、あとから遺言書の無効確認訴訟を起こされる可能性があります。

また、いまの日本の法律では、万が一、重度の認知症になってしまった場合、それから相続対策を行おうと思っても効果的な対策を行うことはできません。

ですので、まずは、一度、無料相談をご利用されることをお勧めします。